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第23回国際鉄道模型コンベンション探訪レポート・モデラーブース編!2024年は「特急」をテーマに、NゲージやHOスケールのジオラマに加えてドールハウスを掛け合わせた革新的展示なども!

取材・文●若林健矢

鉄道模型の祭典「第23回国際鉄道模型コンベンション」が、2024年8月16日(金)~18日(日)の3日間にわたって東京ビッグサイト東1ホールで開催されました。

もう1本の記事では「企業ブース編」ということで、会場内にてさまざまなスケールの鉄道模型メーカーの試作品展示・新製品発表や、鉄道模型専門店等の販売コーナーが展開されたその内容をご紹介しましたが、こちらの記事は「モデラーブース編」ということで、筆者が特に気になったモデラーさんたちの出展物をご紹介していきましょう。

鉄道模型コンベンション2024年のテーマは「特急」。蒸気機関車・電気機関車、気動車・電車と時代が移り変わる中で、堂々たる姿を見せる幹線特急や、短くても頼りになるローカル特急など、さまざまな列車が存在しています。今では見られなくなってしまった列車もありますが、鉄道模型の世界なら今なお現役です。もちろん、特急以外の列車も多数展示されていました。


Nゲージで表現するさまざまな車両や情景、フリーランス車両や紙素材も

結伝社

日本型・外国型のモジュールをつなげてNゲージを走行展示していた「結伝社(ゆいでんしゃ)」。サークル内独自企画で各々モジュールを制作し、それをつなげてNゲージを運転しています。列車の一部は「鉄道コレクション」やキット組立の車両でしたが、前照灯を点灯化させるという技術力の高さも垣間見えました。

日本型のモジュールでは、川に架かる鉄橋から海沿いの情景、さらに都市部を高架で抜けて主要駅に到着するようにモジュールがつなげられていました。駅の分岐ポイントは自作の制御盤にまとまっています。カーブ区間ではカントが設けられ、迫力ある走行シーンも見られます。都市部のモジュールでは、電飾や、街中に仕込まれたストーリーが見ごたえあり! バスも走行していました。

▲ 築堤上のカーブ区間を東武鉄道8000系が行く。
▲ 特急ラビュー(写真右手前)を待たせて京王6000系(同左奥)が通過。
▲ 何やら物々しい雰囲気……!?

外国型のモジュールでは、ターミナル駅のセクションと山岳地帯のセクションに分かれています。海外メーカー・FALLER(ファーラー)のボン駅舎とKibri(キブリ)のドーム付きホームを使って国鉄型のターミナル駅を表現。山岳部は、各モジュールで分割・メンテナンス可能な構造にしつつ、スイスの登山電車が走行するように製作されていました。

▲ 外国型モジュールの中心となるターミナル駅を、国鉄型の列車が行き交う。
▲ 山岳部ではスイスの列車が上り下り。山は取り外し可能という。

そして、今流行りの要素を取り入れていたのも面白いところ。この夏、なぜか鹿が流行って(?)いるということで、計18頭の鹿がいたるところに虎視眈々と紛れ込んでいました。元ネタを知っている人はともかく、元ネタを知らない人(とくに子どもたち)にとっても、単純に鹿を探すのが楽しいと好評だったそうです。

▲ 多くの人でにぎわうホームにしれっと鹿。あと17頭もしっかり潜んでいた。


紙鐵 九粍會

「紙鐵 九粍會(カミテツ キュウミリカイ)」では、紙で自作している車両やストラクチャーが展示されていました。人により作り方は異なりますが、主に、ケント紙やマンガ用原稿用紙を素材に、イラストレーターまたは手書きで図面を作成。それを、定規とカッターで手作業で切り出して制作しています。ケント紙・マンガ原稿用紙は一般的な厚紙に比べて薄いですが、強度を確保しながらもストレスを少なくできるメリットがあるそうです。

▲ 車両・ストラクチャーともに紙で自作した作品が数多く展示されていた。
▲ 紙の切り出し方や組み合わせ方はこんな感じ。


架空鉄道組合(仮)

実在しない設定で鉄道を楽しむ「架空鉄」というジャンルも、鉄道趣味の一ジャンルとして確立されています。「架空鉄道組合(仮)」のブースでは、架空鉄道を楽しむモデラーが自身の作品を持ち寄り、テーブルに展開していました。基本的には、素体となる車両を適宜切り詰め、独自のカラーリングに塗り替えている様子。架空鉄の在り方もひとそれぞれで、完全に架空の世界観を創出する人もいれば、実在の地理にもとづいて独自の鉄道を考案する人もいました。

