海外移住を前提とした投資戦略
「自己防衛、投資、あと海外移住」というセリフで有名な某インタビューがあるが、実のところ日本での投資と海外移住を両立させるのは難しい。というのも、日本を1年以上離れていわゆる「非居住者」となった場合、日本国内で開設した証券口座からの取引は一切できなくなるからだ。
となると、インデックスファンドを毎月NISAで積立といった資産形成目的の堅実な投資を行っていた場合、海外移住が決まった途端、一度利益ないし損失を確定させた上で再スタートとなってしまう。
赤字の資産を塩漬けしたい、今は課税されたくないなど投資先によって色々と事情があるので、なんとか損益確定を後回しにしつつ継続できる投資先はないものか、ということで色々勉強がてら調べてみた結果がこの記事である。
注:本記事はNISAをやってる程度のほぼ素人である筆者の個人的なまとめであり、特定の金融商品への勧誘を目的したものではありません。
オフショア投資
検索していて一番最初にヒットしたのがこの方法。タックスヘイブンに拠点を置くファンドに、香港やシンガポールなどの代理店 (Independent Financial Advisor)を介して投資信託などを購入するというもの。
日本では規制によりセールスが禁止されているため、SNSなどを見ると、代理店からのキックバックを目的としたネットワークビジネスなど胡散臭い領域で広まっているように見受けられる。
投資そのものは米国株や全世界投資などごく平凡なものだが、数十年単位での契約を前提としているがゆえに途中解約だとほぼ確実に原本割れしてしまう商品なため、何も知らない投資初心者が悪質なセールスに騙されて契約した挙げ句早期撤退して大損したという投稿が後を絶たない。
海外移住の予定が定年退職後など遠い未来なら、分散投資の選択肢としては有り得るかもしれないが、米ドルで投資するだけなら日本国内の証券会社にいくらでも方法があるので、海外移住の予定がないならわざわざここまで面倒かつ規制外の高リスクスキームを使う必要はないと思われる。
iDeCo
これまでiDeCoは海外移住した場合、移住前までの積立金の運用しかできなかったが、22年の法改正で国民年金に任意加入すれば継続運用できるようになっていた。
とはいえ、
・日本国内に口座を維持して掛金を送金し続ける必要がある
・引き出し時は日本で課税される、場合によっては居住国でも追加課税となる可能性がある
など事務手続きが煩雑になる可能性が高い。老後を再び日本で、という場合は良い選択肢に見えるが、そうでない場合はまだまだ難易度が高そうというのが実際の印象。
移住先の国で証券口座を開設する
移住先の国で証券口座を開設し、そこから投資を再スタートさせるプランもある。しかし、
・移住先が途上国なため金融制度が未整備で満足の行く投資ができない
・また別の国に引っ越すとなった場合、その口座を維持できない可能性が高い
など、この方法も考慮すべきことが多い。骨を埋める土地を見つけられて覚悟が決まった場合は採用しやすい非常にシンプルな方法だと思われる。
投資アプリ
これまた日本では規制により一切利用できないが、海外では投資アプリとして個人投資家向けツールの普及が進んでいる。
有名どころのアプリは主要先進国を軒並みカバーしているので、住所変更と身元確認のみで資産を引き継げるようだ。移住予定がそう遠くない場合は、日本での投資は控えて、出国後にアプリを使って本格的に投資を始めるというアプローチも有り得る。
結論
いつ、どこに移住するのかが投資戦略を立てる上で重要であり、その条件に合致する商品・経路で投資する必要があるため、万人に向けて勧められる投資先というのは存在しないようだ。
海外移住をすると、多くの場合助けてくれる親族やコミュニティなしで生きていかなければならない。自己防衛に割くリソースも必然多くなるので、金融リテラシーもその一つなのだろう。
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