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ヨリアイ: 週次ミーティングで支え合う組織文化をつくる

こんにちは。ACTANTの伊集院です。ACTANTでは、毎週月曜日の午前中に「ヨリアイ」と名付けた全員参加型の週次ミーティングを開催しています。このミーティングは、プロジェクトの状況報告やデザイン業務に関する相談だけでなく、直近の土日の過ごし方や家族の近況など、プライベートに関することや普段の悩みも共有する機会にしています。

昨年、僕がACTANTに参加したときは、すでに在宅勤務が8割以上の状態。かつ、コロナ禍故にみんなで飲みに行くというわけにもいかず、「ヨリアイ」が仕事以外のことも気軽に話せる唯一の場となっていました。入社直後、自分自身の心理的安全性確保にも役立つ場だったので、今回はその「ヨリアイ」について簡単に紹介してみます。

「ヨリアイ」ではZoomとMiroを活用しています

毎週月曜日午前9時半から、メンバーそれぞれが眠い目をこすってZoomに集まります。ACTANTでは、Zoom上にいつでもだれでも使えるバーチャルな部屋をつくっています(ACTANT Waikikiと命名)。また、ACTANTでは、クライアントとの遠隔コミュニケーションのために、Miroというオンラインホワイトボードツールを使用することが多いのですが、最近では社内のミーティングも常にMiroを使うようになってきました。今回紹介する「ヨリアイ」もZoomとMiroを組み合わせることによって、リアルな雑談やミーティングと遜色なく対話できるよう工夫しています。

無駄を大事にするフレームワーク

Zoomに集まったメンバーは、まずMiroのボード上に黙々と近況やプロジェクトに関する付箋を貼っていきます。その際、この2年間カスタマイズしてきた独自のフレームワークを使用しています。下の写真が実際に使用しているフレームワークのキャプチャです。カスタマイズしてきたといってもたいしたものではありません。なるべく負担なく共有しやすいようにシンプルにしてきました。縦にメンバーの名前が並んでいて、横には共有する順番に項目が並んでいます。

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順に、「近況」、「いい感じ」、「モヤモヤ」、「先週の改善点」、「相談・必要な分科会」、「今週の動き方」のという6つの項目が並んでいます。なかには、進行中のプロジェクトを報告する項目もありますが、「いい感じ」「モヤモヤ」という項目があるように、直感的な手応えの共有を重視しています。「ヨリアイ」は効率性向上を重視したミーティングではなく、無駄な対話を大事にしているのです。

予め準備する必要はありません。皆がZoomに集合してから5分程度で、6つの項目に付箋を貼っていきます。共有する内容があるものだけ自由に埋めていきます。全てを埋める必要はありませんし、付箋をたくさん貼れないように各項目のスペースをあえて小さくする工夫もしているので、簡単です。作業中はメンバーの一人がDJになって音楽を流しておきましょう。気だるい月曜日の朝に、仕事モードへと転換するのに役立ちます。

その後、ひとり15分ぐらいの持ち時間で共有タイムとなります。6人いるとだいたい1時間半ぐらいでレビューは終わります。

以下、順に各項目の説明をします。

項目1:近況

この項目では、週末の過ごし方や最近のプライベートな情報を共有します。例えば、「正月に食当たりして最悪だった」や「子供の絵が入賞した」といった、友人とカフェで雑談するような対話をイメージしてもらえれば分かりやすいかもしれません。時には、「彼氏と料理に関して喧嘩してるけど、どうすればいいだろう」というような相談事が共有されることもあります。

一番笑いが起こるのがこの項目で、月曜日の朝一番、気分がいまいち盛り上がらないところでのアイスブレイクとしてもよく機能しています。

Miroには、写真も貼り付けることができます。下の画像では、メンバーの一人が子供と行った公園を写真とともに共有しています。

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項目2と3:いい感じ・ モヤモヤ

近況ではプライベートの共有が主でしたが、この項目では、担当プロジェクトなど業務上の「上手く進んでいることや、嬉しかったこと」と「不安や心配、懸念していること」といった感覚的な手応えを共有しています。日常業務に関連していれば良いので、「乗り換えたUQモバイルの調子が良い」という軽めの内容でも問題ありません。

「なんとなくこう思う」ぐらいの直感は、時として一番状況や隠れた問題を捉えているものです。個人的な直感を起点にしつつ、お互い質問しながら話題を深めたりアドバイスし合ったり、それぞれ関わっていないプロジェクトのことを把握していきます。オフィスに居ると、なんとなく会社全体の雰囲気の良い悪いがわかりますが、リモートでもそのような空気感を共有することが可能です。

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項目4:先週の改善点

直感的な共有と打って変わって、具体的な反省点や改善すべき点の共有をします。この場で具体的な反省点や改善点を共有することによって、メンバーから異なる視点での助言やアイデアをもらうことができます。一人で解決できないような問題の場合は、別の項目の「相談・必要な分科会」に追加するなど、何かしらのアクションと結び付けられるようになっています。カイゼンボードと発想は一緒です。

項目5:相談・必要な分科会

他のメンバーとの相談事、みんなと議論したいことはここに記入します。「ヨリアイ」では細かな議論はしないので、追加で必要なミーティングや相談事についてもこの時にセッティングします。経費や休暇等の雑務的相談や、完了したプロジェクトの報告会や勉強会など開催したい分科会がある場合も、ここで話しています。

項目6:今週の動き方

最後に、今週の動き方を共有します。ACTANTは裁量労働制をとっていて個々人に働き方のマネジメントは任されています。各人のその週の忙しさなど本人しか把握できていないことを、この場で状況を共有しつつ、必要に応じて内部業務を分担するなどの調整をしています。工数管理ツールなどいろいろ試してみましたが、いまのところACTANTの規模ではこの方法が一番効率がよいということになっています。

支え合う文化は生産性も向上させる

実はこのヨリアイの構成は、ハーバード大教授のロバート・キーガンさんとリサ・ラスコウレイヒーさんが提唱する発達指向型組織(Deliberately Developmental Organization:DDO)という考え方を参考にしています。著書である「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか」によれば、人は「自分をなるべく優秀に見せよう」とするために、周りの人に対する自分への印象操作といった「自分の弱さを隠す」行為に多くの時間とエネルギーを費やしてしまっているそうです。この「自分の弱さを隠す」という行為をやめて、パフォーマンス向上に集中できるようになるためにも、自分自身の駄目な部分も共有し、支え合えるような文化を築くことが重要とされています。

特にリモートワークが中心になっている状況で、信頼関係を築くことが難しい場面が多くあるようです。そんな中ACTANTでは、「ヨリアイ」という週次ミーティングのしくみが、支え合う文化をつくるために重要な役割を果たしています。

ヨリアイフレームワークの共有

以上が ACTANTで実施している「ヨリアイ」のご紹介でした。最近では、生産性だけを追求した組織では、組織への忠誠心が醸成されにくく離職率が高まっているという研究報告もなされています。みなさんも無駄な対話を習慣にしてみてはどうでしょうか?実際に使用しているMiroのヨリアイフレームワークを載せておきますので、気になった方は是非使ってみてください。