▲ 種車を塗り換えたり、切り詰めたりして作られるフリーランス車両の数々。
▲ 架空鉄道の始発駅。

フリーランス車両の隣では、多摩温泉電鉄のモジュールレイアウトも展示されました。2023年同様に、路面モジュール規格のレイアウトで、適宜電気的なギャップを設け、1セクションに1編成のみ列車が入れるよう「Ichigojam」でプログラム制御されています。2024年はモジュールの数が少し増えたものの、全体的にノスタルジックな雰囲気は変わらず。新設されたモジュール区間も、他の情景や、行き交う列車と良くなじんでいました。

▲ 多摩温泉電鉄のモジュールレイアウトにも新しい街並みが見られた。


平井鉄道 with わり

鉄道模型YouTuberの作品も東京ビッグサイトに登場! 「平井鉄道 with わり」では、YouTubeで動画を発信している平井鉄道氏 と、わり氏(わりの気軽に鉄道模型チャンネル)が共同でNゲージを出展していました。平井鉄道レイアウトは、地上・地下でそれぞれ複線レイアウトになっています。駅にはH形のプラ棒と細いテープLEDで電飾が組み込まれており、地下駅もコンビニや改札口などが作り込まれています。地下線は大部分がトンネルですが、カメラとモニターでトンネル内の様子が分かるようになっていました。

▲ いろんな列車が地上線・地下線を走る平井鉄道レイアウト。地上線・地下線の転線もできる。

一般的な20m級の車両も走行できるのびのびとしたレイアウトでありながら、4分割が可能なボードをラックに載せているため、運搬もしやすいとのこと。ふだんYouTube動画に登場するNゲージレイアウトには、いろいろな工夫やこだわりが詰まっていました。取材中、動画を見ているという子どもたちがブースを訪ねてくることもありました。

▲ 運搬のしやすさを考慮しつつ、大型車両ものびのび走れるレイアウト。

わり氏の出展としては、TOMIX「コンビネーションボード」に作り上げたモジュールレイアウトや、併用軌道時代の犬山橋(名鉄犬山線犬山遊園~新鵜沼間)がありました。モジュールレイアウトは、北総線や中央線の外濠付近が題材になっています。旧犬山橋は実車さながら、鉄橋の中に併用軌道を表現し、鉄道と自動車がギリギリの距離で行き交う様子を再現していました。

▲ わり氏の市ケ谷~飯田橋間のモジュール。モジュール外の線路と接続すれば、この上を列車が走れる。


ランドスケープPJ ~現実風景をジオラマに~

YouTubeで鉄道模型ジオラマの制作動画を配信するCityscape Studioと、リアルな模型作りを手助けしている模型ブランドのオズモファクトリー、鉄道模型のパーツを販売するガレージメーカー・MATSURI MODELSの3者による共同出展「ランドスケープPJ ~現実風景をジオラマに~」も必見でした! Cityscape Studioの新宿駅ジオラマは、2024年の出展では未完成だったホーム屋根が取り付けられ、ホーム部が完成したとのこと。将来的には新宿大ガードや歌舞伎町も制作していくとのことでした。

▲ Cityscape Studioの新宿駅ジオラマでは、ついにホーム部が完成!
▲ 今後も新宿駅周辺のジオラマ化は続けられ、将来的には新宿大ガードや歌舞伎町も制作予定とのこと。

他にも、オズモファクトリーによる熱海駅や黄瀬川橋梁(東海道本線三島~沼津間)、MATSURI MODELSによる宇都宮ライトレールのT-TRAKジオラマなども展示されていました。

▲ オズモファクトリーの黄瀬川橋梁ジオラマを「THE ROYAL EXPRESS」が行く。「THE ROYAL EXPRESS」はおそらく来場者持参のもの。
▲ MATSURI MODELSの宇都宮ライトレールジオラマ。実車も開業1周年を迎えた。

また「ランドスケープPJ」では、事前予約制で運転体験も行っていました。今回は筆者も、国鉄151系特急「こだま」(マイクロエース)を用意して実際に運転体験をしてみました。151系「こだま」は、東海道新幹線が開業する前に東海道本線を走っていた特急列車。とくに熱海駅や黄瀬川橋梁を通過する場面では、実車もこんな感じだったのではと思ったほど風景に溶け込んでいました。

▲ 筆者が持参した151系特急「こだま」も、ランドスケープPJの情景に見事になじんだ。


HOスケールのレイアウトや車両制作、スゴい改造車両も!

