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「世の中を良くする不快のデザイン展」を終えて #03 アートディレクター・浅岡敬太のつぶやき

「世の中を良くする不快のデザイン展」企画チームのアートディレクターを担当しました浅岡敬太です。展示のキービジュアルなどをアートディレクション、デザインさせていただきました。

普段は人に読んでもらうような文章を書くことなど滅多にないのですが、このような機会をいただいたので、今回の展示のデザインがなぜ花をモチーフにしているかなどデザインまわりについて書いていこうと思います。

“世の中を良くする”

「世の中を良くする不快のデザイン展」という、コピーライターの佐々木さんが考えてくれたとてもインパクトのある展示名。

展示のデザインを考え始めた当初は、なかなか難しいテーマで、どうすればこの展示名にふさわしいビジュアルになるだろうと、凄く悩んだ覚えがあります。

まず、「不快」という言葉が凄く強く、インパクトのあるものなのでどうしてもこの言葉につられてしまいます…。どうやって「不快」を表現しようだとか、「不快なもの」って何だろうとか、「不快」って人によっても感じ方違うよなとか、最初は「不快」のことばかり考えていました。

色々と考えていくうちに、「不快」ということばかり考えているのがなんか違う気がしてきて、「不快」を表現するのではなく、この展示名の一番最初の言葉である“世の中を良くする”ということを表現する方が、この展示の伝えたいことに繋がるのではないかと考えるようになりました。

そこで、「世の中を良くする」ということをどう表現していけばいいのかを考えた時に、パッと「道端に綺麗に咲いた花」が頭の中に浮かんできました。

「花」は人を笑顔にしたり、幸せな気持ちにしたり、世の中を明るくすることのできるものの代表のひとつだと思います。「世の中を良くする」という言葉が最初にくるこの展示にはピッタリなモチーフになるかもしれないと思い、「花」をモチーフにすることに決めました。

そうは言っても、「花」というのはどちらかと言うとありきたりなモチーフです。ただ、そういったありきたりなモチーフを使うということが、アートディレクター、デザイナーとして表現のハードルが高いなと思う反面、多くの人に伝わるビジュアルになると信じていました。

「快」と「不快」

今回の展示は、展示物それぞれに対しての説明がしっかり、丁寧に書かれていました。実物を展示できるプロダクトだけでなく、音や匂いなど実際には展示できないものもたくさんある展示だったので、展示物それぞれができるだけしっかりと見えてくるよう、主役になるような空間にしたいなと思っていました。

なので、展示のビジュアルも展示空間もできるかぎり色を使わず、それぞれの展示物が映えるようモノトーンで進めることにしました。会場やビジュアルを「白」と「黒」で構成することで今回の展示のキーワードである「快」と「不快」という世界観も表現しています。

この展示のシンボルである「花」のビジュアルは、展示のコンセプトを表現したものになっています。普段私たちがあまり意識してこなかった「不快」という心理的な効果を地面に埋まって普段見えない部分である「花の根」、私たちの生活を豊かにしてくれるもの(今回の展示物)を「花」で表現しています。

そして、この「花」と「根」はしっかりと繋がっています。「根」があることで「花」が咲いているのと同じように、「不快」という効果を使うことで「快」という私たちの生活を豊かにするものがたくさん生み出されているという今回の展示を表現しています。

花のビジュアルは、展示会場の会場装飾やポスター、ポストカード、アンケートに回答いただいた方にお配りしたステッカーとして、様々な展開で使用しました。今回の展示のシンボルとしてしっかりと機能できたかはわかりませんが、会場の様々な場所に咲く花々が少しでもこの展示を支える存在になっていたらいいなと思います。

さまざまなメディアに取り上げられ、SNSでたくさん拡散され、実際にたくさんの人に会場にもお越しいただくことができました。世の中の人がどう感じるのか、どういったものに興味を持つのか、何に惹かれるのかなど様々な反応をリアルタイムで感じることができ、自分にとっても凄く有意義な展示になりました。

この展示に関わってくれた方、実際に来場いただいた方、行けなかったけど興味を持ってくれた方、全ての人に感謝します。

最後に、GOOD DESIGN Marunouchiでの展示は終わりましたが、「花」と「根」のように、今回の展示が次の何かにしっかりと繋がっていたらいいなと思います。

浅岡 敬太(あさおか けいた)
電通クリエーティブX アートディレクター/グラフィックデザイナー。グラフィックデザインを軸に、ブランドのアートディレクションや広告、パッケージデザインなど幅広くデザインに取り組む。

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