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舌笛でハチャトゥリアン
『剣の舞』は、旧ソビエト連邦の作曲家ハチャトゥリアンが、バレエ『ガイーヌ』の最終幕で使うために作った曲です。この曲は、クルド人がサーベルを持って舞う”戦いの踊り”のシーンで使われます。演奏時間は2分程度の短い曲ですが、テンポよく鳴り響くパーカッションのインパクトで、脳内に強く印象付けられます。
有名な曲なので、かなり昔に作られた曲だと思っていたら、なんと現代音楽でした。この曲の題名は知らなくても、誰でも一度は聞いたことがある曲だと思います。曲の滑り出し(はじめ)の部分が一番有名ですが、実はエンディングの短い部分も効果音としてよく使われています。
この曲で有名になったハチャトゥリアンですが、”剣の舞の父”などと呼ばれることが嫌だったと語っていたそうです。無名で消えていく作曲家が多い中、一曲でもヒット曲があれば御の字だと思うのは素人で、多くの素晴らしい曲を書いたと自負しているハチャトゥリアンにとっては、”一発屋”が耐えられなかったのかもしれません。
この記事を書こうと思ったキッカケは、夜の遅い時間に見たテレビ番組で、漫才コンビ・千鳥のノブさんが披露していた地味な芸でした。その芸というのは、舌笛と呼ばれる技で、口笛とは違って唇を動かさずに口から音を出すことができます。その芸を披露していた時に演奏(?)されたのが『剣の舞』でした。
実は私も、この地味な舌笛ができます。舌笛をやろうと思ったのは『万国ビックリショー』という”驚きの技”を持った世界の人達を紹介する番組で、舌笛が紹介されたからです。一緒にテレビを見ていた父が「あんなの簡単じゃないの?」と、見様見真似で父が試行錯誤しながら練習していたら、音が出るようになりました。それなら俺だってできるんじゃないの?、と思ってやり始めたら、私もできるようになりました。どうやら舌笛は、世界の人がビックリするような凄技ではなかったようでした。
この舌笛にピッタリなのが、『剣の舞』です。舌笛は音域が狭いので、高低差の大きな楽曲には不向きです。しかし、『剣の舞』のように単調な音が連続する曲は、舌笛にとても向いています。念のため、楽譜を調べたら、やっぱり高低差の無い音の繰り返しになっていました。今まで舌笛で『剣の舞』を吹いたことが無かったのですが、試しに吹いてみると、思いの他うまく吹けました。
やっぱり舌笛には『剣の舞』です。ハチャトゥリアンさん、あんたはエライ!。