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青年さんに助けられた話その5

名前を呼ばれて診察室に入ると、その人はまっすぐに私を見た。

そして、「いい目になってきた。光が入ってる」といった。

この8月から通い始めたクリニックで、ぶっきらぼうな先生というのが、第一印象だけれど、その見立てと調剤には、ものすごく信頼している。そういう心持ちになれたのは、うつ病で光る青年さんのおかげだ。


うつ病で光る青年さんとは?


Twitter「うつ病で光る青年」@tatiagareseinen

TikTok「うつ病で光る青年」@tatiagare

note

青年さんとの出会いは、2021年2月末。TikTokだった。

私は、友人の80歳のマダムにTikTokの使い方を教えて欲しいと頼まれて、たまたま入れたアプリだった。短い映像が集まったSNSで、とても刺激が強いなぁという印象だった。

その中で、ゆったりとしたアンニュイな音楽にパグ犬のかわいらしい姿。それに反して、身の上に起こった深刻な出来事について、遺言と称して綴っていた。毎日おすすめに載ってくるので、毎日観ていた。

2021年4月頃から、青年さんは、お試しでTikTokライブを始めた。7月頃には、ほぼ毎日ライブをするようになってきた。その頃からか、青年さんのところで苦悩を語る人が出てきて、青年さんはそれをうんうんと聞きながら、肯定しながら、ひっくり返して軽くしてくれていたように思う。

この人、いいこと言うなぁ、神がかってるなぁと思い始めて、言ったことをメモするようになった。そのうち、画面収録したらいいんだ、と気づいて録画するようになった。それがたまりにたまって、名言集のようになったのが 、TikTokの【切り抜き】うつ病で光る青年。だ。



そんなわけで、私は青年さんに張り付いて、名言を集めることを趣味としている。 TikTokはもちろんTwitterのスペースや、ツイキャス、などなど、青年さんの周囲にはいろいろな悩み事が集まった。

青年さんは精神科病院で長年、作業療法士をされている。その経験を持った上で私たちに寄り添った言葉をくれる。

私が長年通った心療内科クリニックをやめて、転院しようとしていた時、たまたま聞いた話。

「みんなが誤解していることだけれど、病院のお医者さんというのは、その人に合った治療法や薬を処方することが仕事なんやで。話を聞いてくれないとかって不満を持つ人がいるけれど、話を聞いてくれるのは、心理士さんやカウンセラーで、お医者さんは、決められた短い診察時間の中で、処方をしてくれる人やで。

精神科に勤めていたら、患者さんが部屋に入ってきた瞬間に、どのような調子かわかるんやで。」(私の記憶で再現しているので、ニュアンスが違ったらごめんなさい)

というようなことを何度か言ってくれていた。


それを聞いていたから、新しい先生を信頼することができた。


今まで、15年通い続けたクリニックのことを、私は、「薬の売人」として、扱っていた。ひねくれていた。調子が悪いと話すと、どんどん薬が増えた。欲しいと思った薬は、すぐに出してくれた。漢方だろうとなんだろうと。素人目にも変な処方だな、と思ったりもした。でもどうでもよかった。

そのクリニックでは、診察室に呼ばれて、顔を見ることもなく「どうですか」とかって聞かれることが普通だった。「まぁ、なんとか」っていって、診察が終わる。薬を買いに行ってたんだもん。めっちゃコンビニエンス。


新しい病院を選ぶことになった時も、青年さんが以前言っていた、「精神科病院として大きいところで、病床数がちゃんとあるところ」に着目して選んだ。


そんなわけで、私は長年服用していたSSRIを減薬することに恐れを持っていたが、新しい先生はあっさりと他の薬に置き換えてくださった。しかも、先生への信頼度MAXだったから、離脱症状云々あったかもしれないが、やすやすと乗り越えた。思い込み力が功を奏すこともある。


前病院で処方されていた薬を半分量にして二週間。顔を見るなり「あなたこの薬効いてないよね?」

処方箋がまっさらに変更になった。



薬を変更して二週間。顔を見て「あ、いい感じだね」

「眠たすぎるんです」微調整。量を調節して二週間。



睡眠薬を見直して二週間。「目に光があるよ。もう病気じゃないみたいだ」

今日は睡眠時の薬の種類と微調整をしてくださった。


実際のところ、社会人としても、生活人としてもあまり機能していないが、気分は悪くない。いつもあった脈拍の異常な速さも、ゾクゾクして鳥肌が立つことも、毎分死にたかったのが、日に一回あるかないかになった。

毎朝べそべそ泣くこともなくなってきた。起きれないけれど。

夢の中にもう一つの人生があったが、その夢も見なくなっている。これは少し寂しい。

きっと、だいぶん、調子が上がってきているのだろう。

そういえば、知らず知らずに依存先が増えた。カウンセリングをしてくれる私の先生。様子をちゃんと見てくれて、薬を細やかに調整してくれる先生。そして、うつ病で光る青年さん。

正直に言うと、精神疾患や、PTSD、愛着障害、アダルトチルドレン、どれがどれかなんてわからない。いつからか、なんてわからない。

今の私を形成しているものが、これら、かもしれない。いままでは、どこまでさかのぼればいいのかなぁとか、(病気が治っても)なにも残らないんじゃないか、なんて考えていたけれど、それなりに、でいいのかもしれない。それなりの、生活できる私。

先生には「いいかんじ、健常な目になってる」って言われたけれど、自分が空っぽな感じがする。つまり、上手にぼんやり毎日過ごしている。この空っぽを、それなりに楽しい、嬉しい、しあわせを突っ込んでいけばいいのかな。ふわふわと。

どうにもこうにもならなかったことが、少しずつ、ほどけてきている。病院の受診も、前向きに取り組んでいる。仕事も順調に休めている。

なにもかも、青年さんのおかげ。青年さんの言葉を聞き続けた自分の報酬。
人の悩みに答える青年さんの言葉が、私の欲しかった言葉であることが、なんどもあった。今回も、そう。

ありがとう、青年さん。
ありがとう。
ありがとう。


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