【イベントレポート】デザイナーが活躍できる環境づくりとは?-後編-
今回は、「Uzabase DESIGN WAVE」の一環として、株式会社グッドパッチが運営するデザイナー特化のキャリア支援サービス「ReDesigner」とともに2021年11月に開催されたトークイベント「SaaS事業3部門集結。ユーザベースが取り組むデザイナーが活躍できる環境づくりとは?」をレポートします。
イベントでは、現在約500社のデザイナー採用を支援する「ReDesigner」の石原仁美さんをファシリテーターに迎え、B2B SaaS事業 執行役員 CDOの平野友規、SaaS Design Divisionの茂木孝純、進藤かさね、廣田奈緒美ら各プロダクトに所属するデザイナーが登壇。
CDOがいる環境でのデザイン組織の魅力やチームづくり施策など、さまざまなバックグランドを持つデザイナーたちが活躍できる環境をどのようにつくっているか、現場のリアルを語り合いました。
今回はイベントレポートの後編をお届けします。前編はこちら!
第2部:トークセッション
デザイナーの仕事は「モノをつくるだけ」ではない
——デザイン組織を事業と接続するにあたって障壁となりやすい、デザイナーに起こる思考習慣のマインドセットと、その解決方法についてお伺いしたいです。
茂木:私は前職が受託の会社だったので、入社してからカルチャーショックがありました。
デザインをつくるプロセスで、そもそもこれをする必要があるのか、何を解決したいのかといったビジネス要件から入り、徐々に欲しい機能や仕様を話して、その後UIデザインでいえばプロトタイプをつくる。この流れの前半部分で、みなさんものすごい議論をするんです。
このときに「デザイナーはモノをつくるだけ」というマインドで「難しい話を眺めるだけ」になりがちですが、これが障壁になってしまうのはもったいないですね。
要件が固まる前にたとえばグラレコをするなど、デザイナーの視覚化する力を使って議論に積極的に入っていく。「つまりこういうことですよね?」と図解で表すだけでも存在感を出せると思います。
これはコンピテンシーマップをつくる際にも話題に上がりました。必ずしもデザインのスキルとは違うのですが、議論の中で交通整理をするその動きを評価することで、積極的にデザイナーも議論に関わっていくのではないかと思いますね。
進藤:私はSPEEDAのプロダクトでUIデザイナーをしているのですが、SPEEDAでは新規プロジェクトが立ち上がる際に関係するチームのメンバーを初期段階から巻き込んでいくスタイルが確立されているように感じています。
プロジェクトが立ち上がったらビズサイド、テック、デザイナーなど関係するメンバーが全員参加してキックオフ合宿を行います。メンバー同士の顔合わせや目線合わせ、お絵かきタイムなどをして、インセプションデッキをつくってその後のフローに続いていくのですが、デザイナーとしてプロジェクトの早い段階から関われる環境が整っていますね。
自らも、臆すことなくプロジェクトの初期段階から自発的に参加することが大切だと考えています。
デザイナー以外にも「伝わる言葉」で話す、デザインコミュニケーションの観点を評価軸に取り入れる
——採用や育成、評価制度を作る上で他の職種と変えた点、配慮した点はありますか
平野:デザイナー固有の力とは何かといった点に配慮しました。たとえば、ビジュアライゼーション。図解する力や見える化する力ですね。もう1つ、たとえ話ができるかどうかも重要です。ビズサイドやエンジニアサイドに向けて、デザイナーの言葉で話してもうまく伝わりません。コンピテンシーにはそうしたデザインコミュニケーションの観点を取り入れました。
——メンバーのみなさんがコンピテンシーマップをつくる中で、ソフト面のスキルとしてデザイナー特有のものだと感じたものはありましたか?
茂木:プロジェクトマネジメントの力ですね。「1人でタスクを進められる」「誰かと協力しながらプロジェクトを推進できる」、さらにレベルが上がると「大きなチームでプロジェクトを推進できる」というふうに、ものごとを推進する力を見ています。
プロジェクトマネジメントの手段は、視覚化でもいいし、コミュニケーションでもいい。どんな手段でもいいので、みんなを前に進めることができる力を評価しています。
オンボーディングでは内面を見せ合うことを意識
——中途入社したメンバーのオンボーディングで工夫されていること、意識されていることがあれば教えてください。
廣田:ユーザベースに入社して7〜8年になりますが、これまでに2回、大きな失敗をしたと思っています。
1回目は、オンボーディングで距離感を遠くしすぎてしまったことです。それを意識して、2回目はマイクロマネジメントになってしまったのです。2回目の方は特に、コロナ禍が始まってすぐのタイミングで入社をしてきて、すべての業務がオンラインで進むため、密になりすぎてしまいました。
ユーザベースが大切にしているバリューの中に「自由主義でいこう」というものがあります。今考えると、あのときは相手の自由を奪うようなオンボーディングをしていたなと、本当に反省をしています。
マイクロマネジメントがだめだとか、任せすぎがよくないということではなく、マイクロマネジメントをするにしてもその理由や背景、期間などをきちんと説明すべきでした。そうした2つの極端な失敗は、大きな反省点でしたね。
——最近入社する方に対して意識していることはありますか?
