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DETOURS STORY #7 Sakiさん【後編】

様々な体調不良に悩まされ始めた17歳。その後プロゴルファーとして活躍中にも、数々の検査や診察を経て食物アレルギーや光線(紫外線)アレルギーが判明、25歳でSLEの診断を受けたSakiさん。(詳細は【前編】にてご紹介)
【後編】では、Sakiさんが診断後に直面した苦悩や、心境の変化、夫婦の夢に向かって動き出したご経験を綴ったDETOURS STORYをご紹介させていただきます。


SLE治療を受けながら感じた、仕事も私生活も全てを病気に奪われる恐ろしさ

診断されてからは、プラケニルとプレドニン隔日30mgからスタートしました。私の場合アレルギーや血管性浮腫なども伴っていたので、それぞれの薬も合わせると10個以上の錠剤を毎日飲む事になりました。
結果的に、診断から数年間の間は現状維持の症状が多数、ほんの少しの症状改善しか見られませんでした。
私にピッタリと合う薬と巡り会えていなかったのかなと思っています。(真相は分かりません)
自分と合う薬が見つからない間は、薬が悪いのか、自分の体が悪いのか、はたまた、「自分、仮病してる?」と何も信じられない感覚でした。
診断されるまでに時間がかかった事と、ある医師から「あなたは病気じゃない、あなたが訴える症状に当てはまる病気はこの世にない」などと、心無い言葉をかけられた経験から、診断結果すら100%信じる事ができなくなっていました。

座っているのも体がだるく、階段を登るのはもちろん、平坦な道を歩く事さえ体が重く気だるさを感じる生活でした。

ゴルフがいつ再開できるか分からないだけでなく、急に仕事も私生活も全てを病気に奪われる恐ろしさを感じていました。
それでも生きて行かないといけないので、辛いまま、苦痛を背負ったまま生きる恐怖と、ゴルフと太陽を奪われたとしても、また楽しく笑顔で生きる方法を模索しないといけない、とても複雑な気持ちだったと記憶しています。

最初の頃はとにかく塞ぎ込んでしまい、路頭に迷うと言いますか・・
長い出口のないトンネルにいる、答えがない問題を突きつけられていると感じました。痩せ細ってご飯も食べれない、笑顔も無いしその当時の写真はどこか目の光が消えていたように見えます。

自分の想いを話せる医師との出会い、心身ともに感じた大きな変化

その後ある転機が訪れました。
夫の地元である大分県で3ヶ月間住む事になったのです。
継続的な通院が必要なので近くの病院を調べて行く事に。
そこで出会った医師から、「合う薬が見つかるまで、色々試してみないか」と言って頂きました。
今までは、医師にこうして欲しい、と言う事を伝えて来る事ができなかった私ですが、その先生には思い切って、自分の思いを話す事ができたのは、大きかったと思います。
そこで一つ目に試した薬が、なんと私の身体に変化をもたらしました。
数日間が数週間かは忘れてしまいましたが、比較的早く、しかも自分でも分かるくらい、朝起きた瞬間から羽が生えたように体が軽くて簡単に体を動かせると感じました!
それは本当に、とても不思議な体験でした。

これまで、24時間ずっとどこかが痛い、だるい、という状態が続いていたので、自分でも病気だからだるいのか、気力が無いからだるいのか、病気になる前の“普通”がどうだったか分からなくなっていましたが、
薬が効くと、こんなに変わるのか。
自分の思うように体が動かせると、
「生きるってこんなに簡単なの?楽しいの?」と驚きました。
そして徐々に、今何がしたいか、未来をどうしたいかを考えられるようになっていきました。

やっと自分の人生を取り戻せるかもしれない。
息をしているだけじゃなくて、喜びを感じながら生きる、そのステージまで上がれるような気がしました。


それから少しずつ日常生活も無理をしない程度に動けるようになっていきました。
これまでベッドやソファーから動けなかった日々を思うと嘘のようでした。
年々、プレドニンの副作用で体重が増えていく悩みはありましたが、動けるようになってきた事で普通を取り戻せたような気持ちで嬉しかったと共に、夢を叶える準備ができた、と思い、ある夢に向かって動き出します。

夫婦の夢

それは海外移住です。
長年の夫婦共通の夢でした。
子供の頃学校では転校生という事と父の仕事の関係でカナダ出張に同行する為、学校を休む事も多く、いじめに遭っていました。日本では居場所がなかったけど、カナダでは、同じくらいの歳の友達ができたり、大人たちも皆んなが可愛がってくれました。自分が普通じゃないかのような言葉をかけられ続けていた日本での子供時代に、私は至って普通だと感じられたのはカナダで過ごす時間でした。
だから、私が普通と認められる環境で、自由を感じられる場所で暮らしたいと言う思いが芽生えました。いつか必ずカナダに移住すると、それが子供の頃からの夢でした。

