№329 ポリコレ疲れと言葉狩り
性差別的な広告にクレームが殺到したり、
逆に、そのクレームに対する批判が相次いだり、
「ポリティカル・コレクトネス」をめぐる状況は
海外を発端に日本でも騒がしくなってきています。
ちなみに皆さんは「ポリティカル・コレクトネス」の意味を正しく理解していますでしょうか?
改めて、本来の意味をおさらいしておきましょう。
オックスフォード現代英英辞典によれば、
ポリティカル・コレクトネスは
「特定の人々を害する言動を避ける」という原則のことを差します。
これは主に1980年代に
アメリカにおいて生まれた考え方で、
性別や年齢、肌の色や宗教、
身体障害者などを差別するような言葉を避けて、
別の言い回しをしようじゃないか、
という運動として発達してきました。
女性既婚者を示す
"Mrs"や未婚者の"Miss"を使うのではなく、
"Ms"の称号を用いる。
"Black(黒人)"ではなく、
"African American(アフリカ系アメリカ人)"と言う。
これらが、ポリティカル・コレクトネスに基づく言い換えの一環です。
やがて、このポリティカル・コレクトネスの動きは日本にも伝わっていきました。
日本におけるポリティカル・コレクトネスの代表例は、職業名の言い換えでしょう。
看護婦や助産婦、保健婦といった
女性系名称は2002年に
「看護師」「助産師」「保健師」と改められました。
男性名詞のスチュワード、
女性名詞のスチュワーデスも、
「客室乗務員」や「キャビンアテンダント」と呼ばれるようになっています。
保育園の保母さんも、今は「保育士さん」です。
Googleで「ポリティカル・コレクトネス」を調べると、
2016年11月の検索回数が突出していることが分かりました。
これは、米大統領選挙の一般投票がおこなわれた月で、
ドナルド・トランプの大統領当選が確実となった時でした。
選挙費用のほぼすべてを
自分の財産から拠出したことで、
トランプ大統領はロビイストという特定集団に
配慮する必要のない政治家となりました。
移民やマイノリティ、
女性に対する攻撃的な発言や政策に
支持が集まった背景には、
「ポリコレ疲れ」があったのではないかという論調もありました。
実際、ポリティカル・コレクトネスの追求は、
度の過ぎた自主規制や
表面的な「言葉狩り」を生むおそれがあります。
例えば、アメリカではクリスマスの挨拶に
「メリークリスマス」ではなく
「ハッピーホリデイ」を用いるべき!とされてきました。
キリスト教徒でない人も多いのだから、
宗教行事的な言葉はいかがなものか、
という発想です。
余談ですが、トランプ大統領はメリークリスマスと堂々と言っています。
日本でも、古い漫画やドラマのセリフが
修正されるなど、
歴史的文脈を無視した改変が度々おこなわれてきました。
広告やCMに対するクレームなどを通じて、
「ポリコレ疲れ」は日本でも指摘されるようになっているのが現状のようです。
一方で、
「男のくせにそんなこともできないのかー!」
「女なんだから、もう少しかわいい格好でもしたらいいのにー!」
と言われればムッとする人もいるでしょう。
「ポリティカル・コレクトネス」という
こんがらがった概念を使い回すよりも、
「配慮」という言葉に立ち戻るほうが
日本らしくて良いのかもしれませんね。
しかし、コロナ禍において
今、一番問題となっているのはこの
「ポリティカル・コレクトネス」です。
今までも、そしてこれからも
この「ポリティカル・コレクトネス」について
ボクなりに記事にしてみたいと思っています。