企業の国内回帰 リショアリング
海外進出企業の国内回帰が加速しているようです。この企業の国内回帰のことを英語で、リショアリング(reshoring)と言います。もともとショアリング(shoring)というのは”支柱”や”支え”のことで、再び事業を支えるという意味でre-shoringという単語が使われました。もう少し詳しく言うと、母国における既存の事業拠点から他国に移していた工場を、再び国内に移転する経済行為を指します。
日本では、1980年代後半に締結されたプラザ合意や1990年代中頃の円高、グローバル化などにより、人件費の安い中国や東南アジアに工場を移転しました。これによって、一部の産業は空洞化することになりました。しかしその後、中国・東南アジアなど発展途上国の人件費が上昇したことと、円安が加速したこともあり、海外移転した工場を日本国内に戻す企業が増えています。
このようなリショアリングは、ここ20年位で現れ始めて現象です。企業の海外移転は、生産コストを低くすることに主眼が置かれましたが、数年前からは”どこで生産するのが経済安全保障的に国益につながるのか”が重要な判断基準になっているようです。
中国はアジアの工場を標榜し、ここ10年の世界経済を牽引していたことは事実です。しかし、ここ数年の中国国内の不動産バブル?や金融バブル?の影響で、中国経済も成長が鈍化しています。また、海外の人件費高騰や輸送費の急激な変動などから、日本国内で製造してもコスト競争力を維持できると判断する企業が増えているのも、リショアリングの要因です。
半導体や電子部品の国内回帰のインパクトは大きいようです。これまで、コスト競争の激しいこれらの産業では、中国などの人件費の安い国へ工場を移転したり、製造委託したりすることが当たり前でした。しかし、今では逆に外資系企業が日本国内に拠点を設ける事例もあり、人的資源(エンジニア)の不足が懸念されるほどです。半導体大手のTSMC(台湾積体電路製造)が熊本県にロジック半導体の工場を建設するのは、象徴的な出来事です。
国内回帰の流れは、スタートアップ企業にも影響があるようです。これまで多くのスタートアップ企業は、製造のための部品や部材を中国などの海外に依存していました。しかし円安によるコスト増を受けて、日本で製造の割合を増やしているようです。
グローバル化が進んだ現在、全てのものを日本国内で製造する必要はありませんが、成長産業の要である半導体などは、経済安全保障の面でも国内生産できると安心です。また、かつての『ものつくり大国』を復活させるためにも、海外進出企業の国内回帰は重要なカギとなるでしょう。
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