アメリカ生活#9 スキヤキ・ビーフとスキヤキ・ポーク(SUKIYAKI BEEF & SUKIYAKI PORK)
アメリカ生活では、海岸沿いなどの特別な場所を除けば、肉中心の食生活になります。私がアメリカに住んでいた時は、比較的海に近い場所だったので、魚介類も売られていましたが、肉に比べると値段が高かったように思います。私は食べたことがありませんが、アメリカの内陸部では養殖されたナマズが食べられていると聞きました。
肉は塊で買うのが基本です。アメリカの重さの単位はポンドなので、最初は単位換算に戸惑いました。1ポンドは約453.6グラムなので、慣れてくると2ポンドが1キロ弱なんだと何となくわかってきました。現地の人たちは、最低でも2ポンド以上の量で肉を買っていたと記憶しています。
アメリカの肉屋さんでは、日本の肉屋さんのようにスライスした肉は売っていません。先ほども言いましたが、塊、つまりブロック肉で買うのが常識です。しかし、近所のスーパーマーケット内にある肉屋さんでは、注文すればサービスでスライスしてくれました。ただし、これはかなり例外的なサービスです。スライスした牛肉はSUKIYAKI BEEF、スライスした豚肉はSUKIYAKI PORKと呼ばれていました。蛇足ですが、SUKIYAKI CHICKENはありません。
妻はこの肉屋が家から近いこともあり、ここで良く肉を買っていました。ただし、夫婦二人と幼児ですから、量はそんなに必要ありません。そのため、いつもは牛スライスを0.5ポンド、豚スライスを0.5ポンドの単位で買っていました。買い物には時々同行していましたので、この注文する光景をよく見ていました。
ある時、妻に頼まれて肉を買いに行きました。もちろん、いつもの肉屋さんです。よく見かける顔の中国系アメリカ人の店員さんが、対応してくれました。私が注文しようとすると、「Sukiyaki beef, a half pound. Sukiyaki pork, a half pound.」とニコニコしながら先に言われました。これは、私の妻が普段使っている注文のフレーズでした。こんな少量づつ肉を買う客は珍しいらしく、我々の顔を覚えていたようでした。
無事に肉を買って帰り、妻にこの話をすると、少し恥ずかしそうでした。その後から、『スキヤキ・ビーフ、ハーフ・パウンド。スキヤキ・ポーク、ハーフ・パウンド』は、変な呪文のように我家で流行しました。