エルモ!世界中の子供と大人を魅了した人形の演じかた☆彡
『セサミ・ストリートへ愛を込めて エルモに命を吹き込んだ人形師』
というドキュメンタリーがNetflixにあって、チラ見するつもりがつい最後まで見て、つい涙まで流してしまったw。
いや~人物を演じるって、表現するってこんなにも楽しくて、愛おしい!
あまりに感動したので、今回はドキュメンタリーの主役ケヴィン・クラッシュの人形の役作りと人形の演技についてレポートします。
世界中の子供たち、そして大人たちにも愛される「エルモ」のキャラクターはどのように生み出されたのか?
俳優や声優も必見のドキュメンタリーです。
エルモの誕生秘話
エルモは初登場時は別の先輩人形師さんが演じていて、暴れまわるキャラだったそうです、うざがらみして、声もダミ声でw。 でもそれがなかなか面白くならないんで、その先輩人形師さんが悩んでケヴィンに相談したんだそうな。「キミなんかいい案ない?」と。
ケヴィンはその場でちょっと悩んで「やあ、エルモだよ」と可愛い声を出したら、「じゃあキミがやって」と先輩人形師に任せられてしまったんだそうなw。
先輩人形師が演じてたエルモは「皆にうざがらみをして困らせる」というキャラもコンセプトも基本設計は間違ってない。なのに観客の心を動かさないのはなぜか・・・悩んだケヴィンは実家に帰って、母が預かった近所の子供たちの面倒を見ていて、遊ぶ子供たちの姿からヒントを得る。
うざがらみをする理由は、好きだからだ!と。
森羅万象に対して愛情があふれすぎるエルモ、の爆誕の瞬間です。
この役作りのポイントは「われわれが日ごろ見慣れているステキな瞬間にスポットを当てる」ということです。そこにこそ宝がある!
もちろん先輩人形師も面白いエルモを目指していたんですが、キャラを作って、それをデフォルメしてるうちにどんどん現実離れしたキャラに・・・。
それに対してケヴィンのエルモは、現実世界で見るステキな瞬間を切り取ってそこにスポットを当て、それをデフォルメするのではなく、その逆でディテールをリアルにしていった。
そしてケヴィンのエルモは、「愛しすぎて うざがらみ しちゃう」という「周囲とのコミュニケーション」自体がキャラクターになっています。
ケヴィンのエルモに困らせられる人形や人間たちの顔を見てください・・・なんと嬉しそうに困っていることかw!
「音楽を感じて!」
このドキュメンタリーにはケヴィンが若手の人形師たちに演技指導をするシーンがいくつかあって、それがまた感動的な瞬間でした。
若手たちはやはり「いかにも人形劇」って感じで演じようとするんですよね。そりゃそうですよ、憧れの『セサミ・ストリート』で人形を演じられるんですから。面白おかしく演じるぞ!って思うじゃないですか。
でもそんな彼ら彼女らに対してケヴィンは「もっと自然に演じるんだ」と言います・・・!!!?。
「演技がまだ雑だ」
「ただの人形ではなく、生きてると思わせるんだ」
「僕たちと同じ反応をすれば、人間らしくなる」
「人間を真似ればいい。人はそんな風に細かく相槌を打たないだろ?普通の人間の相槌はこう。こうじゃない」
「話を聞いてる時こそ、反応を忘れちゃいけない」
めちゃくちゃ意外なアドバイス!
でもたしかにケヴィンが演じる人形の演技は、アクションはデフォルメされて大きいんですが、リアクション(反応)が超リアルなんですよね。普通の反応をいっさい省略せずにしっかり演じている・・・だからデフォルメされた大きなアクションにもリアリティがあるんですよ。
このくだりは若手の声優さん全員に見て欲しい。
若手の声優さんってやはり「いかにもアニメ」って声で演じたいじゃないですか。 それはセサミ・ストリートの若手たちと一緒、でもその芝居は「人物を演じる」という観点でいうとじつは「雑」で「解像度が低い」んですよ。
それに対して、その若手群から頭ひとつ抜けて人気声優になってゆく声優さんは、アニメっぽい人物を観客に「生きてる!」と感じさせるために、もっと人間のリアルな反応と衝動を芝居に入れ込んでいるんです。
そして「無音」の時間にも、ちゃんと相手の話を聞いたり、その状況をリアルに体感したりしながら、自分の中に生まれた衝動を身体中にたゆたわせているんです。
エルモの人気の秘密を見た気がしました。
観客はエルモを「生きてる!」と感じられるから、愛おしく感じるんです。
人形たちのダンスのシーンではケヴィンは「音楽を感じて!」とアドバイスしていました。踊ってるように見える芝居をするんじゃない。音楽を感じて本当に踊るんだ!と。
そう、「感じる=反応する」がケヴィンの芝居の基本なんです。
ケヴィンの人形のダンスには腰があるんですよね。でもその腰の部分はじつは手なので関節なんか無いのに、腰に「踊りたいという衝動」が宿っているのでダンスがグルーヴして見えるんです。
その人形の衝動をつかむ。
ケヴィンの芝居が、若手のと明らかに違っていたのは「衝動がそこにある」ことでした。 それは説明的ではなく、圧倒的に肉体的な芝居でした。
それぞれの人形が持っている衝動を、みずみずしく演じている・・・これって俳優の仕事と同じですよね。
あんなにも全世界の子供たちを、大人たちの心を動かしまくって夢中にさせた名人形師ケヴィン・クラッシュは、たとえばトム・ハンクスとかと並ぶような名優なんですよ。彼からはまだまだ学ぶべきことがあると思います。
いや~いいドキュメンタリー見た!
Netflix『セサミ・ストリートへ愛を込めて エルモに命を吹き込んだ人形師』、俳優さん・声優さんには特におススメですよ!
小林でび <でびノート☆彡>