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【観光編】伝統ある福知山マラソンで旅ランを嗜む
目標を達成できたフルマラソンは本当に気持ちが良い。
華金の大阪を定時で上がって来てから丸一日経つとこうも景色が変わるものか…
帰りのシャトルバスから降り、多くの人々がそのまま福知山駅へと向かう流れに逆行して自分は街中へと繰り出した。
ここからが観光パートの始まり。
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最初に訪れたのがこちら。
福知山は「肉のまち」として知られており、鴨肉の料理も盛んだとか。
マラソンを完走したばかりの筋繊維ブチブチな身体にはやっぱりタンパク質、あらかじめ目星を付けていたこのお店に入った。
どうやら後に予約の団体客が控えているとのことだったが、食事だけササっと済ませるという形で迎え入れてくださったお店の方、ありがとうございます。
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名物の鴨すきは本当にシンプルに鴨のスライスとつくねに葱を背負わせたしゃぶしゃぶで、鴨の独特な甘みがガツンと効いて絶品。
葱に火を通す時間を微調整して食感や出汁と脂の染み具合に変化をつけるのもなかなか楽しい。
ちゃっかりつくねの追加と〆うどんまで注文したが、基本的にヘルシーなので最後までおいしくツルツルとあっという間に完食できてしまった。
個人的に観光とはその土地由来の食文化を楽しむことに重きを置いており、そうすれば思い出補正なんてのも馬鹿にならないし、かつ実際に良いものを食べられると考えている。
この旅もなかなか期待以上の好スタートを切ることができたのでは。
腹をさすりながら福知山駅へ戻りロータリーでタクシーに乗り込んで次に向かうのは今宵の宿。
駅からは遠くバスも19時頃にはもう出ていない場所にあるのだが、それでもそこを選んだのには理由がある。
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何を隠そう温泉付きのホテル!
温泉なんてただでさえ気持ち良いのに、マラソン後の疲労困憊な状態で入れば一体どうなってしまうんだ。
逸る気持ちを抑えずすぐさまチェックイン、部屋に荷物を放って大浴場へ直行。
夜風はだいぶ凍えたが、目玉の檜露天風呂に浸かればそれはそれはもう天国だった。
身体の芯から四肢の隅々まで血液が巡って毛細血管がジワァ…と温もる感じがたまらない。
もはや温泉に気持ち良く浸かるためにマラソンで傷付いてきたんじゃないかと錯覚するほど。マッチポンプマッチポンプ。
次の遠征も温泉地があれば良いな〜と思いを馳せながらゆっくりと極上リカバリーを堪能した。
温泉から上がり部屋に戻ると、あらかじめコンビニで買い込んでおいたプロテインドリンクとご褒美の好物かむかむレモンでプチ打ち上げ。
この日もあまり夜更かしはせずほどほどの時間で眠りについた。
翌朝、6時起床でベッドからするりと抜け出してちゃっかり朝風呂もこなしていく。
バスの本数が案外少なく早めにチェックアウトする必要があったので、ここでしっかり起きられたのは自分を褒めてやりたい。
風呂上がりに自販機でのむヨーグルトをキメて締めくくりとした。
朝食は軽めにパンで済ませてチェックアウトしバスで福知山駅へ。
時刻はまだ午前9時を過ぎたところだ。
ここからはレンタサイクルでの名所巡りが始まる。
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最初に向かうならやっぱり福知山城か。
駅北口を出て右手に約1kmまっすぐ進めば着くようなのでアクセスが良い。
この道はお城通りと呼ばれており、この地域のシンボルとして大切にされてきた愛着が窺える。
さて、いざ自転車を漕ぎ始めると風が寒く特に手が冷たい。
先ほど駅のコインロッカーに預けた荷物の中にランニンググローブもまとめて入れていたことを思い出しちょっと後悔。
代わりに温かいものをたくさん食べよう。
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福知山城は敷地内に美術館と鉄道博物館も併設されており、この3施設については福知山マラソンから入場無料クーポンの配布があったのでこれをスルーする手はない。
紅葉が色付き始める公園からゆっくりと足を踏み入れた。
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まず目に付いたのは石垣。
やけに形の整った石が積まれてるな…?と思ったら、それらはどうやら転用石といい、戦国時代に明智光秀が丹波を平定して築城された際、支配の象徴として主に反対勢力の寺院から石塔を接収して積み上げたものとのこと。
現代の創作から得られる光秀のイメージからはギャップのあるパワフルエピソードに思わずにやけてしまった。
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天守閣の中は福知山城にまつわる歴史を展示する博物館となっており、北近畿の要衝として栄えた起源を学びつつ、頂上からはその開発された土地の輪郭を望むことができる。
城下町の構造や由良川の治水など、大学時代に興味を持っていた都市計画の学問に通ずるところもあり結構面白かった。
