「デザイン経営」を特許庁のレポートから解説〜【前篇】『「デザイン経営」宣言』に関して〜
2020年3月23日に発表された『「デザイン経営」の課題と解決事例』。特許庁による我が国のデザイン経営に関する調査研究のレポートです。
2018年5月23日にも『「デザイン経営」宣言』と題した経済産業省・特許庁による産業競争力とデザインを考える研究会のレポートを発表しており、徐々に「デザイン経営」と言う言葉が浸透し始めています。
ただ、これは自分がデザインに関わる仕事をしているからであり、まだまだ他の職種では知らないと言う方が多いのも実情です。
そこで、このレポートのサマリを他の職種の方にも分かりやすくご紹介したい。
前篇は『「デザイン経営」宣言』に関して、後編は『「デザイン経営」の課題と解決事例』に関してお伝えできればと思います。
ーーーーー 「デザイン経営」宣言 ーーーーー
・デザイン経営の効果
結論的なことから伝えていますが、まずはこれを知ることはとても重要です。
一つは「ブランド力向上」。
デザインにより、企業が大切にしている価値を一貫したメッセージとして顧客に伝え、他の企業では代替えできないと顧客が思うブランド価値が生まれるため。
もう一つは「イノベーション力の向上」。
デザインにより、企業側のプロダクトアウトを排除し、潜在的なニーズを常にユーザ目線で考えることで、既存の事業に縛られずに事業化を構想できるため。
これら二つにより「企業競争力の向上」につながる。
・イノベーションに必要な「つなぐデザイン」
イノベーションは「技術革新」と翻訳されるが、本来の意味は
「発明を実用化し、その結果として社会を変えること」
とされている。
この「つなぐデザイン」とは、
革新的な技術開発と社会のニーズをユーザ目線で見極め、新しい価値に結びつける役割が「つなぐデザイン」である。すなわち、イノベーションには必ずデザインが必要であると言うことです。
・現在の産業とデザイン
顧客体験の質がビジネスの成功に大きな影響を及ぼしている。
IoTなどのデバイスやロボット、ソフトウエア、ネットワーク、サービス、ビッグデータ、AIなどの組み合わせが大きく関わっている。
この顧客体験の質を大幅に高める手法がデザインであり、産業競争力に直結するものになっている。
・デザインの投資効果
デザインの投資効果は可視化が難しいが、こちらのレポートでは下記のように発表している。
・デザイン投資額の4倍の利益創出
・デザイン重視の企業株価は2.1倍成長
・デザイン賞に登場する企業の株価は市場平均と比較し2.0倍成長
・「デザイン経営」の定義
「デザイン経営」の定義は下記の通り。
「デザイン経営」とは、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営である。
それは、デザインを重要な経営資源として活⽤し、ブランド⼒とイノ ベーション⼒を向上させる経営の姿である。
また、「デザイン経営」の必要条件は下記2点。
①経営チームにデザイン責任者がいること
②事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること
この辺りは転職活動をしていた時に、ある大手企業のデザイン会社が同じようなことを重要視していたので、納得感がある。
・「デザイン経営」のための具体的な取り組み
上記2点の必要条件を踏まえ、下記が具体的に実践する取り組み。
①デザイン責任者の経営チームへの参画
②戦略・製品・サービス開発の最上流からデザイナーが参画
③「デザイン経営」の推進組織(社内横断てきなデザイン部門)の設置
④デザイン手法(観察)による顧客の潜在ニーズの発見
⑤アジャイル開発の実施
⑥デザイン人材の採用・育成
⑦デザイン効果可視化のための指標数値設計
これらを自分自身も実践し、認知向上に貢献する普及活動をしていきたいと思います。
最後に。
一部省略しているパートはありますが、『「デザイン経営」宣言』にかんして重要な部分はまとめたかなと思います。こちらを多くの企業の経営層が意識して実践する社会になることで、自分たちデザイナーの活躍の場(課題解決の場)が大きく変革していくと思います。
後篇では『「デザイン経営」の課題と解決事例』についてまとめていきたいと思います。
終わりに、
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