蜜柑をくれた、それだけで。
昨年の秋、私は友人と2名で関東から1000km離れた鹿児島県へ旅行に来ていた。
その目的は、指宿市にあるイーブイマンホールであった。いわゆるポケモン世代である私たちにとっては、ポケモンの、しかもたくさんいるイーブイの進化形のマンホールが全部設置されているというそれだけで、遊びに行く候補としては十分だった。
ついでにいうと、友人は一度も鹿児島へ訪れたことはないが、私は一度鹿児島市内を旅行したことがあり、特に桜島でのカヤック体験が非常に楽しかったし、グルメも十分堪能できた。その自然の豊かさを友人におすすめしたかったのだ。
1日目は指宿でのマンホール巡りと温泉を堪能し、2日目は枕崎へ鰹をいただくために旅に出た。
途中、枕崎で立ち寄ったお土産屋で、その出来事があった。
お土産屋の中に、蜜柑の詰め放題があった。友人と物珍しそうにそれをみていると、店員のおばちゃんが声をかけてきた。
「私、若い人に甘いのよねぇ、」
そういって、蜜柑を一つずつ差し出してくれた。私と友人は一瞬戸惑ったが、お礼を伝え、いただくことにした。
近くのベンチで早速蜜柑を食べた。
甘くて、美味しい!
それが率直な感想だった。
この味を持ち帰りたい。
友人も同じ気持ちだったようで、「詰め放題、やっちゃう?!」と立ち上がり、おばちゃんのところへ戻った。
詰め放題をしながらだったか、する前だったか記憶が曖昧だが、おばちゃんともう少し話をした。
私たちが関東から来ている話をすると、昔は東京で働いていたというのだ。東京の地名にも詳しかった。
バリバリと東京で働いていた方が、今は自然豊かな場所でイキイキと働いている。その過程は想像できないけれども、関東にしか住んだことない自分もいつかは全然違う土地に住むこともあるのかな〜なんて、妄想を掻き立てる。
おばちゃんとの思い出は、旅の中の一場面でしかないけれど、やはり、現地の人と話せたのは嬉しい。
おばちゃん、元気でやっていますか。また鹿児島に行きたいです。
29個の蜜柑を気合いで詰めました!