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城から降りてくる下り坂が意外と膝にくる…
マラソン中は膝痛は気にならなかったが、しっかりダメージは負っていたようだ。
その後は道を挟んで向かいに位置するゆらのガーデンへ。
良い感じにのどかな庭を囲むように飲食店やフォトスタジオなどが立ち並ぶ複合施設で、思わず落ち着いていきたくなる。
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まずはカフェに入店。
福知山は肉だけでなく「スイーツのまち」としても売り込んでいるらしく、無類の甘いもの好きな自分にはうってつけ。
店内では大きなスクリーンに洋画が流されており、また隅にはドラムなど楽器が置いてあるので演奏会も催されたりするのだろうか。
何にせよ雰囲気が良い。
カフェ利用でそれぞれ単品注文したが、1,000円強で大きなクリームブリュレとポットにいっぱいの紅茶が出てきて驚いた。
コスパが良い、と言っても味も良く甘味がしっかりしていて自分好みで良い。
京都も田舎の方は酪農畜産水産が強いイメージなので安くてうまいものが食えるということか。
もっとゆっくりしていきたかったが、後の旅程もあるので3杯目のミルクティーを飲み干して身体がホカホカしたところで店を出ることに。
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ゆらのガーデン敷地内には今年建立されたという千原ジュニアの句碑が。
テレビ番組で詠んだ句が反響を呼んでこれほど評価されるのもすごいが、今回の福知山マラソンの完走賞Tシャツのデザインまで手掛けているのだからその多彩ぶりに舌を巻く。
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ランチは同じくゆらのガーデンにあるラーメンで。
こちらは福知山マラソンのクーポン特典でチャーシュー増しトッピングができた。
豚骨にほうれんそう入りということで家系を連想するが、実際に食べてみるとそれより癖のないお上品な味わい。
チャーシューは低温調理のしっとりした豚肉で大好物。
町家風に統一された店構えの中でしっかり完飲させていただいた。
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お腹も満足したところで次は福知山城併設の美術館へ。
福知山出身の画家佐藤太清の生涯を作風の変化と共に紹介されており、大きな日本画やノートのスケッチなどボリュームある展示だった。
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こちらの鉄道館は昨年オープンしたばかり。
巨大な車輪やジオラマの展示が目を引くが、光秀の時代から交通面でも発展してきた福知山が近代に至り鉄道誘致に尽力してきた歴史も紹介されておりこれもなかなか読み応えあった。
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自転車で福知山城を離れて由良川以東に向かう道中、ふと気が付いて振り返れば昨日のマラソンコースで通った景色が!
京都マラソンのときにも感じたが、普段の日常とマラソンの非日常両面の景色を楽しめるというのはランナーの特権だと思う。
盛り上がりの前後のギャップに心躍らせたりノスタルジーを覚える楽しみ方に何か名前が付けられていないものだろうか。
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三段池公園に入るとあの記憶に新しい歩道橋下のスタート地点に戻ってきた。
今はもうすっかり撤収が済んだこの会場から約5,000人が一気に出走したのかと思うと感慨深い。
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昨日のうちはまだ散策していなかったエリアも歩いてみる。
本体(?)の三段池はカモや様々な鳥が見られるのどかな様子で、老後はこういう所でバードウォッチングに興じるのも良いな~と妄想。
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公園を出てすぐ近くにあるパティスリーで本日2軒目のお茶と洒落込む。
福知山の卵を使ったプリンとチョコレートの世界大会で優勝したというパティシエのチョコカヌレ、それにやはりポットにいっぱいの紅茶。
どちらも素材の味がどっしりとコク深く絶品。さすが世界一。
福知山にはご飯もスイーツも奇を衒わないクラシックな味わいを大切にする文化がありそう。あと3杯分の紅茶を出す文化も。
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できれば夜まで滞在したかったが、家まで時間がかかるのと翌日から普通に仕事があるのでここらでお開き。
最後に特産の栗を使った足立音衛門のケーキをお土産に購入して帰路についた。
まだまだ回り切れなかった観光スポットはあれど、存分に福知山を満喫できた今回の旅ランだった。
せっかくの遠征ならしっかりその土地を楽しみたいものだし、逆に観光できることがマラソンを頑張ったご褒美になるとも考えられるのでモチベに悩むランナーや駆け出しの皆さんの参考になれば幸いだ。
地方出身で定期的に田舎の空気を吸いたくなる嫁ともいつか改めて旅行してみよう。