Refcomeリブランディングの舞台裏
Refcome CXOの出口 (@dex1t) です🙋♂️ Refcomeは2020年2月をもって、コーポレートおよびサービスロゴのリニューアルを行いました。
このリニューアルに至るまで、会社の在り方を探るところから始まり、パートナー探しや、リサーチ、多数のプロトタイピング、VIガイドラインの策定など、リブランディングに関わる多くの取り組みを行ってきました。
私自身は、これまでサービスづくりを主にやってきたタイプで、会社のブランドづくりに携わることは初めてです。手探りで進めていくなかで、noteなどで公開されている、他の事業会社のCI・VIデザインプロセスを参考にさせていただきました。
私たちが今回行ったリニューアルプロジェクトの特徴は、「ミドル期のスタートアップがデザインファームと協働しながら、全社員を巻き込みつつ進めたこと」です。
いつかどこかでRefcomeと似た状況にいる誰かにとって、何かしらの参考になることを願い、このnoteではリブランディングの舞台裏を全て公開してみます。ほぼ全ての出来事を網羅してみたら、かなりの文量になってしまいました😇
なお、今回のプロジェクトを一緒に進めた、Takramの神原さん (@kambara) 、弓場さん (@yumibers) とTakram Cast (前編, 後編) にて、同様のテーマでお話しています。こちらもよければお聞きください💁♂️
入社前に抱いていた違和感
今回のプロジェクトは、私自身が入社前にフリーランスとしてRefcomeに関わっていたころから抱いていた、ある違和感がきっかけです。
これまでのロゴは、4年前に事業をピボットした際に、クラウドソーシングサービスを活用して作られたものです。当時かけた費用はわずか5万円。
前事業から撤退し、会社存続のためになんとか食いつないでいた状況では、クラウドソーシングサービスを使うのは正しい選択でした。
その後Refcomeは、IT企業から飲食チェーンまで、幅広い業種で活用いただくサービスへと成長しました。Refcomeは、主に採用担当の方が使うSaaSですが、ポスターやカードといったアイテムを通して、オフラインにおいてもリファラル採用を支援しています。そのため、飲食店であればアルバイトスタッフやそのご友人など、私たちの存在を直接ご存知でない方もロゴを目にする機会が増えました。
旧ロゴは「リファラル採用」という、採用手法そのものを表しています。リファラル採用を「簡単に実行できるサービス」として認知してもらうためのロゴです。そこから事業の進捗に合わせて、会社の在り方に対する理解も、より深まっていきました。
Refcomeは、「採用手法を効率よく実行するソリューション」で在りたいわけではなく、「採用を仲間集め」にするためのサービスで在りたい。愛着あふれる会社をつくり、社員全員で、一緒に働きたい人を集めていく。リファラル採用はそのために必要な一部と、今では考えています。
この想いや、事業の状況を知れば知るほど、会社の“カオ”として掲げているロゴとのミスマッチに、私は違和感や勿体なさを感じていました。
そして違和感は危機感に
👨🏻「うちのロゴって、人が肩を組む様子を表してたんですね!初めて知りました!!」
👩🏻「みんなの前では言えないけど、会社のロゴステッカーをPCに貼るの恥ずかしいんですよね…」
これはいずれも社員から聞こえてきた声です。入社前に抱いた違和感は、入社してから危機感に変わりました。
RefcomeはBtoB SaaSビジネスです。Refcomeの導入や契約更新など、ユーザーが意思決定をする際には、インサイドセールスやフィールドセールス、カスタマーサクセスといった役割の社員が介在します。ここはBtoCサービスとは、大きく異なる点かもしれません。
つまり、Refcomeの想いや世界観をユーザーに伝えるのは、ロゴデザイン以上に社員自身。ユーザーと向き合っている彼らを、少なくともクリエイティブ面ではバックアップできていない状況に危機感を覚えました。
社員が毎月増えているとはいえ、まだ2-30人規模。難航しつつ進めていた、ミッションやバリューの定義もようやく完了したタイミング。会社の“カオ”を変えるなら、今このタイミングだろうと判断したのが2019年4月のことでした。
