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笑いのツボは人それぞれ
人を悲しませることは、比較的簡単です。しかし、『人を笑わせる』ことほど、難しいことは無いと思います。特に気分が落ち込んでいる時には、笑う気力も沸いてきません。そんな人を笑わせられる人は、中々いません。
”笑いのツボ”にも個人差があります。バカバカしい笑いが好きな人、下品な笑いが好きな人、高尚な笑いが好きな人、など千差万別です。私は、ゲラゲラ笑う話よりも、どちらかというと、思わずニンマリするような小さい笑いが大好きです。
落語や漫才の導入として、ナゾかけというのがあります。これは”笑いの形式美”のようなもので、「○○とかけて何と解く」と問われたら、「○○とかけて△△と解きます」と答える例のやつです。さらに「その心は?」という問いかけに、最終的には「○○も△△も、どちらも◇◇でしょう」と答えます。
◇◇は、○○と△△に共通項があるものを答えるのです。ナゾかけは、適度なサジ加減が必要です。あまりにナゾかけが上手すぎると、お客さんが感心してしまい、笑いが起きなくなるからです。ピン芸人のねづっちさんは”ナゾかけ芸人”として売れていますが、ねづっちさんが本当に上手いのは、ナゾかけとナゾかけの間に挟むエピソードトークです。もちろん、ナゾかけも上手なのは周知の事実ですが・・・。
自虐ネタというのも、お笑いの基本です。残念ながらコロナ感染で亡くなられましたが、志村けんさんは”自虐ネタの帝王”です。『バカ殿』や『変なオジサン』は、どちらも強烈なキャラクターですが、他人を馬鹿にするのではなく、自分のことで笑わせています。他人の悪口で笑いを取らないというのは、志村さんの”お笑いのポリシー”なのでしょう。
自虐とは反対に、”毒舌”で人気になった人もいます。笑いの方向性は違いますが、お笑いの古典的なスタイルです。ただし、毒舌ほど難しいものはありません。それこそ、サジ加減を間違えれば、笑いではなく非難が殺到します。
お笑い芸人になろうとする人は多いですが、私は見る側が性に合っています。