夜の町内散歩
(文700字 写真40枚)
夜風が気持ちいい季節になった。我が家は最寄り駅からほど近い住宅街の一角。昭和の家屋と新しいマンションや一戸建てが混在する地域にある。若いファミリー世帯と高齢者世帯の混成地帯で、子供も多いが高齢者をよく目にする。丘に上がる坂道や階段も多いせいか、日が暮れると人通りが途絶え、静まり返る。
街灯がゆく道を照らす。草陰の虫の音が一段と冴えわたる。親猫は塀の上で見張り番。子猫は路上でゴロゴロ。ほとんど誰も歩かない夜道の街灯は、道を照らすというよりも、侘び寂びの風情を演出する舞台照明のようだ。
この街はその昔、長崎街道宿場町として栄えた歴史がある。戦後は鉄鋼業を中心とした、日本を代表する工業地帯の一角として賑わう時代もあった。経済の衰退と人口減少そして高齢化によって当時の活気は今はない。しかし昭和の懐かしい家並みや庶民的な商店の佇まい、また古き街道の面影を残す松並木など、昭和生まれの移住者にとっては趣きのある街として目に映る。
老人だけの街ではない。夜ともなれば駅前商店街の飲食店界隈は活気づく。窓越しに店内を覗くと若い人たちで埋まり笑顔が溢れる。北九州が発祥の地とされる「角打ち」と呼ばれる酒屋も健在。店内にカウンターテーブルを設け立ち飲みで安く飲める。こちらの店では常連客らしき男が一人酒を飲む姿が哀愁をそそる。
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