ユーザーと多様な接点を持つRefcomeだからこそ、誰がどこで見ても一貫して「仲間集めサービスのRefcome」であると認識してもらえるVIをつくりたい。今ここに投資することが、SaaSビジネスとしても、組織カルチャーをつくる上でも、複利的に効いてくるはず…。
そんな考えのもと、プロジェクトを本格的にスタートさせました。
その他にも媒体によってカラーのブレが大きい、そもそもどれが正しい色なのか分からない、オレンジがくすんでいて弱々しく感じるなど、デザイン品質上の問題も数多くありました😌
信頼できるパートナーを探す
ここで最初に決めたことが2つありました。
1. リブランディングはじめの一歩は、実績ある外部パートナーと協働する
2. ロゴリニューアルに経営やデザイナーだけでなく、多くの社員を巻き込む
1つ目は私たちのフェーズとスキルセットが理由です。Refcomeは長くデザイナーが不在の組織で、2019年春にようやく1人目が入社したタイミングでした。
資金調達を数回行っているとはいえ、事業フェーズはまだまだカオス。崖から落ちながら飛行機 (事業) をつくっているなかで、ブランディングデザインについては素人の私たちが、このプロジェクトだけに専念することは難しい状況です。
2つ目は、社員みんながロゴに想いを乗せられる状態をつくるため。そのためには、密室から美しいロゴが突然でてくるのではなく、なるべくその過程を公開しつつ進めたほうがいいだろうと考えていました。
これはロゴリニューアルに先立って行った、「ミッション・バリューの言語化プロジェクト」が不慣れもありトップダウン的な進め方になり、意図しない衝突を生んでしまったことの反省でもあります。
そして1つ目と2つ目の掛け合わせとして、社外のプロフェッショナルとお付き合いすることによって、社内のデザインに対する目線を引き上げることも、副次的に狙っていました。
Takramさんとのつながり
昨年4月後半から、まずはロゴリニューアルをスコープとして、外部パートナーを探し始めました。その中でご相談にいったのがTakramさんでした。
私はもともと5年ほど前にTakramさんの黒本を読み、その後のキャリアに強く影響を受けた人間です。また前職時代には、Takram神原さんと一緒にイベント登壇をしていました。
そんな繋がりがあったため、これまでTakramさんと仕事でご一緒したことは無いものの、Takramさんのモノづくりに対する考え方や進め方は見聞きしていました。
「無名のスタートアップがご一緒できるのだろうか…」という一方的な不安がありつつも、結果として快諾いただき、5月頃にTakramさんのオフィスを初訪問。メルカリさんをはじめ多くのブランディング案件に携わられてきた弓場さんともお会いし、数年先の展開まで話が盛り上がったのを覚えています。
さらに今回、Takramさんからのご提案がきっかけで、RefcomeはTakramさんから出資を受け、株主として仲間になっていただきました。
出資ありきでパートナーを探していたわけではありませんが、長く取り組むべきブランディングに対して、単なる外部パートナー以上の関係性を築くことができました。そしてなにより、神原さんと私とのリファラルがきっかけだったのは、リファラルを事業とするRefcomeらしい出来事でした。
サイドプロジェクトによる副産物
Takramさんとのプロジェクトが実際に始まるまでには、契約や出資の調整などをしつつ、3ヶ月ほど時間がありました。その間に、いくつかサイドプロジェクトを行っていたうちの一つが、foundersというインタビューマガジンの立ち上げです。
このインタビューマガジンのテーマは、「スタートアップの仲間集め」です。
その編集方針を決めるために、まずは私たちが考える「仲間集め」とは何なのかを言語化していく必要がありました。自分たちのミッションの一部でもある「仲間集め」というワードに乗せている想いを言語化する行為は、「Refcomeらしさ」の言語化にもつながっていきます。
また平行して、RefcomeのサービスLPのリニューアルも実施。こちらのプロジェクトでは動画という形で、Refcomeというサービスらしさとは何なのかを咀嚼する必要がありました。
