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ドイツ オーケストラ鑑賞記

ベルリンフィル編


12.04.2024
Berlin
Berliner Philharmoniker 
Olivier Messiaen
Le Tombeau resplendissant
Igor Strawinsky
Konzert in D für Violine und Orchester
Kaija Saariaho
Ciel d’hiver
Jean Sibelius
Symphony No.7 

Conductor Hannu Lintu
Violin Vilde Frang


急遽行くことになったベルリン旅行で、せめて外観だけは見ておこうと思いベルリンフィル(Berliner Philharmoniker)を訪れた。

あの黄色く、ともすれば黄金に輝くコンサートホールを見れて満足しホテルにチェックインしてふとベルリンフィルのサイトを踏むとその日の夜に公演があることに気がついた。演目はシベリウスで、フィンランド人ハンヌ・リントゥ(Hannu Lintu)がタクトを振るとのこと。恐る恐る座席表を見てみるとまだ席が残っていた。60ユーロほどだが本拠地で最高峰のオケを聴けるとなると破格である。早速チケットを取って、ついにあの夢にまで見たフィルハーモニーの中に入る時が来たのである。

正面入り口ではなく混雑を避けるため裏側の入り口から入場した。あの時の感動は一生忘れないだろう。階段を登り、開かれた扉からホール内部に入ると、目の前にはクラシックファンの聖地が広がっていた。歪ながら音響のために細部までこだわり抜いた完璧なコンサートホールで音を拾うためのマイクの位置も聴衆の観劇の邪魔にならぬよう考え抜かれていた。コンサートが始まる数分前まで紳士淑女の方々がエントランスホールでシャンパン片手に談笑し思い思いに過ごして、鐘が鳴ってからゾロゾロホールに入ってくる光景に、あぁヨーロッパのコンサートホールでオケを聴くのだという実感が湧いてきたのである。

開演前のエントランスホール
私の席から



前半はヴィルデ・フラング(Vilde Frang)というノルウェーのヴァイオリニストがソロとストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲などを優雅にそして華麗に引き切る。そのホールに響き渡るヴァイオリンの音色は聴衆を虜にし、故に演奏後スタンディングオベーションが湧き上がるのである。何より少し離れている席からでも演奏者自身が楽しそうにヴァイオリンを奏でていることがはっきりとわかり、音楽の素晴らしさを再度認識したのであった。

休憩中にテラスから見えたDB本社

その後いよいよシベリウスの素晴らしい交響曲とお目見え。指揮者は最高の演奏を引き出そうと気迫溢れるタクトを振り、ベルリンフィルの面々はそれに完璧な演奏で応えていた。トロンボーンの旋律が鳴り響き、そのまま活発なクライマックスを迎えるのかと思いきや弦楽器が静かに音を奏でていき、徐々に音が減っていく対照的で落ち着いたエンディングはさながら北欧の木漏れ日を想起させる。



シベリウス自身が初演した交響曲であり最後の彼の交響曲でもある。晩年の彼は何を想い、この曲を書いたのか。彼の北の大地への敬意なのか、はたまた畏怖なのか。様々な想いが交錯する美しく素晴らしい交響曲である。
そんなことを考えながら歩いたベルリンの夜は喧騒とはかけ離れ、静かに、そして厳かに感じたのである。


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