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劇症型溶連菌対策には一般的な感染症対策が重要という話
「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」という病気をご存知でしょうか。過去何度も患者数が増え、その症状の壮絶さから「人食いバクテリア」と呼ばれる恐ろしい感染症です。
感染者数が増えるたびにマスコミが煽るので、そういう菌がいるような錯覚に陥りますが、原因となる細菌は子どもがよくかかる「A群溶血性レンサ球菌感染症」と同じで、なんと皮膚にごく普通にいる常在菌です。
今回の流行はそのごく普通の溶連菌発症者が過去最高であることで、結果として劇症化のケースが増えているものと私は考えています。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の一番恐ろしい症状は端的に言うと「筋肉が壊死する」です。詳細は感染症学会の説明に委ねますが、通常ではありえないスピードで壊死していきます。
元は風邪と同等によくある感染症です。子どもに多く、ほんの数日、風邪と同じ程度の軽い症状で治まるはずの感染症です。
その溶連菌がなぜそんな恐ろしい状態で人体に牙を剥くのか、その原因や条件は現代でもハッキリ分かっていません。
免疫の暴走があるのでは無いかというところまでやっと研究が進んできました。
私はかつての勤務先の社長が突然の理不尽な病で亡くなる経験をしていますが、それが劇症型溶血性レンサ球菌感染症だったのではないかと考えています。
wikiからの情報になりますが、劇症型溶血性レンサ球菌感染症がアメリカで最初に報告されたのが1987年頃、社長さんが亡くなったのは1990年か1991年頃、マスコミが騒いだのが1992年です。
つまり、医師ですら病を認識出来ない時期に発症し、原因不明の多臓器不全として病名がわからないまま亡くなったのです。
残された社員である私達がもしや、と認識したのは1992年のマスコミの大騒ぎでした。症状がまるきり当てはまっていたのです。
簡単に経緯を書くと、次のとおりになります。
1日目:
社長が入院したと会社に連絡が来る。見舞いに行った部長には「ただの風邪だと思うんだけど、ちょっと気になることがあるらしくて入院になった」と本人から説明があり、奥様も同意。
この時点では数日で戻れる予定で、本人もベッドの上で仕事をしていた。
2日目:
症状は特に変わらず、この日もベッドの上で元気に仕事をしていたらしい。部長のほか複数人の営業が見舞いを兼ねた仕事の確認に行っており、本人も元気だったとのこと。
3日目:
この日の夕方ぐらいから急変。後にご家族から聞いたところによると、意識不明のうえに足の先からどんどん壊死しており、1分を争う状態ということで切断を決意。手術の準備をするうちにもどんどん壊死していったそうで、最初片足で限定的だった切断は両足に及んだそうだ。
4日目:
結局壊死を止められず、大量の抗生剤を投与して救命に務めるも状況は変わらず。延命措置をして改善に希望をかける。
5日目:
治療の甲斐なく多臓器不全で逝去。
会社に危篤と逝去の報が届いて、見舞いで元気な姿を見ていた部長と営業は呆然とし、快癒を信じていた私達も何が起きたのかわからずただ混乱しました。
IT系企業で理系の人間も多かったため「多臓器不全ってなんだよ!その原因があるだろ!!!」という叫びも上がりました。
おそらく最初の2~3日は一般的な溶連菌の症状だったのだと思います。大人がかかると少し重くなることがあるので、基礎疾患と考え合わせて念のための入院だったのでしょう。
恐ろしいのは劇症化してからのスピードです。
ほぼ24時間でもう戻れないほどのダメージが体に与えられました。もっと早い時点で切断していれば…ただ、現代でも切断と適切な抗生物質の大量投与は必須です。
切断だけでは壊死は止めきれなかったかもしれません。
劇症化は菌が筋肉に入ることが主な原因だそうなのですが、なんで筋肉に入っただけで「劇症化」するのか、という部分がわかっていません。
経路不明の劇症化も多々あります。がんや糖尿病、免疫低下も劇症化を誘発するのでは、と言われていますが、確定ではありません。
侵入した所で劇症化しなければ普通に治る溶連菌なのですが、その劇症化のキーが未解明なのです。
最近のテレビで生還した方のインタビューを観ましたが、その方は腕の怪我に溶連菌が侵入した結果の劇症化ということで、片腕を無くしていらっしゃいました。
娘さんの助言で早めに切断しなければ命がなかったかもしれません。
これほど恐ろしい病気ですが、実は「A群溶血性レンサ球菌」は皮膚の常在菌で、その辺に普通に居ます。
子どもに発症が多いのは菌に対する抵抗力が少ないからです。
ではどうやって防げばいいかというと、新型コロナと同様に「うがい、手洗い、消毒」が基本になります。
常在菌ですからゼロは無理ですが、数を減らすことがてきます。
適切に手を洗い、怪我はしっかり水洗いのあと保護し、鼻や口など粘膜を必要以上に触らない事も重要です。
また、なるべく体力を減らさないことも重要になります。多少侵入しても抵抗力があれば発症しません。
社長が亡くなった原因が劇症型溶血性レンサ球菌感染症ではないかと考えてから折々に情報を検索しました。
現代医学なら、ごく普通に対策できる薬がすぐできるだろうと。
初めて報告されてから30数年、救命率は上がりましたが、結局未だに恐ろしい病気のままで、結局のところ「感染症にかからない対策」をすることが一番効果がある、というなんとも気持ちの落ち着かない状況です。
劇症化は恐ろしいけれども一応常在菌で、何もなければ共存できる類の細菌です。
怖がったところで根絶はできません。母数が多すぎますからね…。
ならば、うがい・手洗いといった感染症対策で、体内に侵入する数を減らすしかありません。
新型コロナ感染症の蔓延は悲劇でしたが、それに対するごく単純な対策がインフルエンザを含めた他の感染症にもとんでもなく有効であると結果がでました。当然溶連菌にも有効です。
たいていの感染症は正しい「手洗い・うがい」である程度まで防ぐことができます。
できる、とこの数年で証明されました。
ご自身を守るために、適切な感染症対策を続けていただきたいと思います。