いずれのサイドプロジェクトも、私は直接手を動かす立場ではありません。founders立ち上げに関わっていただいた社外の編集者やグラフィックデザイナー、RefcomeのLP制作を担当したデザイナーなど、社内外のクリエイターとセッションしながら、「Refcomeらしさ」の言語化を進めていった感覚です。そこで得た理解をまとめて、社内に共有することで共通認識をつくっていきました。
時代の流れのなかで私たちは何をするのかを言葉に
いずれのサイドプロジェクトも、はじめは事業的な目的がきっかけで、副産物的に「らしさ」の言語化に繋がっていきました。
なにか1つに専念することが難しく、1人が複数のプロジェクトを並行して進める必要がある、スタートアップならではの進め方だったかもしれません。
VIリニューアルプロジェクトのスタート
2019年9月から、いよいよリニューアルプロジェクトがスタートしました。ここに至るまでに「会社の在り方」は比較的定まっていたのもあり、このプロジェクトはVI (Visual Identitiy) にフォーカスしています。
以下のような体制とスコープで、実施期間は3ヶ月のスケジュールでした。
👨👩👧👦チーム
Refcome: 出口 (CXO), 清水 (CEO), 楢木 (デザイナー)
Takram: 神原 (リードデザインエンジニア), 弓場 (アートディレクター), 真崎 (グラフィックデザイナー), 趙 (デザイナー), 中森 (インダストリアルデザイナー)
📌スコープ
コーポレートロゴ, サービスロゴ, VIガイドライン
名刺, プレゼン資料テンプレート, WebサイトのVI適用例
プロジェクト期間中は、毎週チームの定例をセットし、RefcomeかTakramのオフィスで顔を合わせていました。
定例前のRefcome vs Takram 卓球対決🏓
定例にゲストを1名加える
余談ですが、Refcome社内での推進役である私は、他の社員をいかに巻き込むかを常に考えていました。そのひとつとして、経営・デザイナー以外のメンバー1名に定例にゲスト参加してもらっていました。
社歴が古い人・浅い人、バックオフィスや業務委託のメンバーまで、属性に偏りがないよう、全定例に1名ずつ参加してもらいます。例えば名刺デザインについて話す際には、名刺を使う機会が多いセールスメンバーに参加してもらったりと、いつ誰を呼ぶのが効果的なのかを考えていました。
リサーチ
最初の1ヶ月弱はリサーチ期間です。まずはインタビューを通して私たち自身のことをTakramチームに理解してもらいます。
あわせて、現状社内でロゴがどのように使われているのかを全て洗い出し。ロゴが変形されていたりと、全くコントロールできていない状況が改めて浮き彫りになりました。
また内部だけでなく、外部環境の理解も進めます。国内外のHR関連サービスをピックアップし、カラーマップを作成。
ここでの発見は、HR市場におけるオレンジというコーポレートカラーの独自性です。当初は「コーポレートカラーは全く別のものに変えてしまってもいいのでは?」とも思っていましたが、市場における独自性はそのまま残すという判断ができました。
これらはあくまでTakramチームによるリサーチの一部です。リサーチを通して得た理解は、ブランドフレームワークという形でまとめていきます。
これはミッションを最上位として、Refcomeが提供している価値や、その姿勢・課題などを明文化したものです。特にプロジェクト後期においては、意思決定の際に何度もここに立ち返っていました。
パーソナリティを全員で探る
先のブランドフレームワークをつくる上で、TakramチームからRefcome側に宿題としてもらっていたのが、会社のパーソナリティを言語化することです。「Refcomeらしさ」をキーワードで単的に表す必要がありました。
ここは全社員を巻き込むチャンスと考え、この作業をみんなでやってみることにしました。ただしフリースタイルでやると、発散しすぎてしまったり、声の大きい人に左右されてしまいそうです。
そこでふと思いついたのが、8マスシート。数に制限を設けて、重要度が高いものだけを書いてもらうことにしました。そして「らしさ」をはっきりと炙り出すため、あえて否定系(らしくないワード)も書いてもらいます。
