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「たくみな動き」とは?たくみkids名前の由来

こんにちは。今回は「たくみkids運動教室」の「たくみ」の名前の由来から「たくみな動き」とさ何か?について運動教室のプログラムも例にあげて書きたいと思います。

「たくみ」はロシアの運動生理学者ニコライ・A・ベルンシュタインの書籍「デクステリティ 巧みさとその発達」から取っています。

デクステリティ 巧みさとその発達

「デクステリティ(dexterity)」とは「巧みさ(たくみさ)、器用さ」の意味になります。

参加してくれるこども達が「たくみな動き」ができるようになってほしいと考えつけました

「たくみ」は決して自分の名前ではありません 笑


「たくみな動き」とは?

では「たくみな動き」とは何でしょうか?

ベルンシュタインは

「あらゆる状況ならびにあらゆる条件下において解決策となる運動をみつけること」

と述べています。

そして、生じた運動の問題を、

① 正しいこと(適切で正確)
② すばやいこと(結果の達成においても、意志決定においても)
③ 合理的であること(適宜性を備え、経済的)
④ 資源を利用していること(とっさの機転が利いて、先見的)

という条件を満たして十分に解決する能力としています。
以下に①~④それぞれを見ていきたいと思います。

①正しいこと(適切で正確)

「運動課題を正しく解決する」には質的な側面と、量的な側面があり、質的な側面は「適切性」、量的な側面は「正確さ」になります。

つまり運動課題に対して「適切な必要とされる動作」を、「正確に」行える必要があります。

運動教室のプログラムで言うと

鉄棒とイスに当たらないようにくぐる、すり抜ける運動プログラム

鉄棒とイスに当たらないように「くぐる」「すりぬける」運動では、
鉄棒に当たらないようにするには体をかがめる必要があります。
またイスが置かれた状況によっては「体を横にする」必要がありますし、イスを倒して低くしていれば「またぐ」方が良い場合もあります。
そして足を置く位置は正確に置かないと鉄棒やイスに当たらないようにすりぬける事はできません

そしてこういった運動は感覚の感受性と正確さが必要であり、こういった運動を行うことで向上します。
簡単に言うと、自分の体がどれくらい曲がっているか、足がどこにあるか(ついているか)を正確に感じられるようになります。
                               

② すばやいこと(結果の達成においても、意志決定においても)

「すばやさ」も「たくみな動き」に必要な要素であり、「結果を達成するすばやさ」と「決断のすばやさ」があります。

「結果を達成するすばやさ」は不必要な動作を短い時間内に押し込めるような、単純に速い動作を指すのではなく、正確さを犠牲にすることなくよりすばやく仕事をこなす、相対的なすばやさが重要です。

「決断のすばやさ」はある運動課題において、解決策となる方法を複数思いついた時に、一つの動作をすばやく選択し決断できることです。

運動教室のプログラムでいうと

イスの下をくぐる運動プログラム

イスの下をくぐる運動では、イスの下に右手から通すのか左手から通すのか、はたまた頭から通すのか色々な選択肢がある中で決断し、より適切な動きを決断しくぐるという結果を達成する必要があります。

「5つ数える間にくぐる」というように時間制約を設けることで「すばやく」決断する必要が出ます。

③合理的であること(適宜性を備え、経済的)

動作の結果が正しいだけでなく、途中の道のりが適宜性があり(状況に適している)、合理的であること、そしてそれが経済的であることもたくみさに必要な要素になります。

経済的とは、課題をより少ない努力の消費で達成する事です。
経済性でない例として、斧で鉛筆を削る、小さなとげを大きなペンチで引き抜くなどをベルンシュタインはあげています。

運動教室のプログラムでいうと

バランスボールからよける、かわす運動プログラム

バランスボールからよける、かわす運動があげられます。
バランスボールをよけられたという結果だけではなく、どのようにしてよけられたのかという途中の道のりも重要になります。
また常に全力でよけるだけではなく、ボールの位置を確認しつつ、必要なだけ動くという経済性も引き出せます。

④ 資源を利用していること(とっさの機転が利いて、先見的)

最後の要素は資源の利用です。
ベルンシュタインは、人間は最適な結果への道筋を探しながら動作のプロセスを能動的に変化させ、このとき、最も重要な役割を果たすのが資源利用の能動的な側面(運動の先見性)であると述べています。

