ステレオコンポの思い出
私が小学生の頃までは、ステレオと言えば、レコードプレイヤーやスピーカーが一体となった家具調のものが主流でした。中学生の頃になると、機能別の各種音響機器を組み合わせたコンポーネントタイプのステレオが登場しました。これがステレオコンポです。
ステレオコンポの初期の頃の内訳は、レコードプレイヤー、アンプ、チューナー、カセットプレイヤー、スピーカーが基本でした。当時はレコードが主流でCDはまだ世の中に登場していませんでした。現在では、そのCDすら時代遅れになっています。これらを全て揃えると、各コンポーネントのグレードにもよりますが、10-20万円くらいしました。当時の貨幣価値を考えると、かなりの高級品でした。
中学1年生の音楽の授業の時に、音楽担当の女性の先生が「この学校にも新しいステレオセットが、音楽教室に設置されることになりました」と嬉しそうに言いました。その先生が続けて「次の授業では、皆さんの好きなレコードを授業の最後に聞かせたいと思います。聞きたいレコードがあったら持って来てくださいね」と言いました。
次の音楽の授業の時、二人の生徒がレコードを持って来ていました。一人は女子学生で、持ってきたのは当時抜群の人気を誇ったフィンガーファイブの『恋のダイヤル6700』でした。音楽の先生は、歌謡曲をちょっと小馬鹿にするような感じの先生でしたが、先週の自分の発言があるので、渋々、フィンガーファイブの曲をかけてくれました。この曲はその当時の中学生なら誰でも知っている曲でしたから、先生以外はニコニコしながら聞いていました。
もう一人は男子学生で、彼が持ってきたのはサイモン&ガーファンクルの『コンドルは飛んでいく』でした。その当時の私は、サイモン&ガーファンクルなんて初めて聞いたし、その曲名も初めて耳にしました。サイモン&ガーファンクルはアメリカのフォークドュオで、『コンドルは飛んでいく』は1970年に彼らがカバーしたアンデスのフォルクローレでした。この曲がかかると、それまでざわついていた音楽教室が静寂に包まれました。”恋のダイヤル6700”と対照的な曲調と、どこか懐かしい歌の響きが、一気にクラス全員の心を鷲掴みにしました。
この強烈なエピソードがあったので、私の中では、フィンガーファイブとサイモン&ガーファンクルがセットになって記憶されています。
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