また、現状認識の正しさよりも、どう在りたいのかを重視したかったため、「現状よりも理想をイメージしてほしい」と問いかけ、フレームを外すことを意識していました。そして、このシートを持ち寄り、何組かに分けてシェアし、深堀りしていきます。
オフィスに全員分のシートを貼り出してみると、自分たちが漠然と思っていた「らしさ」が目に見えてわかってきます。
・温和で優しそうに見えるが、中身はアツいロールキャベツ系
・野球チームというよりサッカーチーム
・六本木で遊ぶようなギラつきは無いし、表参道のような洗練さも無い
などなど、住む場所やスポーツで例えてみたり、人によって色々な表現がでてきます。
社歴が古い人も浅い人も、同じようなワードをあげているのが印象的でした。Refcome社は、比較的カルチャーマッチを重視して採用を進めてきた影響かもしれません。
そして近しいワードをグルーピングし、抽象化したものがこちら。
ここから経営として特に大切にしたいと考えた象徴的なワード (未来志向, 芯がある, 創造的) を、先のブランドフレームワークにおけるパーソナリティとして採用しました。
プロトタイピングのスタート
ここまででVIリニューアルの指針が定まってきました。ここから徐々に試作フェーズに入ります。
まずはシンボル化の種を得るため、Refcome・Takramそれぞれのメンバーが「Refcome」から想起するワードを自由に発散させます。
ミッションでもある「仲間集め」というワードからワンピースを想起する人もいたり、そこから派生してクジラや船などの海モチーフ、ドラクエのパーティや、サッカーなどなど、多種多様のワードがでてきました。
それらをTakramチームに持ち帰っていただき、Takram内でプロトタイピングし、いくつものラフ案を制作してもらいます。
プロトタイピングの過程を全てオープンに
今回のプロジェクトでは、ロゴデザインとしてはかなり生煮えの案も含め、なるべく多くの案をTakramチームから共有してもらっていました。
そして全てをRefcome社内に掲示し、全社員誰でも思ったことを付箋に書いて貼ってもらう、という試みをしていました。全社員に何かしらの形で、リニューアルに関与してもらいたかったからです。
一切包み隠さず、新案が増えるたびにオフィスに掲示していきます。最初こそ「付箋を貼ってくれたらステッカープレゼント!」のような小さな仕掛けもしていましたが、後半はなにもせずとも活発にフィードバックがもらえるようになりました。
ときには「好きじゃない!」など率直すぎる感想が貼られることも…😌
私が一旦咀嚼してから、Takramチームに伝えるべきか、、と迷いもしましたが、「インハウスでのデザインと同様に、生の声をそのまま伝えたほうがいいだろう」と考え、そのままダイレクトにお伝えすることに。
付箋が貼られたら、そのまま写真をとってSlackに貼るというスタイルで共有をしていきます。どう料理するかはTakramチームを信頼してお任せし、社内推進役の私は、多様な視点からみた率直なフィードバックを集めることに徹していました。
この期間は、TakramチームとRefcomeチームで、プロトタイプを通したキャッチボールを数週間に渡って行っていきます。
社内での期待値コントロール
もちろんこのような進め方をする弊害もあります。ロゴを人気投票で決めるかのように、社内で誤解されてしまうことです。「あくまでスタディであって、この中から決めるわけではない」ということは社内で都度伝えて、期待値コントロールには注意していました。
また、「発散フェーズ」から「収束フェーズ」に切り替わったタイミングでは、フィードバックの返し方もボトムアップからトップダウン切り替える必要がある、ということも意識していました。そしてこの見極めに、ロゴリニューアルの意思決定者として悩むことになります…。
船かトーチか
発散フェーズを経て、「船」と「トーチ」の2案にまで絞り込まれてきました。この時点で11月頭。スケジュール的に、そろそろ決断が必要です。
船案: 風の力を集めて推進するマストと、多くの人の力を集めて推進するリファラル採用を重ね合わせた案
