ハジの開き
20年ほど前に自分の過去と向き合っていた時、トラウマのクリニックに通っていた。当事者だったから許されると思うんだけど、全国からトラウマを背負った人が通ってきていて、自分は勝手にそのクリニックをトラウマ甲子園と呼んでいた。
そこでの治療の一環としてグループミーティングというのがあって、希望者8人位が一人10~20分ほど自分のさまざまな想いを50人位のお仲間さん達を前に語る。日常の気付きを話す人もいれば、リスカなどの自傷の様子を克明に語る人、昨日の過食の話をする人、過去のトラウマを涙ながらに語る人もいる。さすがにトラウマ甲子園だけあって、その内容も先に挙げた自傷や摂食障害はもちろん、いじめ・性的虐待・DV等などありとあらゆる過去を持った人たちが自分の心情を吐露していく。
そこの院長先生の持論として
人は二人だと「個」対「個」だが、3人集まったら「個」対「公」になる。
というのがあった。
グチョグチョ・ドロドロの過去を引きずって生きてきて、自分自身の存在自体がグチョグチョ・ドロドロの汚物のように感じるようになってしまった人たち。そんな隠すべき存在であった過去を安全な「公」の場で話し、受け止めてもらう経験を繰り返すことで、徐々に自分の過去を、そして自分自身を受け止められるようになる。というような背景がこのミーティングにはあった。
ぼくもいろんな過去をこのミーティングで吐露した。別の記事で書いた大学1年の頃に夜道に暴行に襲われて土下座した話も、涙と鼻水でグチョグチョになりながら話した。
そんなかっこ悪いぼくの姿をトラウマ甲子園の人たちは受け止めてくれた。
自分のドロドロ・グチョグチョの内面を晒せば人は自分から離れていくと信じていたのに、その反対に人が寄ってきてくれるのが不思議だった。
それまでの自分の一番の弱みだと思っていたものが、それを通じて人と繋がれるというのが驚きだった。
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ある日、女性のお仲間さんから一本の映画を紹介された。
彼女はこの映画を見て過去の忘れていた性的被害のフラッシュバックが出てきてテレビを部屋から外へ放り投げたと聞いた。
映画を見た。なんか変な感情が出てきたw。
今から思うと、親との関係性で支配者・被支配者の関係しか学んでおらず、そして、被支配者であった幼少期の怒りや憎しみがまだ解消されていなかったからなんだと思う。自分の中にも支配者としての潜在的な加害者性があるということに気が付き、そしてその加害者性に腹が立ち、それが許せなくなった。自分の存在をこてんぱんに罰したくなった。
ぼくは自分自身の処罰の場としてグループミーティングを選んだ。
そこに参加する人は9割近くが女性だったんだけれど、その人達を前にしてぼくは先日とある映画を見たこと、それを機に自分の中の加害者としての男性性の存在が許せなくなったことを話しはじめた。
そしてひとつの懺悔を行った。
それは…
グループミーティングで性被害にあった女性が自分の過去の話をする際、ときに詳細で具体的な話をすることがある。それを聞いていて、自然と口の中に唾液が溜まっていることがあって、それを周りの女性達に気づかれないように飲み込もうとしてドキドキしている自分がいる。そしてそんなつもりはないんだけど自分の性器が反応して大きくなっていることもある。
これを話した後、顔を上げるのが怖くて下を向いて自分の席に戻った。でも、それで女性に嫌われて処罰されるという自分の目的は果たされたと思った。
でも、違った。
グループミーティングが終わった後、3名の女性がぼくに声をかけてくれた。そのうち二人は性的暴力を受けた人たちで、一人がDVの被害を受けた人。
別々に声をかけてくれたんだけど、二人はほぼ女性だけの場所であんな発言ができるのは勇気があるという意味のことを伝えてくれた。
彼女たちの過去もグループミーティングで聞いていたから、なおさら当事者からの言葉が胸に届いた。
そしてもう一人が伝えてくれたことが…
〇〇君、可愛い!
だった…
なぜか、その瞬間、全身の力が抜けた。
それまでくそ真面目に悩んでたのが急に馬鹿らしくなった。
自分で勝手に檻を作って、その中に自分自身を閉じ込めて苦しんでいたんだとその一言で気付かせてもらった。
あなたが一人で抱えていること、ひょっとしたらそんなにすごいことじゃないかもしれない。もしかしたらそれがきっかけで人と繋がれるかもしれない。
それを教えてもらったトラウマ甲子園の面々、今でも感謝しています。
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代々木忠さんの他に師匠と慕う大嶋信頼さんの宣伝ですw
自分の過去と向き合う、昔は大変だったけど、今はもっと便利になっています。なんと一人でトラウマの自己治癒が出来ちゃうんですってよ、奥さん!
気になる方はチェキラ!
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