今日から毎日、りんごを描くことにした
今日から毎日、りんごをデッサンしていくことにした。
一回30分。鉛筆と消しゴムを使って、スケッチブックに描き出していく。それだけのこと。
とりあえず2週間、りんごを描いてみる。そのままりんごを描き続けるかもしれないし、別のものを描くかもしれない。
始めた理由は単純で、尊敬するデザイナーさんに「デッサンするといいよ」と奨められたからだ。りんごにしたのは「はじめはりんごがいいよ」と言われたからだ。
私は美大もデザインの専門学校も通らずにデザイナーになった。それでもなんとかこの仕事でやっていけているのは、ひとえにこれまで私にデザインを教えてくれた人、何より、信じて依頼してくれるお客さんのおかげである。
しかし心のどこかで、いつもどこかに自分は不完全なデザイナーだというコンプレックスがある。それは、半分は私の気の持ちようで、半分は本当に、美術の専門教育を受ける道を選んだ彼らと私との間に、確実な実力差を感じているのだと思う。
私が、「基礎がしっかりしている」と感じるデザイナーたちは何が違うのか。私なりに目を凝らして見てみると、彼らは「いいものを選ぶ力・つくりたいものを実現させる力」が優れている。
最近、その差を決定的に感じたのが、生成AIを使ったときだ。AIはたくさんの案を出してくれる。漏れなくダブりなく、ときには人間の想像を超えたものを。しかし結局、この案で行こう、と決めるのは人間だし、その素材をどう調理するかを自分や他者に指示するのは人間である。
決断し、指示を出す。その精度と、耐えられる量に圧倒的な実力差を感じてしまうのだ。
私は率直に「どうしたらそれが身につきますか?」と聞いてみた。優しいことに、いろいろと具体的なアドバイスをくれた後に、最後に彼らは決まってこう言う。
「でもやっぱり、デッサンかな」
・・・本当ですか。本当にデッサンで、その力は身につくのですか。
デッサンができるようになると仕事が速くなる、物事を決断するときに迷わなくなるとも言われた。
・・・本当ですか。わかるようで、わからない。でも騙されたと思ってやってみたいと思う。
続けた先で、私は何を感じて、どんな感覚をこの身に覚えるだろうか。
わくわくして、昨日はうまく寝付けなかった。