トーチ案: 誰かひとりの力ではなく全員の力を使って前に進む、リファラル採用のあるべき姿をリレーのトーチで象徴化した案
今見るとトーチ案だなと思うのですが、この時点ではまだ五分五分でした。
私たちの世代的に「仲間集め」というワードから、漫画「ワンピース」のようなニュアンスを、以前から社内でなんとなく感じ取っていました。それもあり、初期の種探しの段階でも、海をモチーフにしたアイデアは多くでてきました。
船という提案はある意味、私たちにとって予想の範囲内であり、受け入れやすかったのです。
一方でトーチ案は、私たちにとって飛躍のある提案です。グラフィック的には美しいなと思いつつも、全く思いもしなかった提案だったため、受け入れるのに時間が必要でした。
天日に干してみる
ここで即断即決…というわけではなく、2週間ほど敢えて寝かす時間を置きました。Takramさんではこれを「天日干し」と呼ぶそう。
とはいえ、スケジュールの都合上いつまでも干し続けるわけにはいきません。意思決定者として、いかにはやく提案を咀嚼するか、試行錯誤する時間がはじまります…😂
土曜のAM6:13😇
トーチを読み解く
ここまで提案の際に、シンボルに込めた意味については、Takramチームから敢えて深く説明を受けてきませんでした。提案の読み解きは、私たちRefcomeチームの仕事。
トーチというと、オリンピックの聖火リレーのイメージが強くあります。そもそもトーチとは何なのかを、天日干し中に改めて調べてみました。
そうすると、聖火リレーだけでなく、自由の女神、日本を含め世界各地で行われる火祭りなど、トーチ (松明) は洋の東西を問わず古来から色々な場面で登場することが分かってきました。共通するのは、「灯した火を絶やさないように、皆で繋ぎ、大切にすること」や、「向かうべき方向性や、あるべき姿を照らすこと」という意味合いです。
これはリファラル採用を成功させるために必要な要素と同じだと感じました。
会社を立ち上げた創業者は、誰しも想いを持っています。そして創業メンバーにその想いを繋ぎ、それが他のメンバーに伝播していきます。採用とはまさに灯した火を繋ぐことです。何らかの原因で、灯した火が絶えかけてしまうと、仲間集め――特にリファラル採用は、うまくいかなくなります。
また「仲間を集めるように採用する」というのは、あるべき姿であり、理想論とも言えます。現実は、様々な理由で「頭数を埋めるために採用する」をせざるを得ない状況があり、そこを解決しようとしているのが私たちのサービスです。
こう考えると、「トーチ」というシンボルは非常にしっくりきました。逆に「船」というシンボルは受け入れやすかった一方で、「仲間集め = 船に乗せる」以上の意味を見出すことができませんでした。
パーソナリティに合った“炎”の表現
ここまでで、意味合いとしてはトーチ案で決めていたのですが、懸念していたのがシンボルマークとしての「炎感」の強さです。
炎というとどうしても「アツい」イメージがあります。一方で、Refcome自身のパーソナリティを振り返ると、アツさだけではなく、「自然体」や「親しみやすさ」といった側面も持ち合わせています。
アツさ一辺倒になってしまうと、どこか「らしくない」感じ。
そこでTakramチームに炎感とトーチ感、その適度なバランスをプロトタイピングを通して探ってもらうことに。
そして、最終的に意思決定の後押しとなったのがモーションロゴです。
こちらは最終決定後の調整版
このモーションロゴ、実は当初Takramさんに依頼していた内容には入っていませんでした。私達の悩みを見抜いてか、Takram弓場さん・真崎さんにサプライズ的に制作していただきました。
これを見たときに「これでいこう!」と場の空気が変わったのを覚えています。モーションロゴによって、シンボルの「炎の揺らぎ」がより鮮明にイメージできるようになり、さらにCMなど今後のビジネス展開での見え方も想像が膨らみます。
また、炎を単色ではなくグラデーションで表現する、というのも意思決定の決め手になりました。
アツさ一辺倒ではない私達らしさと、仕事に対する価値観や働き方が多様化する時代性。そして炎の揺らぎを重ね合わせるのに、グラデーション表現はぴったりです。
誰のためのリニューアル?