結婚が決まった頃、夫に海外移住の夢を話したところ、夫にもニュージーランドに移住する夢があると教えてくれました。私は行ったことがないし、カナダにしようよ、と冗談まじりに言ったのですが、「新婚旅行でニュージーランドに行こう!行ったら絶対に住みたくなるから!」と言われ、新婚旅行でニュージーランドを訪れました。
もちろん私は心底気に入り、2人の海外移住先はあっさりとニュージーランド、と決まりました。

またそれから紆余曲折を経て、
今、この文章を書いているのは私たちの移住先、オランダからです。
ニュージーランドでは無く、オランダに来た事については、長くなるので今回お話しするのは控えますが、オランダに来た事は、私の病気にとっても私たち夫婦の人生にとっても、プラスに働いてくれました。
と言うのも、ここは雨が多く夏が短い国です。
曇り、雨、たまに晴れ。
夏場は晴れる日が増えて夜11時ごろまで明るいと言う辛い部分もありますが、それは一年のうちの1から2ヶ月程度の話。
ですので、ここでは一年の殆どを、安全に快適に過ごす事ができています。

とはいえ、 移住前は医療に関しての不安がいくつもありました。
日本と同じくらいの医療水準で金銭的負担も私たちが賄える範囲なのか、保険についてなどです。
ですが、オランダは医療水準も高く、移住者にもオランダ国民と同じ保険を適用できる事を知り、雨が多く太陽が出る日が少ない事も含め、私が安心して住むのにはピッタリの国だと分かりました。

オランダ移住後に夫婦で始めたYouTube

今でも体調が悪くなる事もありますが、日本に居た頃とは比べられない程、良くなりました。
数年間飲み続けていたステロイド薬を2024年1月13日より完全に断つことができました。
それによって不安定な時期もありましたが、少しずつ安定した生活、安定した体、メンタルを手に入れつつあります。
オランダに来てからは夫婦でYouTubeチャンネルを始め、病気の事、オランダという国が私にいい影響をもたらしてくれている事、楽しく幸せに生きている事、夢を追いかけ一つ一つ叶えていく事、を記録しています。
世の中に発信するという大きな目的も、もちろん心の片隅にはありますが、始めたきっかけとなったのは兄からの勧めと、離れて暮らす両親を安心させたいという思いからでした。
家族はもちろん、ゴルフ時代の仲間や応援してくれた人など、病気で突然消えた私をきっと心配してくれている人がたくさん居たと思うので、そんな恩人たちに私の笑顔や、病気に負けずに頑張ってるよ、と伝えたいと思いました。
それが今となっては、私の生活の一部であり、辛い時も幸せな時も記録することで、困難に見舞われた時に動画を見返して自分自身がもう一度奮い立つきっかけにもなっています。
そしてもう一つは、ゴルフから離れてから人と関わる機会がめっきり減っていましたが、今ではYouTubeを通してたくさんの方と触れ合う事ができるようになりました。
これは私にとって、とても大きな変化、嬉しい変化でした。

今では、病気を知って貰う事はもちろん、同じ病気の患者さんと支え合ったり、私の体験談や今の姿を見て、少しの希望を持つきっかけになれば嬉しいと思っています。なので不定期ではありますが、私が病気で悩んだ話、症状や闘病にまつわる動画も投稿しています。
やはり病気は私から切り離す事はできないので、視聴者の方には辛い時も楽しい時も、ありのままを見てもらい、
病気があっても夢を持っていいし、一つの夢が終わってしまったとしても、人生は続く。そしてまた生きる。
とにかく今を生きる姿を見て貰い、それぞれの方にそれぞれの受け止め方で、私からの小さなメッセージを受け取って貰えると嬉しいと思っています。
私にできる事は、とてもちっぽけではありますが、自分ができる範囲で、楽しみながら、動画を作っていきたいです。

オランダで叶えた新たな夢

今後の夢として、オランダで日中でも薄暗い日にゴルフをやってみたいと思っていました。今はゴルフクラブも持っていないし、オランダでコースを回るためにはいくつかの証明書を取得する必要があります。現地ゴルファーのコネクションも必要です。そこにお天気の条件を加えると、簡単ではありません。

しかし、先日、現地の友人と夫のサプライズで2年ぶりにクラブを握り、ゴルフをプレーする事ができました!
久しぶりのゴルフは、夫や自分の大切な友人とゴルフという遊びを心から楽しんだ時間となりました。

プレーした事よりも、自分が大切だと思っている人に、自分が人生を賭けてやってきた事を見せられたのが、何よりも嬉しかったです。

ゴルフは、性格が出やすいスポーツです。
ある意味、本当に通じ合える、全てを分かち合えるスポーツです。
この経験で、ゴルフには人と人を繋ぐ側面がある事を改めて感じると共に、私はゴルフを通じて、絆を深める事の楽しさを実感する事ができました。

これからも、私らしく今を楽しんで生きていきます!


長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。
Detors SLE様、そして創設者であるしおりさんのご発展を心よりお祈り申し上げます。
いつかSLEが治る病気になりますように。

プロゴルファー岡村咲


今回インタビューにご協力いただいたSakiさんのYouTubeのリンクはこちら

オランダでの生活、SLEについて、アスリート夫婦の日常についてなど、発信しています!ぜひ訪れてみてください!



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