多角化する事業や組織の中で、レバレジーズがデザイン組織を立ち上げるためにやったこと
第一線で活躍するデザイナーやデザインマネージャーの苦悩や、乗り越えてきた壁を取り上げていくdesigner's Story by Cocoda。
事業が多角化し、総勢約1,000名の組織、約35名のデザイナーを抱えるレバレジーズより、デザイン戦略室 室長の小林信也さんにお話をうかがいます。
◆ 小林信也さんのプロフィール
マーケティング部デザイン戦略室 室長。デザイナーとして制作会社やフリーランス、総合商社の関連企業などで広告制作や事業の立ち上げを経験し、2018年にレバレジーズに入社。デザイン戦略室を立ち上げ、組織や事業の課題解決に取り組んでいる。
お話をうかがったテーマは、「事業が増えていく中でのデザイン組織の立ち上げ方」について。
多くの新規事業が生まれ、既存事業も拡大していく中で、デザイナーも増加。社内の知見共有や、デザイナーの役割に課題感を感じていたレバレジーズが、いかにデザイン組織を立ち上げたのか、リアルなお話をうかがいました。
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◆目次
1.なぜデザイン組織を立ち上げることになったのか?
2.いかに全社を巻き込んで情報共有の仕組みを築いたのか?
3.どのように社内から信頼を獲得していったのか?
4.どのようにワークフローにデザインを組み込んだのか?
5.デザイン組織作りをする上で、重要なポイントとは?
6.レバレジーズのデザイン組織は何を目指すのか?
1.なぜデザイン組織を立ち上げることになったのか?
ーー日本でもデザイナーが少しずつ増えてきており、組織化していく流れが出てきていますが、デザイン組織の立ち上げの経緯を教えていただきたいです。
まず、2018年に大手商社からレバレジーズに転職してきたとき、最初にマーケティング部の上司からオーダーされたのが、「デザインシステムをつくってほしい」だったんです。効率化やデザイナーの負担の軽減を意図してのことだったと思います。
ただ、当時入ったばかりの自分には、「デザインシステムをつくることでは解決できない、もっと大きな問題もあるのではないか」と感じていました。
つまり、デザインシステムを作ったとしても、それを運用するデザイナーが働きやすい環境になっておらず、結果的に生産性も落ちてしまったり、他の部署とも連携が取りづらい状況になっていると。
ーー具体的にはどんな状況だったのでしょうか。
当時の組織は、部署ごとに異なるチャットツールが複数使われていて、コミュニケーションや情報共有に大きな課題を抱えていました。組織内のメンバーも、アクションをなかなか起こせないような状況でしたね。
そのため、デザインシステムをつくることよりも、まずは根本的な問題であるコミュニケーションの土台を整備することから着手し、その後、社内でのデザインの位置付けの見直しや、デザイナーの働きやすさの問題を解決するために、デザイン組織立ち上げに踏み切りました。
◇ ケース1:デザイン組織を立ち上げるタイミング
・組織全体が大きくなってきて、情報を共有しにくくなってきたり、分業が過度に起こってしまっているタイミング
・複数の事業が運営されて、事業間での情報の共有が行いにくくなってきたタイミング
2.いかに全社を巻き込んで情報共有の仕組みを築いたのか?
ーー とはいえ、情報共有の問題や、社内コミュニケーションの問題を解決するのは、なかなか難しいように感じます。どのように進められたのでしょう?
まずは、全社でのコミュニケーションツールの統一を計画しました。
当時、社内のエンジニアが同じように、ツールの統一や情報共有の課題の解決に動いており、彼らと一緒に進めていくことができたんです。
そういった中で、マーケティングの方々や、エンジニアの方々、さまざまな部署や役職の方に呼びかけながら、半年ほどかけて全社でオープンなslackをつくることができました。
代表とも協議し、なかなか全社でのslack有料版導入に踏み切れなかったところを、今では社員全員が常用しています。
ーー なるほど。まずはコミュニケーションツールを統一するところから始めたんですね。さらに取り組んだことはありますか?
組織全体で、課題意識を統一することは並行して進めていました。
組織の問題とはいえ、1点のみを挙げて、「ここが問題だ、変えよう」と言っても、大きな組織はなかなか動くことができません。
そのため、組織と事業の課題を大きなものから小さなものまで、すべてリストにして全社のslackで共有したんです。
そして、社員とコミュニケーションを取りながら、「今のうちの問題の全体像はこう。中でも、情報共有の問題が解決しないことには他の問題も解決しない」と納得感を深めていきました。
◇ ケース2:情報共有の仕組みづくり
・ツールの統一を、現場で働いているメンバーと共に行うことで、現場になじむ形で統一を行っていくことができる
・組織と事業の課題両方を可視化し、その上で、情報共有の仕組みに優先的に取り組むべきであることを、メンバーと共有しながら納得感を持って進めていく
3.どのように社内から信頼を獲得していったのか?
