人の意識と自然の間に位置する行為をデザインにしたアートイベント「MIND TRAIL」。
2022年9月17日(土)~11月13日(日)の期間中に開催される、奈良県 吉野町・天川村・曽爾村の3つの自然の中を会場とした芸術祭「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」。美術館と言いつつも館はなく、場所は雄大な山の中。
なぜ、このアートイベントが突如はじまったのか?「心のなか」とはどういうことなのか?なぜ、このビジュアルは丸三角四角がついているのか。今回はそのお話を少しさせてください。
コロナ禍でおきたこと
この時代における芸術祭のかたちとは?コロナ渦の中、人は勇み足を緩め、自身の内側と対峙する機会が生まれたことによって、人間のことや家族のこと、自然、環境のことなどの解像度がみるみる上がりました。
奈良・奧大和エリアには広大な自然やそこで暮らす営みがたくさんあります。此処に居ると、普段見えない景色や、普段考えない内面などが見えてきます。MIND TRAILは、通常の美術館とは違い、全長10kmほど、4〜6時間ほどアートや自然を感じながら、歩く芸術祭です。旅をアップデートし、鑑賞をアップデートとした本当に新しい試みだと思っています。
自然は無くならない。表現は止まない。
多くのイベントや芸術祭が中止・延期になる中、創作を止めることなくエネルギーを生み続けているアーティストたちと、三密を避けた世界遺産をはじめ日本の原風景が残る広大な自然が出逢うことで、生まれました。
観る人たちの意識を変えるフィルターとしてのデザイン
「心のなか」という形の無いテーマをデザインで表現するにあたり、まずはクリエイティブを見る人の共通認識をつくろうと考えました。それが書です。禅のプラクティスである「円相」は(※ネテロ会長の正拳突き素振りと同義)、かたちのはじまりを意味し、最小限の行為を意味します。自然と人の間に位置する、行為としてのアートをメタファーにしています。描かれた書と、奧大和の「森や水や大地」の写真を重ねることで、今回の芸術祭を表現しているのですが、不思議とそこには没入感が生まれ、どんどんと世界に引き込まれていく感覚に陥ります。さらに、このクリエイティブ自体が禅の修行を表すため、心の中と向き合う体験と重なり、いわゆる「絶景写真ベスト10」的な作品とは一線を画すものとなります。
この書は「◯△□」と回を重ねるごとに、MIND TRAILとともに変化してきました。禅僧 仙涯義梵和尚の残した書「◯△□」によると、「□」は囚われている人の心を表しており、解き放つべき心のタガでもあります。このクリエイティブが本芸術祭の入口となり、自分に内在する自然を旅するきっかけとなることを願っています。
どんな逆境の時代であっても、行為としてクリエイティブは止まりません。先人たちが残し続けてくれた日本という国の風景も無くなりません。
ぜひ、ここ奧大和に見て触れて感じ、歩き、ここでしかできない芸術祭を体感してください。
この美術館は、あなたの心の中にあります。
それでは、今回はこのあたりで。ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。また機会があれば他の記事も読んでください。
Client: Nara prefecture
Producer: Seichi Saito
Creative Agency: Office Camp llc.
Creative Director: Daisuke Sakamoto
Art director, Designer: Coji Katsuyama
Cover Artist: Kazuyuki Sakamoto
Cover Photographer: Kiyoshi Nishioka
https://mindtrail.okuyamato.jp
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