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老人ホームでの恋の物語

今日は私の働いている老人施設での恋の物語について書いてみようと思う。

私の住んでいるデンマークでは高齢者同士の再婚や新しい出逢いを良く目にする機会がある。

また、伴侶を亡くして1年経つか経たないかのうちに、新しいパートナーが出来たと言うのもとても良く聞く話しである。

彼らの、哀しみを抱えながらも、新しい人生に怯まず前向きに進んで行く姿を、私はいつもうらやましいとさえ思う。

会計士をしていたウーリックは、脳梗塞後に左半身不随で車椅子の生活となり、そのあとすぐに奥さんに先立たれて、私の働く施設に入居してきた。

一方、絵描きを生業にしていたトゥックはご主人に先立たれた後アルツハイマーを煩い施設に入居してきた(彼女は本当に素敵な鳥の絵ばかりを書いていて、部屋は彼女の作品で埋められている)。

どちらもとても社交的な性格で、施設内のアクティビティには積極的に参加していた。

そんな2人は、時々お互いのフロアを行き来しながら仲良くお庭でお喋りしたりする姿を見かけるようになり、職員はみな温かく見守ってきた。

ある日の森へのお散歩ツアーの帰り、ウーリックはある職員に「僕は彼女に恋をしたかもしれない」と打ち明けたと言う。

それから2人は、誰もが公認するカップルとなった。

トゥックはアルツハイマーがあるので、前の出来事や次の予定を覚えることが出来なくなってきている。

そんな彼女をいつも心配して、ウーリックは毎日せっせと唯一動く右手右足で車椅子をこいで、トゥックのいるフロアに会いにくる。手を握ったりキスをしたり…とても微笑ましい光景だ。

私は彼らをみているといつも、大好きなライアンゴスリングの純愛映画「The notebook (邦題:きみに読む物語)」の最後のシーンを思い出す。

https://www.youtube.com/watch?v=UuwW03kwCCo

物語の最後、主人公の男性は、一生かけて愛したアルツハイマーになってしまった奥さんに、自分達の恋の物語を読み聞かせ、そして最後に同じベッドで同じ時に息を引き取るシーンだ(まだ映画を観てない方、ネタバレでごめんなさい)。

パートナーを亡くしたウーリックとトゥックの新しい恋の物語が、そんな風に幕を閉じたら素敵だなぁと思わずにはいられない。

いくつになっても、誰かを思う気持ちは人々に生きる意欲を与え、人生に潤いを与えてくれる。

これからも、2人の病気が早く進行することなく、末長く仲良く余生を送って欲しいなぁと願っている。

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