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熱の伝播する夜

ことばを探す瞬間が好きだ。
相手の話を聞いて、
「それってどういうことだろう……?」
と自分の中のことばを探り、
「例えば、こういうことですか?」
と相手に返してみる。
その、ことばを探す瞬間。

返された相手が、
「うーん、なんて言ったらいいかな?こういう感じで……」
とまた説明し出すと、
「あ、私が思っていたのと違ったんだな」
と思い、また自分の中のことばを探す。

「そうそうそう!そういうこと!!」
と返してくれたときはすごくうれしい。
特に”そう”を3回くらいくい気味に応えられたときには思わず心の中でにやりとする。

相手の話を聞いて、自分なりにかみ砕いて理解したことを返す。
それに良いリアクションが返ってきたときは、
「ちょっとは相手の伝えたいことが理解できたのかな」
とうれしくなるのだ。
昨日も、夜も遅くまで熱い話を聞いていて、
「そうそうそう!」
の瞬間が何度かあった。

特に相手が熱を込めて話してくれている、ということが分かるときには、
自分も相手のことばを逃すまい、と聞き入って、
自分の中のことばを血まなこになって探す。
相手の熱を感じ取って、そのことばを自分なりに理解できたな、と思ったとき、
熱は伝播して、自分も熱くなる。
その瞬間が、たまらなく楽しいのだ。

だから今日も、
「この人は、どんなことを考えているのかな?」
と、自分の中のことばを探りながら、話を聞く。

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