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素敵なお母さん


 毎年5月、6月になると、ネット上では全国各地からカルガモ親子の微笑ましい話題にあふれ、楽しませてくれる。
だが実際にその光景を目の当たりにすると、楽しい以上に彼らの逞しく、そしてその愛情深い姿に釘付けになり驚嘆してしまう。

先日、東京都清瀬市にある公園を歩いていると、水辺近くの草陰にカルガモ親子がひっそり休んでいるのを見かけた。
母親は羽根をドームのように丸く広げ、雛をその下にかくまっていた。
瞼を閉じたり、時折目を開けては、周囲の様子を注意深くうかがったりしている。
二羽の雛が顔をのぞかせているのが見えるが、その下ではどうやら他にもたくさんの雛が身を寄せ合ってじっとしている様子だった。

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カルガモの母親の子育ては、実に興味深いものがある。
食欲旺盛な雛たちは水草を求めて沼地のあちらこちら絶え間なく動き回る。その動きは実に素早い。
水かきのついた小さな足で水面を蹴って進んでいるようだが、その動きがあまりに早すぎてまったく見えない。まるで水面を滑って飛んでいるかのようだ。

母親はそうした雛たち一羽一羽の動きと周囲の状況に気を配りながら、偏ることなく、全体の動きを見守り、そしてゆっくり水草のある場所へと一定方向に導いている様子である。

「命を懸けてあなたたちを守るわ。
でも餌は自力で見つけて食べてね。」
とでも言っているように見える。

愛情と厳しさ、その絶妙なバランス感覚を兼ね備えているような気がする。
野生動物の逞しさと英知。
こんな身近な所でそういうことを垣間見ることができるというのは新鮮な驚きだ。

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おそらくこの子たちは生後まだ3~5日くらいではないかと思う。数えると全部で九羽いる。ところがこの家族の様子をしばらく注視していると、面白いことに九羽のうち一羽だけが兄弟のグループ行動から逸脱して単独行動していることがよくある、ということに気がついた。

このヤンチャくんがなかなか頼もしい。

親子グループで水辺を移動している時、たいていの子たちは母親の横か後ろについて泳いでいるが、この子だけは母親よりも前に出て、先頭をきって泳ぐ。まるで自分が行く先を決めるグループリーダーであるかのごとく。

浅瀬で水草を食べるときには、この子は母親のすぐ近くにいる兄弟たちから離れ、一羽だけで水草の生い茂る奥地にわけ入り、新鮮な未開地をもくもくと食べ続けている。

中には母親の足元にへばりつきすぎて、よく母親の足に踏まている気弱な子もいるのに、このヤンチャくんだけは好奇心の塊。生後数日でこんな違いが出るところがとても興味深い。


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そのことをグループの全体を見回す位置にいる母親は気づいている。
気づいてはいるが、鳴いたり引き戻そうとはせずに、ただじっと見守っている。まったく動かない。

他の八羽が少しづつ浅瀬を移動し、別の水草エリアに移ろうとして、母親からの距離が徐々に離れつつあるのに、母親はまだ動こうとはせず、単独行動するヤンチャくん一羽を離れた位置から静かにただ見つめていた。

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そしてヤンチャくんが自分だけが置いてきぼりになっていることにようやく気づき、兄弟たちのいる方向に慌てて泳ぎだし、合流するのを見届けてから、ようやく母親はゆっくりと子供たちの後を追った。

いいぞっ、ヤンチャくん!
素敵だね、お母さん!

キミたちはそうした母親の愛情と威厳、冷静さを毎日感じながら育ってゆくんだね。

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Lisa Ono
Taiyo no Kodomotachi







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燿
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