ーー 情報共有の仕組みをつくっていく中で、どんなコミュニケーションを取り、信頼を獲得していったのでしょうか。
まず意識していたのは、対立構造を生まないことですね。
「エンジニアvsデザイナー」、「デザイナーvsマーケター」のような構図をなるべく生まないように心がけました。
ーー 具体的には、どのようにコミュニケーションをされたのでしょうか。
あくまで、相手の立場や意見をしっかり理解しながら、相手にとっても「こうしたら、もっとよくなりませんか」というスタンスで、施策のプロセスを明らかにして話しています。
加えて、自分がデザイナーであるという立場を表明した上で、組織を働きやすいものにしていくことも、デザイナーの役割の一つであるということを、他のデザイナーにもデザイナーではない人たちへも伝えていきました。
◇ ケース3:信頼を獲得するためのコミュニケーション
・エンジニアvsデザイナーなど職種や部署間の対立を生まないようにしていく
・デザインマネージャーであるという立場をしっかりと表明することで、デザイナーだけでなくデザイナー以外のメンバーにも、デザインの役割を示していく
4.どのようにワークフローにデザインを組み込んだのか?
ーー 情報共有が少しずつできてきた段階で、さらに1歩進めていくために、どのようにデザインを事業作りのプロセスに浸透させていったのでしょうか?
当時の状況としては、「デザイナーはビジュアル部分やコーディングの担当」というような認知が組織全体であり、いわば必要な時だけ発注して作業してもらうような社内受託に近い状態でした。
そのため、そもそもデザイナーへの認知自体を変えていく必要がありました。そこでまずは、デザイン戦略室という窓口をつくって、企画の上流から相談を受け付けるようにしました。
また、それだけでは認知は変わらないので、とにかく企画があればミーティングに混ざりにいく、などもやっていましたね(笑)。
ーー かなり泥臭いこともされていたのですね。デザイン組織の内部、デザイナーに対してはどのような働きかけをされていましたか?
デザイン戦略室をつくるにあたり、デザイナーの強みがわかるように役割分担をしました。
新規事業に強いデザイナーによる「スタートアップデザインチーム」、事業やサービスの施策を担当する「グロースデザインチーム」、各部署の依頼を横断的に解決する「コミュニケーションデザインチーム」の3つです。
役割を分けることで、「デザイン戦略室ではこういうことができますよ」というような表明にもなりますし、デザイナーに対しても事業やサービスへの具体的な関わり方を示すことができるようになったと思います。
◇ ケース 4:デザインをワークフローに組み込む
・デザイン戦略室のような窓口をつくる
・窓口をつくるだけでは、状況は変わりにくいため、積極的に企画段階や事業の初期段階からデザイナーが関わり、ミーティングに参加していく
・デザイナーに対しても、改めて役割を提示し、個人個人の強みを活かしたデザインをできるようにしていく
5.デザイン組織作りをする上で、重要なポイントとは?
ーー ここまでデザイン組織作りの流れを聞いてきましたが、振り返ってみて「やってよかった」「もっとやっておくべきだった」という点はありますか?
もっとやっておくべきだったという点は、立ち上げ当時から積極的に採用に取り組んでおくべきだったということです。
社内の情報共有など在籍しているメンバーへの課題にフォーカスしていたため、採用課題を認識していたものの、少し優先度を下げていました。
しかし、マネージャー層や育成体制が整っていない段階で、新卒でデザイナーを採用していたことは、デザイナーのためにも組織のためにもあまり健全でない状態だったかなと思います。
そのため、現状はプロジェクトのメンバーをリードしていくことができるデザイナーの中途採用に積極的に取り組んでいます。
ーー反対に、「取り組んでよかった点」はありますか。
デザイナーのキャリアを示していくことはとても意義があったと感じています。
デザイン戦略室の立ち上げ時もそうなのですが、「スキル面ではどこを伸ばしていきたいか」「今後どんな分野に力を入れていきたいか」を1on1などを通じてコミュニケーションを取っていきました。
そうすることで、個人の指向性も把握できて、適切な配置がしやすくなったのはもちろん、デザイナー個人にとってもはたらきやすさがグッと増したように感じます。
Q5.デザイン組織作りをする上で、重要なポイント・アンチパターンとは?
・社内の育成体制やマネジメント体制と採用は表裏一体。組織課題にフォーカスする際は、バランスを大事にする
・キャリアが不明確になりやすいデザイナーの性質もあり、個々人としっかりとコミュニケーションを取っていくことが重要
6.レバレジーズのデザイン組織は何を目指すのか?
ーー これからさらにデザイン組織を通じて、事業を成長させていくレバレジーズが次に目指しているものを教えてください。
まずはマネジメント層の強化を計っていこうと思います。
事業が増えてデザイン戦略室に対しても依頼案件の幅が広くなってきて、デザイナーの立ち位置も少しずつ変化してきました。
そこで、さらにデザインをワークフローに浸透させていくために、デザイン組織自体のレベルをあげ、デザイナーがもっと事業にコミットできるように品質、生産性も高めていく必要があります。
そのために適切な権限委譲をしていったり、新たにマネージャー層を採用していったりして組織を拡大しています。
採用においても、デザイン組織が過渡期であることを正直に話しながら、「一緒に組織をつくりあげていきたい」と思ってもらえるような人に入社していただくようにしています。
ーー ありがとうございました。デザイン組織立ち上げの生々しいお話をうかがうことができました。今後のレバレジーズデザイン組織の展開が楽しみです!
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