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「DESIGN CAMP@奥大和2022・1歩目の報告会」レポートVol.3/「吉田屋」のその後
「DESIGN CAMP@奥大和2022・1歩目の報告会」レポートVol. 1は、「マルサンフットウエアー」、Vol.2では「大橋茶屋」の取り組みを紹介しました。
このVol.3では、「吉田屋」についてお届けします。
<参加メンバー>
会場参加:株式会社吉田屋4代目の冨美さん、5代目のやよいさん、デザイナー・北川さん
オンライン参加:台湾デザイナー・Leo Huangさん、通訳・コーディネーター・乃一さん
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9月のプレゼンテーションでは、「味覚の旅」をテーマに新しい葛の食べ方提案や蔵を活用したBARを開催するといったプロモーションを提案した吉田屋チームのデザイナー。
それから約4ヶ月が経ち、デザイナーの北川さんの思いには少し変化があったようです。
「これまで吉田屋さんは吉野葛のお菓子を作っているイメージが強かったのですが、それと並行して4代目の冨美さんは大和当帰などを使ったスパイスも開発していらっしゃいます。
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また、商社のようにお菓子などの商品を卸す事業も手がけていらっしゃるので、葛以外の商品も広めていける可能性を感じました。
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そこで今回は冨美さんのニックネーム『ふーみん』を店名にした、『すなっくふーみん』を開催して、葛の新しい食べ方やスパイスを使ったおつまみを楽しんでいただこうということになったんです。
『味覚の旅』を提供する『すなっくふーみん』はコミュニケーションの場でもあるので、今後は日本各地はもちろん、海外でも開催できたらいいなと思っています。
ふーみんさんとやよいさんと一緒にお酒を飲んだとき、おふたりの掛け合いが面白くてパワーアップする感じがあったので、ふーみんさんがスナックのママ、やよいさんにアシスタントをしてもらったら楽しいかもしれないとの構想もありました」(北川さん)
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「すなっくふーみん」開催にあたり、象徴となるような看板やランプを作った冨美さん。達筆な文字は、書の師範でもある冨美さんの手書きです。
「ふーみんさんの字がとても素敵なので、私のデザインを使ってもらうよりも『すなっくふーみん』らしい雰囲気が出るのではないかと思いました」(北川さん)
「ランプは『あかり工房吉野』さんのワークショップで作らせてもらいました。素材は、吉野ひのきと吉野和紙なんです。
コードレスと、コード付きの2種類を作ったので、コードレスを持ち運び用にしようと思います。
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玄関の行燈には吉田屋のロゴを入れました」(冨美さん)
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お客様を迎える演出を整えたあとは、ドリンクと食べ物です。
今回提供されたのは、台湾デザイナーのLeoさんが9月のプレゼンテーションで提案した「Yuzu-Flavored Sparkling Drink・ゆず葛餅入りのカクテル」。
バーテンダー経験のある大橋茶屋の小屋さんもレシピ提案に加わり、そのアドバイスのもとノンアルコールカクテルができあがりました。
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そのドリンクに合わせて、大和当帰やハーブを使った吉田屋のスパイス、調味料を使ったおつまみも。
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その様子をオンライン上で見ていたデザイナーのLeoさんは「すごく感動しました、素敵だと思います」とコメント。
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「すなっくふーみん」開催にあたって冨美さんは
「去年の8月に『DESIGN CAMP@奥大和2022』がはじまって、ものすごいスピードで吉田屋の歴史や背景をまとめてもらい、最終的に女性目線、女性の体にいいもの、子どもたちへの食育などの提案をいただきました。
Leoさんからはレストランでも使えるような高級路線の提案をいただきました。
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これらを融合させようと試行錯誤する中、今までの商品を販売するスタンスから変えてみようと。
今回は『味覚の旅』とのテーマをいただいたこともあって、『奈良の自然の美』、『魅力的な人びと』、『味』の3つの「”み”覚の旅」ができたらいいなと思い、『すなっくふーみん』を企画しました。
今後の吉田屋の第一歩になったらと思います」と話しました。
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やよいさんは、「突然に生まれ出た『すなっくふーみん』がパワーを秘めて一人歩きしていますが、その流れに身を任せようと思います。
これも母のキャラクターあってこそですし、それを北川さんたちが見てくれていたんだなと。
私もチーママとして母を支えながら、『すなっくふーみん』を通して人と人が繋がっていける空間を作れたらと思っています」とコメントしました。
今回の報告会には冨美さんとやよいさんが参加されましたが、長女の桃子さんも主にデザイナーとして吉田屋の経営に携わっていらっしゃいます。
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「冨美さん、桃子さん、やよいさん、それぞれに役割があるので、皆さんが自由に動けるものを作った方が吉田屋さんのためになるのでは?と思ったこともあって、1歩目として『すなっくふーみん』を開催しました。
今後これをどう進めていくのかは未知数ですし、一見するとふざけているように見えるかもしれませんが、Leoさんが『味覚の旅』というコンセプトを考えてくれたので、まずは吉田屋と一緒に美味しいものを食べて楽しもうと。
1歩目はハードルを低くしたほうが、未来につながっていくだろうとこの形に落ち着きました。
こうして吉田屋さんが動くことによって下市のことも知ってもらえると思います」(北川さん)
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この報告会には、前回の「DESIGN CAMP@奥大和2021」に参加していた事業者である、吉谷木工所(奈良県下市町)の吉谷さんのほか、吉野杉を使った漆の器などを手がける作家の大竹さんも出席。新たな繋がりも生まれていました。
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「DESIGN CAMP@奥大和」が当初から掲げている、
「海外デザイナーと国内デザイナーが奈良県・奥大和地域内の事業者に寄り添い、『販路拡大』につながるようなデザインを提案する」
「相互の暮らしや文化について深く理解し合い、『縁』をつないでいく」
「事業者の今後の新たな事業展開の足がかりを作る」
「奥大和地域の魅力を国内外問わず広く発信する機会を目指す」
これら4点について「DESIGN CAMP@奥大和2022」に参加した各チームはクリアできたのではないでしょうか。
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今回は2022年度のプログラムに参加した事業者のその後をレポートしましたが、2016年〜2021年の「DESIGN CAMP@奥大和」に参加した事業者も未来に向けて歩みを止めずに進んでいます。
今後、このnoteでは各事業者の動きもレポートしていきたいと思います。