Refcomeは、社名とサービス名が一致していることもあり、今回のロゴはコーポレートロゴでもあり、サービスロゴにもなります。
自分たちの想いだけを重視していいのか、ユーザーをはじめとして外からの見え方をもっと考えるべきじゃないのか、、というのはプロジェクトが収束フェーズに移るにつれ、社内のメンバーから挙がってきた声です。
もちろん両取りを目指しつつも、結論から言えば、私たちは今回のリニューアルでは外からの見え方よりも、社内の想いを明確に重視しました。
ユーザーが意思決定する際には、セールスやカスタマーサクセスなどRefcomeメンバーが介在するからこそ、「自分たちが何者なのか」を熱を持って語れることが何より大事だと思ったからです。
社内でオープンにし多くの社員を巻き込みながら進めたプロジェクトですが、最後はトップダウン的にこの決定をしました。ロゴリニューアルは今後頻繁にあることでは無いですが、ブランドづくりはまだ始まったばかり。だからこそ、民主的に決断するのではなく、推進者が意思をもって決めることがベストだと信じています。
決定と展開
こうしてトーチ案に決定!スタート時は思いもしなかった漂着点ですが、この頃になるとじわじわとしっくり感を得ていました。
シンボルを中心にお話しましたが、並行してロゴタイプの検証も行っています。実はここはあまり悩まず、Takram弓場さんの一押し案でもあった「Klim Metric」に決定。思い切りの良さを感じつつも、信頼感の漂うロゴタイプです。
また今回、VIガイドラインをつくる一貫で、和文の制定書体も決めました。いくつか和文書体も検証を行うなかで、Klim Metricとの親和性を考え、「TBゴシック」をプライマリな和文書体に決定。
この後、WebのLPや、名刺・プレゼンテンプレートなど各種展開物を制作・決定していきました。
機能性を考慮したVIシステム
今回、ロゴリニューアルと共にもう一つのテーマが、美しさだけでなく機能性も考慮したVIシステムを定めることです。
私たちはまだまだカオスなフェーズにいるスタートアップです。いまは「Refcome」と「Refcome Teams」という2つのサービスを提供していますが、今後も新サービスの提供やその撤退など、状況はスピーディーに移り変わっていくでしょう。
またオンラインだけでなく、オフラインにおいても、ロゴが必要とされる場面は多くあります。今回はそんなオンライン・オフライン両面におけるサービス展開を支えられるような、VIシステムを定めることにも取り組みました。
この間、私自身はプロダクトマネージャーに頭を切り替え、未来のサービス展開を出来る限り詳細に描くことを試みます。未来のプロダクト展開とブランド展開を両方考えるのは、中々ハード…。Takramチームに他社事例をリサーチしてもらいながら、私たちの未来予想図と照らし合わせて決めていきました。
例えばGoogleのように、サブサービスも含めて全てに独自のロゴを作ることができれば、もちろん理想的です。ただ、私たちのデザインリソースを考えるとあまり現実的ではありません。
私たちの場合は、メイン・サブとサービスを分けた上で、メインラインに当たるサービスは、トーチの色違いで表現。炎であるトーチは、青にしても意味合いとして違和感なく、今後は黄色なども使えそうです。
そしてサブラインに当たるサービスは、2段組みにすることで表現することにしました。こうすることで、例えば実験的なサブサービスを増やしても、新たにマークを生みだす必要はありません。
また、システムを定めたことで、敢えて逸脱することもできるようになります。例えばfoundersは、Refcome色は敢えて出さないという方針から、今回のVIシステムからは外しています。