茂木:正直なところ、距離感やバランス感は難しいですね。私も1on1はしていて、自分の失敗談を共有したり、純粋に困ったことがあったら教えてもらったりして一緒に解決したいとは思っています。「あなたの味方だよ」という思いはものすごく強いのですが、それが行きすぎると引いてしまう人もいますよね。そうした点で、距離の取り方は難しいです。
平野:中途入社の方は不安でいっぱいなんですよね。私は誰で、どういう価値観を持っているか、どんなバックグラウンドを持っているか、性格やキャラクターをいかに早く自己開示してもらうかがキーなので、ワークショップでお互いの内面を見せ合うことを意識しています。とにかく価値観を共有し合うようにしていますね。
未経験業務の不安は「コミュニケーション投資」で解消
——上流から関わることで、わからないこと、学ばなければいけないことが多く出てくると思います。皆さんは今まで経験したことのない業務をどのように乗り越えていますか?
廣田:2021年10月に、INITIALとNewsPicksが掛け合わさった新しいメディアをリリースしまして、私はそこに携わっていました。ちょっと特殊な取り組みで、最初から関わる人が非常に多いことと、NewsPicksはBtoC、INITIALはBtoBという業態の違いもあって、大変でしたね。
関わる人が多いと、お互いに使う言葉も微妙に異なってきます。大きなドメインの特定の分野についてがわからないというよりも、会話の中で使われている言葉の意味あいにすれ違いがないかどうかを常に確認する必要がありました。
茂木:進藤さんはR&Dや特許といった分野に携わっていますが、その辺りいかがですか?
進藤:私はひたすら自分で調べるところからのスタートでした。わからないことはビズサイドの方にとことん質問させてもらって理解を深めました。社内に聞ける方がいればまだ良いのですが、他のプロジェクトですとユーザーとの共同開発をする中で、相手がおっしゃっている専門用語の意味が理解できないことがよくあって……その辺りは苦労しました。
——誰かに聞くための第一歩が踏み出せない方も多いのではないかと思いますが、そういったハードルはありませんか?
廣田:私自身は聞かれると嬉しいと感じるので、こちらから聞くと相手に喜んでもらえるんじゃないかと思っています。
茂木:とても印象に残っていることがあって、「『コミュニケーションコストがかかる』とよく言うけど、『コスト』と言うのをやめませんか?」と言った人が社内にいました。「『コスト』ではなくて、『コミュニケーション投資』です」と。
これは自分の肌感ですが、ユーザベースは他社と比べて、いろんな人と対話する時間が多いように思います。コミュニケーションをいやがる人はいませんし、日常的に周りの人に声をかけやすい雰囲気があるのはありがたいですね。
——BtoBのサービスはデータモデルが複雑になりがちだと思うのですが、デザイナーがモデルの設計に参加することはあるのでしょうか。デザイナーがサービスのデータモデルを理解する必要はあると思いますか?
平野:BtoBに限らず、新規プロダクトの立ち上げの場合はデータ設計から関わることがあります。既存プロダクトのリニューアルの場合はリスクを伴うことがあるので、デザイナーの勘所を調整する必要がありますね。
廣田:データについて理解する必要があるかどうかと聞かれたら、データ組成するチームやエンジニアほど理解できていなくても、理解していないとデザインできないシーンも多々あると思います。理解できていない部分は、素直に教えてもらいつつ、理解を深めていくことが大事だと思っています。
進藤:理解していたほうが、自分から提案できることも増えますよね。
茂木:ユーザベースにはデータチームといって、プロダクトに活用するデータを組成してる人たちがいます。また、モデル設計についてはエンジニアさんが着地までを考えてくれることもあり、自分から主導権を握りに行くことはありません。
データチームとテック、デザイナーで話すときに、「デザイン的にこんなことがしたいが、データ的にどうなのか」と聞けば、「それならこういう構造にしたほうがいい」「いまのデザインでは複雑になりすぎる」といった内容をテックが返してくれます。
チームを横断して対話をしながら要件を決めていく過程で、「ああいう設計になっているのかな」といった想像ができる点では、知っていたほうがいいかもしれませんね。
——本日は興味深いお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。
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