そして例として、屋根職人が大聖堂のてっぺんにある天使と十字架を修理するさいに、困難を予期し、実際の行為の前に先見性を示した話をあげています。

つまり、自分のとる行為が自分自身にどうはね返ってくるか予期し、おかれている環境(資源)を上手く利用することがたくみさの要素になります

運動教室のプログラムでいうと

棚に置いた物を取る運動プログラム

棚に置いた物を取る運動があげられます。
黒マットからイスをわたって棚に置いた物を取るためには、イスという環境(資源)をどう利用すれば良いか予期し、最適な結果への道筋を探しながら動作のプロセスを能動的に変化させる必要があります。

要素を分けるのではなく、全てが関係する

説明のために4つの要素を分けて運動教室プログラムの例をあげましたが、結局は全て当てはまることになります。

バランスボールをかわす運動を③の合理的な例であげましたが、その他にも①の適切で正確に動く、②のすばやく意思決定し、かわすという結果をすばやく達成することも必要になります。また当然③の先見性も必要です。

たくみさが必要となる状況


たくみさが必要となる状況はどのようなものでしょうか?
ベルンシュタインはたくみさが現れる状況として、
運動それ自体にあるのではなく変わりゆく外界の条件との相互作用によって現れてくる
としています。

つまり、同じ「はしる」という運動でも、まっすぐ走る場合にはたくみさが必要ないですが、バランスボールをよける・かわす中で走る場合はたくみさが必要になるということです

たくみさの発達


運動教室では「たくみな動き」ができるようになることを目標にしています。
ではたくみさの発達はどのようにして達成されるのでしょうか?

ベルンシュタインは「たくみさ」は大脳皮質の機能に密接に関連し、練習によって向上しうると述べています。

さらに、たくみさは運動経験とともに蓄積され、たくみさを向上させるであろう動作は何かを成し遂げる動作としています。

成し遂げる動作とは?

何かを成し遂げる動作であるために、運動教室では課題を提示します。

黒マットから黒マットへイスの下をくぐっていくプログラム

イスの下をくぐる運動では、「黒マットから黒マットへイスの下をくぐっていく」という課題です。
黒マットから黒マットへ移動するということを成し遂げるために「くぐる」という運動が生じるようにしています。

これは他の運動プログラムでも同様で、

黒マットから、茶色と白色のマットに落ちないように棚の物を取る運動

棚に置いた物を取る運動では、茶色と白色のマットに落ちないように棚の物を取るということを成し遂げるために、「イスとイスをわたる運動」や「ジャングルジムをのぼる運動」、「手を伸ばす運動」が生じるようにしています。

こういった運動経験の蓄積によって「たくみな動き」ができるようになると考えています。

練習とは?繰り返す意味とは?

そしてこういった運動を練習して向上させるのですが、ここで注意しなければいけないことがあります。

練習というと理想的とされる運動を繰り返すというイメージがあるかもしれません。

しかし、ベルンシュタインは練習において繰り返しが重要なのは事実だが、動作や行為の繰り返しは、何度も(より良く)運動課題を解決し、解決に至る最良の方法を発見するために必要であり、
自然の条件下では外的条件が毎回異なり、動作のプロセスもまた決して完全に再現されることはあり得ない。課題のさまざまな変化に適した経験を習得する必要がある。
としています

つまり、理想とされる運動を繰り返すのではなく、少しずつ課題を変化させて、その課題を解決する(成し遂げる)ことが必要です。

運動教室のプログラムでは、イスの下をくぐる運動では、イスをどんどん変えていきます。また2つのイスを組み合わせてくぐる幅を変化させます。
棚に置いた物を取る運動でも、棚に置く物の位置はもちろん、そこに到達するまでのイスの配置も毎回変化させています。

こういった繰り返しは、繰り返しのない繰り返しと呼ばれています。
この繰り返しのない繰り返しがたくみさを発達させる上で非常に重要と考えています。

最後に

今回、たくみkidsの名前の由来である、「たくみさ」について述べました。
「たくみな動き」ができるということは、いわゆるスポーツ万能であり、将来の様々なスポーツパフォーマンスの向上やケガの予防につながり、健康的な人生を送る上では欠かせないものと考えています。

この記事を読んでお子さんの「たくみさ」が発達するきっかけとなればうれしいです!

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