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ことばの壁と気持ちの壁

極彩色の神具と、たちこめるお香の香りと、止めどなく聞こえてくるお経の声。
アジアをぎゅっと凝縮しました、とでもいうような様子がそこにはあった。

「ここには、台湾のあらゆる神様をお祀りしてあるんだよ。
 今日は1年に2回しかないお祭りの日なんだ。ラッキーだね」
と、中国語なまりの英語で、おじさんが教えてくれた。

はじめ中国語で声を掛けられたけれど、日本人だとこたえると英語で説明してくれた。
私が、「分からない」という顔をすると、うーん……と考えて、違う言い回しに変えてくれる。

「上の階にも神様がいるから、見ておいで」
「お参りの仕方を教えてあげるよ」
そう言って丁寧に案内してくれた。
思うとおりに言葉が出なくて、歯がゆい思いになったりもしたけれど、
おじさんの「伝えたい」という気持ちと、私の「分かりたい」という気持ちが壁を溶かしていた。

「ありがとう」
と伝えると、
「良い旅行を」
とにっこり笑って見送ってくれた。

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