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ゴイゴイスーの日2022

10月9日(日)。


8:30 起床

 母に起こしてもらった。この日は午後から英検がある。いつもの休日なら英検が始まる頃に起きている。僕は焦りながら英検2級の勉強を始めた。なぜなら、この時の僕はほぼノー勉。その原因は、2日前に行われた世界史の授業内テストに全身全霊で取り組んでしまったからだ。具体的に言えば1週間、英検ではなく、世界史のテスト勉強だけに時間を使ったのである。僕はペース配分が苦手だと感じた。苦手というよりかは下手だ。

9:00 朝食

 何を食べたか思い出せないが、朝食を食べた。

9:15 ゴイゴイスー大量摂取タイム

 朝食を済ませ、僕は前日に放送された『お笑いの日2022』で披露された
ランジャタイとダイアン津田さんのコラボネタ“ゴイゴイスーミュージカル”を家族で観ていた。
 前日も観たが、その後も頭からゴイゴイスーが抜けなかった。僕の身体はゴイゴイスーを欲していた。
 そして朝からゴイゴイスーを大量摂取した。
 せっかくなので、両親にもゴイゴイスーをお裾分けしてあげた。

9:30 僕の頭に津田がいる。

 ゴイゴイスーミュージカルで死ぬほど笑い、僕は部屋に戻って、2時間半の英検の勉強を始めた。
 しかし、勉強を始めた僕の脳内にはあるギャグ響いていた。
“ゴイゴイ” “スーススー” “ゴイゴイスー”
津田だ。津田がいる。僕の頭に津田がいた。
その後も僕の頭の津田は僕に声を届けた
“ゴイゴイ” “スーススー” “ゴイゴイスー”
気がつくと、僕は呟いていた。
「ゴイゴイ」「スーススー」
「ゴイゴイスー!!!」
あっという間に2時間半が過ぎた。
だがしかし、安心して欲しい。
英語の内容がすんなり頭に入っていた。
もしかして、ゴイゴイスーには記憶力を向上させる力があるのかもしれない。

13:20 2級さえ受かれば…

 学校に着いた。あと10分で試験が開始する。道中のコンビニで買ったグミを大量に頬張り、校門をくぐった。
 お気付きだと思うが一応言っておく。
 僕はバカな人間だ。グミを頬張り校門をくぐる事をカッコいいと思っている。俯瞰で見ていて初めて気づいた。
「え?俺バカなんじゃねぇか?」
 そんな事を考えている間に、僕は英検2級の会場となる教室に着いた。
 座席に着いて、
僕は目を瞑り自分自身に言い聞かせた。
『ここで全てが決まるんだ』
『2級さえ受かれば… 大学に進学したら特待生として授業料が一部免除の資格が与えられるのだ』
『英検2級。最初で最後のチャンス…』
『スーススー』
『え?』
『スーススー』
『え?』
『ゴイゴイ』
終わった… 今回終わったわ…
ゴイゴイスー出たら、完全に終わるじゃん。
英検前のゴイゴイスーは何かダメな気がする。でも、一か八かやってやるか!
かかって来やがれ!英検!

13:45 試験開始

 試験が始まった。
 大問1は、穴埋め問題。しかし、単語は分からなかったが、これまで蓄えた経験と勘で乗り切った。正解してるから知らんが。
 大問2と3は、文章問題。これは思っていたよりも簡単に解くことが出来た。ここから頭が冴えるようになった。
 大問4は、ライティング。質問となる問題に対して賛成もしくは反対の意見を80~100単語で、理由を2つ答えなければならない。僕は、理由を考える事に時間が掛かったが、書き始めればあっという間だった。
 僕は完全にゾーンに入っていた。

15:10 ゾーンの終焉

 僕はゾーンに入った状態で、リスニング問題を迎える事が出来た。1問、2問と順調に問題を解き続けていた。
 しかし、ある時、僕の耳に幻聴が聞こえた
 “ゴイゴイスー!”
 リスニング問題で、まさかのゴイゴイスーの空耳をしてしまったのだ。その事に動揺した瞬間に、僕のゾーンが切れる感覚がした。
 僕は思い出した。
「俺、ゾーンに入ったら芸人さんのネタが再生されるんだ…」
 これに気づいたのは、高2の自習のとき。
 数学のワークの問題をひたすら解き続けていた時に僕の頭で、ある芸人さんのネタが再生された。
『絹枝にパンパン絹枝にパンパンパン』
ZAZYだ。
 僕の頭の絹枝おばあちゃんは、1時間も口にパンを詰められる拷問を受けられていた。
 ゾーンが切れてしまい、リスニングの中盤は当てずっぽうで答えていた。
 後半になると何とか立て直した。

15:35 感覚

 英検が終わり、解答用紙が回収されていた。僕はペットボトルのお茶を飲んで、心を落ち着かせた。
 周りの受験生が談笑している中、僕は誰よりも先に教室を出た。話せる人が誰もいなかった。何故僕の友人は誰も英検を受けないのだろうか。誘ったとしても、
「そんなの受ける方がバカ」
「別にいいじゃん、やんなくても」
と返されるだけ。
文字に起こしただけで、何故か怒りが湧いてしまう。
 英検が終わり、僕には手応えがあった。
邪魔立てゴイゴイスーはあったが、集中力が途切れる事は、正直ほとんど無かった。
 これは試験中、合格した時の英検準2級と同じ感覚だった。その時は、手応えは無かったものの、とにかく集中力が途切れなかった。共通点はそれだけだ。
 今までは僕は5回 準2級を受けて来たが、落ち続けた4回に共通しているのは、
全く集中が続かなかった事。
 4回目に至っては、試験中に好きなおでんの具についてひたすら考えていた。
 その結果、大根。玉子。ちくわが大好きだという気が付いた。自己PRに書いてやろう。
 とりあえず、僕は手応えを感じたのだ。

10月16日(日)。

あれから1週間経ったが、
試験の結果はまだ発表されていない。
これに合格するかしないかで、僕の人生は変わるかもしれない。

僕は高校3年生であり、受験生でもある。
僕は特待での大学進学を狙っている。
先日の行われた推薦会議で、
僕は特待での推薦枠を勝ち取る事が出来た。
たとえ合格できたとしても特待の枠ではなく
推薦の枠で合格という最悪の事態が発生してしまうかもしれない。
何故、推薦の枠の合格が最悪の事態か?
それは、お金が無いからだ。
かと言って貧しい暮らしをしているかと言われれば、そうでもない。

僕の通っている高校から
僕の志望している大学に合格すれば
入学金が免除されるシステムがある。
更に特待生では、順位によって
授業料の全額、半額、一部の
いずれかの免除の資格を得ることが出来る。
その特待生の資格を得るには
入学試験での合格。
もしくは12月までに英検2級以上を取得する事だ。
英検2級だと、2年間は授業料の一部が免除される。更新する為には準1級に受からなければならない。

入学試験まで、あと1ヵ月。
もし、今回の英検に合格する事が出来たら
ゲン担ぎのために
ゴイゴイスーミュージカルを観てから
入試に向かおう。
少しでも笑ってから試験に挑みたい。
もしかしたら、
面接中にゴイゴイスーの幻聴が聞こえるかもしれないし、言ってしまうかもしれない。
ただ落ちるよりも、
全力でゴイゴイスーやって、
爪痕残して落ちるのも悪くない。

いや、悪いに越したことねぇわ!
特待で推薦させて貰ってるんだぞ!
身分をわきまえろ!自分!

とりあえず、不安しかないです。


【追記】
10月25日(火)

落ちた。

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