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漫画 『英雄失格』

いつの時代でも、英雄やヒーローはみんなの憧れです。世代は変われど、いまだに戦隊ヒーローや仮面ライダーなどのシリーズは子供達に大人気です。しかし、誰もが英雄/ヒーローに成れるわけではありません。そんな英雄になれなかった主人公を描いた漫画が、今でも心に残っています。

そのマンガのタイトルは『英雄失格』です。派手さの無い地味なマンガですが、なぜか印象強く心に残りました。このマンガのストーリーは、スポーツ新聞の記者が、英雄を追いかけるスポーツ新聞社の中にいながら、その陰で英雄になれなかった敗者に惹かれ取材していくというものです。

取材の対象となる人物が数名出てくるので、オムニバス形式のようなストラーリー展開になっています。私が覚えているのは、天才柔道家と覆面レスラーの話です。特に覆面レスラーの話は、切なくて心に刺さりました。

ある日、弱小団体の東洋プロレスに、怪力とテクニックを併せ持つ謎の覆面レスラー・『ミスター・ネッシー』が登場します。彼の正体は、戦後のアメリカで悪役を演じたゼネラル・トージョーの息子です。ゼネラル・トージョーは息子のために、悪役から真剣勝負のプロレスに転向しますが、そのせいで命を落としてしまいます。その亡き父のリベンジを果たすために、プロレス界の英雄を目指したのがミスター・ネッシーです。

ミスター・ネッシーは最初こそ快進撃を続けますが、最終的には英雄には成れませんでした。ミスター・ネッシーは子供の頃からの激しい訓練がもとで、顔が醜く変形していたのです。そのため、覆面レスラーとして素顔を隠していました。実生活のミスター・ネッシーはこの素顔のために、不当な扱いを受けます。

父のリベンジのために覆面レスラーになった息子は、最後は素顔で父のような道化役の悪役レスラーになってしまいます。なんとも後味の悪い幕切れですが、強く印象に残りました。数少ない英雄の陰には、多くの英雄失格者がいます。夢も希望も無いマンガですが、妙にリアルです。


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