ある夢を見た。水上列車の車窓から
ある夢を見た。どうやらそこは、世界の全てが水に沈んでしまった世界のようで、ウユニ塩湖の様相を呈していた。朝方だろうか。遠くの水平線が薄紫色を帯びている。普通の海なら波風があるようなものだが、不思議と水面は静まり返っている。空には遠くに大きな積乱雲があるのみだった。
気づくと自分は水上列車に乗っていた。この世界での移動手段は水上列車のみだった。水面下数十センチほどにレールが敷いてあって、その上を走っている。動力源はわからない。まあ、所詮は夢だ。
ふと、終着点には何があるのだろうと考えた。これもまたわからない。しかし同時に、そこには何もないだろうという確信もあった。自分の観測範囲のみが全てであると、はっきりと知覚していた。
だんだんと空がはっきりと明るくなってくると、水面が揺らめき出した。あるひと区画、長方形の影が下に見える。徐々にそれが何かわかってくる。ビルだった。遠くに目をやると、他にもポツポツとビルが見える。
この世界では、昼間にビルが水中から地上に出てきて、働けるようになっているらしい。電車からスーツを着た人々が降りていっては中に吸い込まれていく。
それからしばらくは電車に揺られた。特にすることは無かったし、どこかで降りたいとも思わず、ただぼんやりしていた。
だんだんと空が暗くなっていった。ビル群は、一つ、また一つと、水中へと消えていく。そうして見渡す限りのビルは無くなり、水上列車は天球に包まれていた。
私はただ、よかった、と安堵していた。
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