音楽制作AIスタートアップ「Aux Music」から学ぶ、新時代のユーザー体験(UX)
0. この記事で分かること
海外AIスタートアップの最新情報
工学的思考法「TRIZ」を活用した体験価値の分析フレームワーク
ユーザー体験(UX)におけるイノベーション
1. 次世代の音楽制作を届ける「Aux Music」とは
Aux Music は、2021年に作家兼ミュージシャンであるジョー・ベルハム氏(Joe Belham)によって創設された、音楽制作に革新的なアプローチを提供するスタートアップ企業です。
最新のテクノロジーを活用して、音楽制作者やポッドキャスター、音楽産業関係者がより効率的に作業を行い、創造性を発揮できる環境を提供しています。
「Aux Music」の3つの特徴
テキストプロンプトとAIの力を活用して、音楽制作者が素早くサンプルを作成し、制作プロセスを効率化。
17種類の主要なDAW(音楽制作ソフト)をサポートし、リモートコラボレーションやマスタリングツールなど、幅広い機能を提供。
音楽制作者、ポッドキャスター、音楽産業関係者など、さまざまなユーザーをつなげるプラットフォームを提供。
2. 工学的思考から紐解く「Aux Music」
この記事では工学的思考法の一つであるTRIZ(Theory of Inventive Problem Solving)を用いて Aux Music のユーザー体験について探求します。
TRIZ(Theory of Inventive Problem Solving)とは
ソビエト連邦発の問題解決理論・全体最適化理論・システム思考法・クリエイティブ思考法です。
理論や発明原理の研究を深めるだけではなく、マネジメント・創造性開発などの能力開発分野やIT分野、社会分野への拡大・研究が広がっており「独創性」「流暢さ」「柔軟性」が、TRIZの特徴となっています。
40の発明原理から体験価値を分析する
TRIZでは40の発明原理から思考のサポート行います。今回はその中の5つの発明原理を用いてユーザー体験を分析します。
分析結果
Aux Music のビジネスの「独自性(Uniqueness)」を抽出した結果、以下のような特徴が分かりました。
Universality「多様なユーザーのニーズに対応する」
#多様性ニーズ
17種類の最も人気のあるDAWをサポートしており、様々なユーザーのニーズに対応。さらに、リモートコラボレーションや音楽関連サービスの提供など、多様な機能を提供することで、クリエーター以外にもオーディエンスやレーベルに対してのアプローチも行っている。
He Other Way Round「考えを逆転して音楽制作を効率化する」
#代替性ソリューション
音楽制作者が通常時間をかけて行う作業を短縮し、新しい方法で音楽を作成する手法を提供。例として、音楽制作者が特定のサウンドを探すのに時間を費やす代わりに、テキストプロンプトを使用してそのサウンドをAIに指示し、即座に作成することなどが挙げられる。
Dynamics「常に進化するサービスを提供する」
#アジャイルUX開発
ユーザーコミュニティのシステムを確立することによって適切なアップデートやパッチ配信など常に新しい機能やサービスを追加。これにより、ユーザーは常に最新のツールを利用することができ、より効果的に音楽制作を行うことができる。
Mechanics Substitution「ユーザーの時間とエネルギーを節約する」
#タイムパフォーマンス
テキストプロンプトとAIの力を活用して、音楽制作プロセスを効率化。これにより、音楽制作者が貴重な時間とエネルギーを節約し、より多くの作業に集中することができる。
Discarding and Recovering「作業量を減らして効率化する」
#タスク抽象化
音楽制作者が時間を節約し、作業を簡素化。例として、自動的なファイルアップロードやマスタリングツールの提供など、作業量を減らす機能などが挙げられる。
「多様性ニーズ」「代替性ソリューション」「アジャイルUX開発」「タイムパフォーマンス」「タスク抽象化」
この5つの要素が Aux Music のユーザー体験の柱となっていることが分かります。
3. 異質なユーザー体験の"イノベーション"
これまでの内容から Aux Music は異質といえるユーザー体験のイノベーションを起こしているという考察を行うことができます。
既成概念を覆す"イノベーション"
これまでの音楽制作のプロセスには、サウンドを探したり、メロディを構築するといった所謂「骨組み」のようなものが含まれており、クリエーターの#タイムパフォーマンスに支障をきたしていました。そのプロセスをテキストプロンプト・AIという#代替性ソリューションによってクリエーターが頭の中で思い描く音楽を文字で具現化することが可能になっています。
楽器による音楽制作 → DAWによる音楽制作 → 文字による音楽制作
彼らは音楽制作の手段に対する既成概念を覆す"イノベーション"を起こしたといえるでしょう。
産業形態を覆す"イノベーション"
これまでのクリエーターは「SNSによる発信」「レーベルへの持ち込み」などの手段によって楽曲をリリースしてきました。ですが、このような手段ではクリエーターという1つの要素しか動作せず、インディーズ音楽産業が停滞し新規クリエーターの創出が絶たれてしまいます。
しかし Aux Music はユーザーコミュニティを確立することにより、この問題を克服しました。クリエーターはもちろんオーディエンスやレーベルとのネットワーキングを行えるようなプラットフォームを産み出し#多様性ニーズに対応することで、ステークホルダーによる共創を促進しているのです。
さらに、多種多様なフィードバックが流動的に交換されるコミュニティではプロダクト・サービス全体の#アジャイルUX開発に繋がったと考えられます。
彼らはインディーズ音楽の産業形態を覆す"イノベーション"を起こしたといえるでしょう。
4. まとめ
新時代のユーザー体験(UX)を構築するためには5つの要素が重要です。
多様なユーザーのニーズに対応する #多様性ニーズ
考えを逆転してプロセスを効率化する #代替性ソリューション
常に進化するサービスを提供する #アジャイルUX開発
ユーザーの時間とエネルギーを節約する #タイムパフォーマンス
作業量を減らして効率化する #タスク抽象化
「既成概念を覆す"イノベーション"」「産業形態を覆す"イノベーション"」など従来のシステムや手段の破壊を生じさせるイノベーションを起こすことによりユーザー体験のみならず、ステークホルダー全体の体験価値を向上させることが可能となるのです。
結論:新時代のユーザー体験(UX)とは!
あとがき…
今回が初のNote投稿となります。実は記事の内容自体は趣味で行っていたスタートアップ企業分析のストックから引っ張ってきたものです(笑)
イノベーションの本質的な深淵を覗くことで新たな価値を生み出せるように日々奮闘しております。
時間があれば今後もアウトプットの場として活用できればと思うので、ぜひ見てもらえると嬉しいです!