冒険科学小説『ウロボロスの遺伝子』 あらすじ
この物語にはミステリィ要素が含まれていますが、本格的なミステリィではありません。ネタバレがあっても十分楽しめると思いますが、このあらすじにはストーリーの80%程度が明かされています。この小説をお読み頂いてる方で、まだ続きを読んでないんだよ、という方は読むのをご遠慮下さい。まだ、全然この小説を読んでいなくて、どんなものだか覗いてみようと興味を持って頂いた方には、ぜひ読んで頂きたいと思います。
ここからあらすじが始まります。
三年前の晩秋のある日、未明に一つの事件が解決し、早朝に一つの事件が発生した。解決した事件は幼児誘拐事件、発生したのは高齢者の暴走運転による死傷事件である。一見まったく無関係に思える二つの事件は、この物語の中で現在と過去を行きつ戻りつしながら、二重螺旋構造のDNAのように複雑に絡み合っていく。
二つの事件から三年後の現在、国立ワクチン研究所で強毒性の鳥インフルエンザウイルスが盗まれる新たな事件が発生する。この事件は、内閣総理大臣・毛利元康の元に届いた脅迫メールで発覚する。犯人の目的は、五十億円相当の仮想通貨とワクチン研究所所長の辞任だった。大規模なバイオテロに発展するかもしれない、この盗難事件を秘密裏に捜査するため、昨年末に発足したばかりの内閣府危機管理局の主任危機管理官・赤城百花と危機管理官・黒田保夫の二人が選ばれる。赤城は東大卒の元キャリア官僚で、黒田は元警察官である。捜査会議で二人は、危機管理局局長の鬼塚健一から、過去の幼児誘拐事件が特殊な経緯で解決したことを知らされる。この時に犯人捜査に協力したのが、伝説のハッカー・仙石善人であった。二人は、鬼塚の指令で仙石が待つマッドサイエンス研究所を訪ねることになる。
怪しげな名前を冠したマッドサイエンス研究所は、隕石によってクレータができたと伝承が残る星久保村にある。山奥にある星久保村までの道中で、二人は親切な農夫に道を教えてもらい、やっとの思いで研究所に到着する。二人は研究所建物の入口で、コンピュータグラフィクスとボーカロイドを組み合わせたバーチャロイド技術で作られた「デジタル研究所長・仙石」に出迎えられる。赤城と黒田は、仙石所長の意を汲むサイエンスコンシェルジュ・青山海渡から説明を受けて、マッドサイエンス研究所の概要を知る。青山の説明が終わる頃、先ほどの農夫、ノーベル賞受賞者である研究所副所長・白鳥進一郎が現れる。赤城と黒田は、白鳥博士からウイルスに関する詳しい説明を聞き、無差別なウイルス拡散の危険性をあらためて感じる。次に青山は、過去の幼児誘拐事件解決の鍵となった小森太陽と人見=マリアンヌ=麗子を紹介し、赤城と黒田はこの二人から事件解決の顛末を聞くこととなる。小森は研究所在住のニートながら仙石も認める凄腕ハッカーで、白鳥の要請もあり、ウイルス盗難事件の協力を渋々約束する。また、過去に失恋のトラウマを持つ美貌の心理学者・人見も、最新の心理学の側面からウイルス誘拐事件のサポートを承知する。
サイエンス研究所の全面協力を取り付けた黒田と赤城は、危機管理局に戻った鬼塚に研究所での出来事を報告する。その後、三人は毛利首相が待つ閣議室で今後の捜査方針を話し合うが、その最中に毛利首相に二度目の脅迫メールが届く。脅迫メールには、五十億円の振り込み期限と捜査の中止要請が書かれていた。捜査会議を終えた深夜の帰り道、赤城は犯人が雇った四人の暴漢に襲われる。しかし間一髪、突然現れた”正義の味方”の活躍で赤城は危機を逃れる。
翌日はウイルス盗難があった国立ウイルス研究所の聞き取り調査である。赤城と黒田はウイルス研究所所長の福山大観を訪ねる。福山はアクの強い人物で、研究所の職員には“悪代官”と呼ばれて評判が悪い。福山からウイルス盗難までの経緯を聞き、引き続いてセキュリティ部門の担当者からの聞き取りも行なう。研究所でのすべての聞き取り調査が終わり、二人は鬼塚に報告するため、一旦管理局に向かう。赤城と黒田が帰った後、犯人に心当たりのある福山が外出しようとするが、途中で犯人によって拉致されてしまう。
この時まだ福山の拉致・監禁を知らない赤城と黒田は、鬼塚からの連絡によって、行先を変更して再度マッドサイエンス研究所に向かう。サイエンス研究所での捜査協力の途中で、三度目の脅迫メールが届く。犯人の要求はエスカレートし、捜査を中止しなかったことのペナルティと福山の身代金も含めて、要求額は百億円に増額される。しかし、マッドサイエンスの仙石、白鳥、小森、人見の協力で、ついにウイルス盗難犯の意外な正体と潜伏先が判明する。身代金の振り込み期限まであと三十分。赤木と黒田と青山の三人は、犯人の説得とウイルス回収のため、空から潜伏先に向かう。潜伏先での攻防で、犯人は福山の過去の悪行を断罪し、福山殺害やウイルス拡散を企むが、青山の機転によって犯人は逮捕され、鳥インフルエンザウイルスも無事に回収される。また、監禁されていた福山も無事に解放される。
事件解決の三日後、ウイルス盗難事件の顛末を毛利首相に報告するため、福山と鬼塚が首相官邸に呼ばれる。本当に悪い奴は誰なのか、閣議室で最後の審判が下される。
あらすじは、ここ迄です。
近未来が舞台のこの物語は、DNAを構成するアデニン、グアニン、シトシン、チミンの四つの塩基のように、赤城、青山、黒田、白鳥を中心に展開しますが、その他にも多くの個性的なキャラクターが登場するサイエンスをバックボーンとした群像劇になっています。また、この物語はミステリー要素を各所に散りばめた冒険活劇であるとともに、主人公の一人である赤城百花の成長物語になっています。
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