Talking to the body (体に話しかける)
ここではセルフヒーリングの一つの手法についてお伝えしたいと思う。
この「トーキング・トゥ・ザ・ボディ」という名のヒーリングワークは、突然何らかの痛みや不調に襲われたときなどに、効果を発揮する可能性がある。
ハンドパワーとか薬物などの服用に頼らずにできる、自分自身の身体との対話を深めてゆくことによってヒーリングをもたらす手法である。
以前、深夜に突然歯の激痛に襲われ、まったく眠ることができなかったときに、このやり方を試してみた。鎮痛剤を持っていなかったこともあって、だめもとでやってみたのだ。
ところが1時間後には痛みはすっかり消えて、それからはぐっすり寝ることができた。
痛みが消えて嬉しかったというよりも、その効果に自分でやってみて驚いた。
以下、手順を述べよう。
自分の「身体」に向かって語るその言葉は、御自身でアレンジして頂いてまったく構わないので、大体のニュアンスと流れだけを覚えておいて頂きたい。
できれば、まずゆったりとした姿勢をとる。
横になるか、ソファに寛いで座るのがいい。
自分自身の「身体」に向かって、できるだけ声に出して、こう話し始める。
声を出すことができない環境ならば、頭の中で念じる。
①「私の身体よ。
いつも、毎日毎日、生まれてからずっと今日にいたるまで、私のために働き続けてくれて、ありがとう。」
この最初の感謝の言葉はとても大切な一言。
このヒーリングの肝になる言葉だと思う。
この気持ちを持つだけでヒーリングが起こり始める可能性がある。
自分自身の身体を敬い、感謝の念を送る。
普段はなかなかこういう気持ちを持つことは誰もが難しい。
身体は自分のものだと思っている。
自分と身体を同一化して見ている。
奴隷のように酷使していることもあるだろう。
確かに意識は身体の中にあるが、意識と身体は別だと捉えた方がやりやすい。肉体は意識がこの地上に生息するために必要な器であり、乗り物である。
普段は働き過ぎや、ストレス、偏食、運動不足、食べ過ぎ、飲み過ぎ、無理な姿勢、或いは短い睡眠時間などといった酷使の状態に陥りやすい。それでも身体は不平不満を言わずに長年主人の声に従って生き続けている。その状況に耐えきれなくなったときに、身体は不調をきたす。
②「いつも私のために身体を酷使させてごめんなさい。」
身体に不調が現れているということはベースには何らかの疲労やストレスが蓄積し、許容オーバーとなっていることが考えられる。
そうした状態に陥っている身体に対して、感謝と共に謝罪の気持ちを伝える。
③「私は今、身体の○○○○に痛み(不調)を感じている。」
具体的に自分のどこの部分に痛みや不調を感じているかを明確に身体に向かって伝えよう。
④「この痛み(不調)を取り除く、或いは解消するために、私に何かできることがあれば、どうか教えて欲しい。」
最後に、身体に不調を取り除くやり方を尋ねる。
答えは身体の中にあるということを想像し、信頼する。
自分自身の身体の中に主治医がいるというイメージを持ってみる。
身体の中に身体を整えるための智慧が本来備わっている。
主治医=自然治癒力である。
その自然治癒力に向かって、問う。
教えて欲しい、と。
その答えは直感という形で、言葉として意識に浮上してくるかもしれない。
或いは、勝手に手のひらが痛みのある場所に当てられるかもしれないし、また身体が自然と動き始めて、もだえるような連続した動きが身体全体に広がるかもしれない。
過去の記憶が浮上してくることもあるだろう。
そういう場合はその過去の自分に今現在の自分が何かしてあげられるかを尋ねてみる。
どのような形であれ、出てきたイメージや動きを尊重し、それに従う。
①から④までは途中何度でも言い方を変えて語りかけていい。
何らかの答えが出てくるまで時間がかかるかもしれない。忘れた頃に突然その答えがやってくるかもしれない。睡眠中の夢の中にヒントが現れることもあるだろう。
こうした機会に本当は自分の身体に言いたかったという思いが溢れてくるようなら、そういう場合はとことん伝えてあげる。
泣きたくなれば、泣いてもいい。
笑いたくなったなら笑う。
自分で自分の身体を抱きしめてあげる。
さすってあげる。マッサージしてあげる。手を当ててあげる。
何でもいい。
分からなかったら更に対話を深めてゆく。
とことん対話していく。
そこで頭の中で、いやそんなこと言われても、という反発が起こったとしても、その内なる身体の声に耳を傾け、実行に移すことができたなら、ヒーリングが起こると思う。
ここがもしかしたら一番ハードルが高いところかもしれない。
余談だが、この内なる主治医についてひとつ思い出したことがある。
若い頃、アメリカ人の神秘家エドガー・ケーシーという人の話を本で読んだことがある。
彼はクリスチャンとして、日頃心や体の悩みについて人々から相談を受けていた。
ところがある日、たまたま催眠状態に入ったときに、突然まったく別人格が彼の中から現れ、本人は医学的な知識がまったくなかったにも関わらず、クライアントの病気の症状や原因そして治療法などをすらすらと話し始めた。
そしてその治療法を試してみると、実際にその効果が確かなものであることが証明された。
つまりケーシー氏の場合、内なる主治医の存在が催眠によってはっきりと表に現れて、話し始めたということなのだ。
この主治医の存在は本来誰にでも備わっていて、自分自身の身体のことなら何でも知っている存在であるということが、このヒーリングワークの肝でもある。
以上がそのおおよそのやり方である。
シンプルなのであとは御自身で言葉をアレンジして、そして探求し続けて頂きたい。
***
さて私が夜中の歯の激痛に襲われたときに何をしたかを参考までに書いておこう。
④「この痛みを取り除くために、私に何かできることがあれば教えて欲しい。」という問いを発した直後に、作曲家武満徹氏の
【 Vocalism Ai (ヴォーカリズム愛) 】
という曲のことを思い出したのだ。
それは数人の歌手(確かその中には女優岸田今日子さんも参加していた)がそれぞれの声と抑揚とリズムで「AI(愛)」という単語だけを繰り返すという、かなり変わった曲だった。
まるで妖怪映画に出てきそうなちょっと怪しげなムードの曲でもある。
楽器演奏はなく、ひたすら声だけが4分ほど続く。
その曲のことを思い出したので、私は自分の声で自分の身体と歯に向かって声を出し続けた。
ひたすら「愛、愛、愛、愛、愛、愛、、、、、、、」と言い続けた。
一言一言に感謝と謝罪と痛みが消える願いを込めた。
それを1時間位続けた頃に、突然痛みがさっと消えたのだ。
この経験はその後何年後かに再び別の歯が痛み出したときにもやってみたが、同じように痛みが消えた体験をした。
勿論、その後歯科医での治療を受けたのは言うまでもない。
これは私自身の直感でやったものなので、そのやり方がほかの方に役立つかはわからないが、一応参考までにお伝えしたい。
その他にも思い浮かんだことがあったなら、躊躇せずに何でも実行し探求してみて頂きたい。
自分自身の内側を探求することは人生の醍醐味の一つである。