ベースアップ評価料と青色専従者給与
ベースアップ評価料の対象職員に、「役員は該当しない」と書いてあります。
きっぱり、書いてありますよ。
普通、医療関係で役員という言葉を使う時は、医療法人の役員を指します。
普通というのは難しくて、私には普通と思う判断でも、人によっては違う普通の判断があるので、なかなか難しいとことですが、
少なくとも、医療法人の役員が、この「役員」に該当することは間違いありません。
したがって、ベースアップ評価料の対象に、法人の役員がなることはあり得ません。
対象職種の話になると、
半分事務でチェアサイドにも半分つくことがある場合は?などの微妙な判断が求められることがあるのですが、
この「法人の役員」については、対象外ということで判断に迷うことはありません。
では、個人事業の歯科医院の専従者はどうなるの?
というのは、当然、湧いてくる疑問です。
届出書を書く時に、「うちの奥さん、他の従業員と一緒にフルで働いているのだけど、賃金上げてあげたいな」と思うのは当然のことと思います。
青色専従者が対象職種に含まれるか、については要件には書いてなかったけれど、きっと、後から出される疑義解釈に載ってくるだろうと高をくくっていたら、
疑義解釈その1には、無い。
疑義解釈その2にもない、
疑義解釈その3にもない、
疑義解釈その4に至っても、とうとう、ありませんでした。
どういうこと?
というか、どういうつもり?
社会保険労務士さんの「疑義解釈が出ているけれど、肝心の答えがなくて困る」などの感想を見たことがありますが、こういうところを指すのでしょう。
医療保険よりも、ずーっと早くに導入された介護保険の処遇改善加算にも、専従者についてのルールが見当たりません。(見つけられないだけか。)
医療保険の点数の算定要件は、点数算定の可否を左右するので、
誤ってその点数は算定していると、
「ここに、ほら、算定要件に書いてあるでしょ」
と、算定要件を根拠に否定されます。
もし、ベースアップ評価料を、青色専従者に充当してて、それを後から否定しようとする場合、
「ここに、ほら、青色専従者は認めないって書いてあるでしょう」
と言えるぐらいの、きちん文章になった要件が必要なはずです。
「ここに、役員はダメって書いてあるけど、青色専従者がダメとはどこにも書いてないじゃん」
と言われてしまうからです。
中には、「普通、役員って言えば青色専従者も含むでしょう」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、両者は全然違うものです。
国がきちんと、そこらへんに言及しないのは、もはや、知らないふりをしているとしか思えません。
もともと青色専従者給与は、「相応の金額までしか経費して認めない」という税法上の縛りがあったり、変更する場合は、変更届けを出さないといけないなどのルールがあるので、むやみに専従者給与を上げたりできないだろう、と考えているのかもしれません。
逆に、上げて欲しくないどころか、青色専従者も実際に資格を持って働いている方もいるので、他の同様の資格を持った人と同程度に賃金が上がるのは、やぶさかではない、と考えているか、です。
いずれにしても、青色専従者をベースアップ評価料の対象としない明確なルールが示されないうちに、こちらで勝手に忖度して賃上げしないのも、本来のベースアップ評価料の趣旨から外れていると思われます。
青色専従者を含めて従業員のベースアップのために、一生懸命計算して届出た計画書や報告書について、後出しじゃんけんみたいに、その時示されなかったルールをかざして否定するのは勘弁してほしいと思います。
計画書や報告書に数字上の矛盾点がなく、
職員が退職した、新規採用して職員が増えた、職員が育休に入ってベースアップ評価料の対象からはずれた、
などの事情を書いておけば、特にお咎めを受ける理由はないと思われます。