借金のある29歳青年は、ある日、ふと小説を書いてみた。
1978年、青年は二十九歳の誕生日を迎えた。大学の卒業には七年もかかって、就職もせず、(店を開いたときの)借金を返すために働き詰めの日々を送っていた。青年時代とよべる時期がもう終わろうとしていることが彼には不思議に思えた。
「そうか、人生ってこんな風にするすると過ぎていくんだな」
四月のよく晴れた日の午後、青年は近くの球場に野球を見に行った。試合はリーグの開幕戦。先頭打者が第一球をレフトに弾き返すと、ボールがバットに当たる気持ちのいい音が響き渡った。英語にepiphany