こうしてロゴの美しさ、システムの柔軟さ、私たちのリソース、3つのバランスを考えつつ機能性のあるVIシステムを定めました。
FigmaでつくるVIガイドライン
今回のプロジェクトでは、最終的にVIガイドラインとして諸々をまとめていきました。RefcomeではFigmaを全社的に使っていることもあり、VIガイドラインもFigmaでつくることにしました。
ロゴに関する基本的な利用ルールのほか、制定書体やカラー、イラストのトンマナなどをまとめています。
事業領域的に、LPなどで人物のイラストは多く使うので、肌色のカラーを定義したり、主にビジネスメンバー向けにグラフの配色を定義したのは、Refcomeならではかもしれません。
VIガイドラインの一部
Figmaはブラウザさえあれば開くことができるので、ノンデザイナーにもガイドラインの共有が簡単です。またカラーや書体などガイドラインで定めたスタイルを、FigmaのTeam LibraryにPublishしておけば、サービス開発チームもガイドラインに沿ったデザインを手軽にできます。
こうして生きたガイドラインをつくることができるのがFigmaの良さです。余談ですが、Refcomeのサービス開発におけるFigma活用事例はこちらでもまとめています。
リニューアルの手応え
リニューアルプロジェクトを終えてから3ヶ月しか経っていませんが、社内外で少しづつ良い手応えを感じています。
自分なりに語れるロゴ
今回、なるべく社内でオープンにするということに拘って進めました。その結果として、経営やデザイナー以上に、現場のメンバーが「自分たちは何者なのか」を語れる状態になったのは手応えとして感じています。
特にユーザーと最初に接点を持つセールスメンバーから「ロゴにまつわるストーリーを話すことで、セールストークに説得力が増した」という声を聞けたのは確かな手応えでした。
ロゴにまつわるストーリーというのは、特に経営やデザイナーから提示したものではありません。トーチというシンボルを自ら読み解き、自分たちで語れるようなロゴになったのは、オープンさを何よりも優先した効果かなと思っています。
モノづくりへの理解を深める
👨🏻💼「ロゴの決定ってこんなにも難しいんですね…」
これは私が意思決定に悩んでた際に、ビジネスメンバーから言われた言葉です。彼にとってみれば、ロゴはもちろんデザイナーの仕事ぶりを垣間見るのも初めてだったようで、プロセス自体が新鮮だったようです。
今回のリニューアルプロジェクトのプロセスは、メタ的にみれば、制作物がロゴではなくサービスだったとしても、その進め方に大きな違いは無いでしょう。リサーチを通してターゲットの内外への理解を深め、プロトタイピングを繰り返しながら意思決定する。
この一連の流れを、自分たち自身をターゲットとして垣間見ることができました。熟練のサービス開発者にとっては当たり前のことですが、ビジネスメンバーにとっては、モノづくりへの理解が深まったようです。
これから
これがRefcomeリブランディングの舞台裏の全てです。勢いあまって、1万文字を超えてしまいました😂
Takramさんとのプロジェクトが終わった昨年末からは、Refcomeデザインチームにバトンが移り、各種サービスやオフィス空間などにVIの適用作業を進めています。
Refcomeらしいブランドづくりはようやくここがスタートライン。ともに進める仲間を募集中ですので、もしご興味ある方はご連絡ください👋
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