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ホン雑記 Vol.48「舟を編む天使」

「お母さん」を表わす各言語は似通っている。

英語ではマザー(マミー)
ドイツ語はムッター(ムッティ)
フランス語はメール(ママン)
イタリア語はマードレ(マンマ)
ロシア語はマーチ(マーマ)
日本語は母(ママ)
(括弧内は幼児語)

である。

すごいのは中国語で、お母さんがママ、お父さんがパパなのだが、英語圏の語源とはまったく相関がないらしい。ただの偶然だというのだ。

勘の良い人なら察しがつくだろう。
赤ちゃんが最初に発音する子音が「m」(母音は「a」が多いのだろう)の音が圧倒的に多いから、各言語での「お母さん」が同じ言葉になる。


なおも興味深いのは、それが「お母さん」を表わす正式名称になっていることだ。

本来、赤ちゃんは言葉のシャワーを浴びて、言語を習得する。
最初はニンゲンたちが何を言っているのかまったく分からないだろうが、1歳ぐらいでもう、それをニンゲンたちに伝えようとしてくる。

これも何を言っているのか、こちらにはまったく分からないが、音の途切れる間、イントネーション、たまに合わせる視線などは、もうニンゲンの使う言語表現そのものだ。

それを繰り返して繰り返して、ようやく言葉を覚えていく。
ニンゲンたちがすでに使っている言葉を。

だが、「お母さん」は違う。

まだ言葉も話せない生命体が、最初に言葉を発した時に1番近くにいたニンゲン…つまり、母親が「これは私のことだ」と認識したのだろう。

「ma… ma…」と何度も言うのだから。

そうして、お母さんは「ママ」になった。
言葉を話せない生命体が、ニンゲンに言葉を教えた。
お父さんが「パパ」なのもきっと同じだろう。
そうでなければ、言語体系のまったく違う欧米と中国で偶然が重なるはずもない。
日本ではニンゲンたちが「これはお腹を空かしているのかしら?」と思ってご飯の幼児語「まんま」になった。

ということは、勝手な推測だが「ママ、パパ」はいつかの霊長類が言葉を最初に使い始めた、かなり当初からあったのではないか。
おそらくは、擬音語、擬態語よりも早く。

動物の鳴き声なんかは結構各国で違ったりするが、「お母さん」はこれほど似通っているのだから。


似たような例に「マザリーズ」がある。

赤ちゃんに対して「高音で、ゆっくりと、抑揚をつけて」やる声かけのことだ。
これも世界共通である。お母さんは産婆さんからいちいち教わったわけでもないのに、勝手にやる。
お母さんどころか無骨なオッサンでも、多少はやる。

そしてこの話し方は、ちゃんと赤ちゃんのほうも「自分に話しかけているんだ、愛されているんだ」と認識するような話し方らしい。
ニンゲンさんの勘、正解。


なんと不思議な自然の摂理だろう。

赤ちゃんは言葉を作りだし、ニンゲンはあやしているのではなく、あやさせられているのだった。

最強の弱者だ。


最近、若干嫁が幼児化してきている気がするが、これはオレのマザリーズが年々ヒドくなっていってるのかもしれない。

逆もまた真なり、である。



しらんけど。




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