№333 ボクはエリートだから駐禁エリアに路駐しても許されるよね。
あんな立派な人がなぜ?
何か大きな事件が起きたとき、
容疑者をよく知る人物が
インタビューに答えることがあります。
その中で「まさかあんなに立派な人が!」 とか
「奉仕活動に積極的な人なのに!!」
などとコメントされているのを
聞いたことがあるのではないでしょうか?
福祉活動に熱心だったり、
社会貢献に注力している企業の役員だったり、
社会の役に立つような活動で有名だったり…
そのような人が犯罪や、
倫理的に良くないことをしてしまうのは珍しくありません。
その要因1つとして、
「当事者による思い込み」
から生じるバイアスが挙げられます。
このバイアスでは、
まるで免罪符を持っているかのように
錯覚してしまったりするのです。
つまり、自らが立派であること、
社会の役に立っていることを
キチンと認識しているがゆえに、
「これだけ素晴らしいのだから多少倫理に反するようなことを行ったとしても許されるだろう!」
と無意識のうちに考える。
これを心理学では
「モラル信任効果」といったりします。
このような考え方は、
古くから社会のさまざまな場面で見られたりしています。
たとえば、ひと昔前には
「聖職」 と考えられていたような職業では、
彼らの理不尽な行動も指導の一環であるとして
黙認されていたし、
権力を持っている人々が、
多くの場面で優遇を受けているということもありました。
「あんな立派な人がなぜ?」
と言われるような事件が起こる背景には、
優れている点によって悪い行いが帳消しになる!
という思い違いが存在するのです。
近年では、
社会的に価値の高い仕事をすることが、
従業員らの不正行為を促進してしまうことが明らかになっています。
言い換えると、自分が社会にとって
役に立つことをしていると自覚することは、
仕事において不正を行いやすくしてしまうのだそうです。
ドイツで行われた有名な実験があるのですが
実験参加者らに、「不鮮明な印刷の短いドイツ語の文章を清書する」という仕事を行わせました。
すべてキチンと写した参加者には
約束された報酬を全額支払いました。
また、読み取ることが難しい課題については
飛ばすことが許可され、
その分の報酬が減額されることはありません。
この実験により、
あらかじめ報酬の5%を
別途、国際的に有名な慈善活動を行っている団体に寄付すると知らされていたグループは、
知らされていなかったグループよりも、
本来読めるはずの課題を読めないと答えて
飛ばすことが多かったそうなのです。
また、報酬の一部を
前払いでもらっているのにもかかわらず、
完遂せずに終了したりする人の割合が
高くなることが明らかとなりました。
なお、寄付をするしないにかかわらず、
手に入る報酬は、 基準となる条件を除いて
同じ額でした。
これにより、
寄付を知らされたグループの作業の完成度は低く、
社会貢献をしているという意識が怠慢に繋がっているという事が分かったのです!!
この「モラル信任効果」は、
自分が素晴らしいことをしているだとか、
周りから一目置かれるような人間であると自覚していることによって引き起こされます。
たとえば、一家の大黒柱が、
家庭内で横暴に振る舞うというのは
男女問わず聞く話であるし、
権力を持っているがゆえに
自分の正当性が認められていると錯覚し、
立場の弱い人たちから
便宜をはかられて当然だと考える人もいる。
男性が女性よりも優れていると考えている男性は、女性よりもいい待遇を当たり前に求めるし、
女性は庇護されるべきだと考えています。
女性は、男性と対等に扱われても
不満を感じることも多いです。
これらはすべて、自分の中にある優越感が生む歪みなのです。
モラル信任効果は、
特別に選ばれた人だけではなく、
普通の人、日常の生活の中でも生じる可能性があることは先述したとおりです。
自分はボランティアをして
社会の役に立っているので
短時間の路上駐車をしても許される、
など自分が社会的な貢献をしていることを理由に、関係のないところでの
ささいな不正が許されると錯覚するのです。
犯罪や自分以外の誰かを傷つける可能性があるモラルに反した行いが
サッと頭によぎったとき、
「このくらいなら許されるだろう」
という自分の甘えに気づき、
自らを律することができるかどうかが重要といえますよね?
また、そのような振る舞いを諌めてくれる人が存在したとき、
ありがたいと思えるか、思えないかで、
その人の生き方も大きく変わってくるでしょう!