企業城下町とは、近代工業の発展過程において、特定企業の発展とともに都市が形成され、その企業が地域社会に対し政治・経済・社会的に多大な影響力を持つようになった都市を指します。社名と自治体名が同じ、有名な企業城下町と言えば愛知県・豊田市や茨城県・日立市があります。説明するまでもないと思いますが、トヨタ自動車や日立製作所が基幹企業です。もちろん、それ以外にも関連企業が周辺にあって、大きな企業城下町を形成しています。
企業城下町は母体となる企業が好調な時は、順調な発展を遂げますが、ひとたび母体企業の業績が傾くと、一気にさびれていく可能性があります。かつて日本四大工業地帯のひとつである”北九州工業地帯”と呼ばれた福岡県・北九州市は、人口百万人を超えたあたりをピークに、年々人口が減少しています。これは、かつて大きな母体であった新日本製鐵(現・日本製鉄グループ)の多く工場が撤退したためです。その工場跡地は、遊園地になり、その後はアウトレットモールへと姿を変えています。
北九州市ほどではありませんが、栃木県・矢板市はシャープの企業城下町でした。矢板にはシャープ栃木工場がありましたが、2018年にテレビ事業から撤退して工場が閉鎖されました。かつてはJR矢板駅西口前に大きく『SHARP』と書かれた大看板がありましたが、いまは撤去されています。
衰退する企業城下町とは対照的に、熊本県菊陽町には台湾の半導体企業であるTSMCが進出して、好景気に沸いています。ここではTSMCだけではなく、半導体関連の企業が多く進出し、半導体バブルのような状態です。しかし、これが未来永劫続くとは限りません。世の中は諸行無常です。