HOスケール日本型を楽しもう(HOJC)

HOスケールのモデラー出展にも目を向けてみましょう。「HOスケール日本型を楽しもう」で展示されていた幌別炭鉱鉄道レイアウトは、1/87スケールで線路幅12mmという、通常とは少し変わった軌間のレイアウト。

▲ 石炭輸送が主役の時代をイメージしたレイアウト。

石炭輸送が主役だった1960年代、道東で雪が少ない地域に線路を持っていた小中規模の炭鉱鉄道をイメージして制作したとのこと。当時をイメージさせる炭鉱鉄道の設備や機関車はもちろんですが、駅・車両基地を離れてすぐに迫る豊かな自然の表現にも、思わず見入るほどの作り込みがうかがえました。

▲ 道東の大自然と、そこに突如として現る炭鉱関連施設を貨客混合列車が走る。


チームおやびん

「チームおやびん」は、HOスケールで自作した車両を多数展示していました。今回のテーマは「多段サッシ窓の段差をペーパーで表現しよう」。外板やドアなど、厚紙を複数枚重ねて貼り付けることで、実車さながらの段差を表現することができます。屋根までペーパーで制作するか、屋根は別パーツ化するか、人によって工程が異なりますが、どれも紙素材とは思えないほど重厚感のある仕上がりに見受けられました。もちろん、テーマであるサッシ窓の段差もバッチリ!

▲ 紙素材で制作されたHO車両の数々。
▲ 紙を重ねることで、窓サッシやドアなどの段差が再現できる。

隣のテーブルでは、マイクロエースから発売された103系キットの制作例も展示されていました。製品状態では高運転台ATC車がプロトタイプですが、それを低運転台化したり、戸袋窓を埋めたり、1編成に複数の塗装を組み込んだりなど、改造の幅は人それぞれ。極めつけは、大幅改造で相模鉄道2100系も並んでいたのが驚きでした。それ以外にも、Hゴムの塗り分けやウェザリングなどにも違いが見られ、制作の幅が無限に広がりそうな、見ごたえのある作例でした。

▲ マイクロエースから発売された103系プラキットの制作例。
▲ キットの改造でなんと相鉄2100系が登場!


レゴ、プラレール、人形と楽しむ鉄道模型も

Lゲージでつくる鉄道模型

鉄道ホビーは何もNゲージやHOスケールなど、精密な模型に限ったことではありません。今回も、レゴブロックやプラレールを出展を見ることができました。「Lゲージでつくる鉄道模型」では、レゴブロックで作られた鉄道模型が、レゴブロックの線路を行き交っていました。今回は「特急」のテーマにちなんで、「成田エクスプレス」や西武鉄道「ラビュー」などの個性的な車両が走行していました。

▲ レゴブロックの「ラビュー」や「成田エクスプレス」253系(現・長野電鉄スノーモンキー)などが走行。


ぺたぞうの電車王国

プラレールの出展は、「ぺたぞうの電車王国」が行っていました。既存の新幹線を実車同様のフル編成にしたり、一部の車両にライト点灯化改造を施したり、公式に販売されていない車両を自作したりなど、市販品だけでは見られないプラレール列車の数々が走っていました。

▲ JR・私鉄さまざまなプラレールが縦横無尽に行き交う。


ドールトレインコンセプト(lococoro)

個人的にもう一つ興味を惹かれたのは、ドールハウスと鉄道模型を掛け合わせた「ドールトレインコンセプト(lococoro)」。シルバニアファミリーなどの人形を乗せる前提で自作された列車が、メルヘンチックな情景の中をゆっくり走る、一風変わった情景が魅力的でした。しかも見た目の可愛さだけではなく、水車や観覧車などに仕込まれたギミックも特徴的。このようなドールの世界観と模型技術の融合に、鉄道模型の新たな楽しみ方が垣間見えました。

▲ 模型の列車に人形が乗って、メルヘンチックな情景をゆっくり回る。


2024年も東京ビッグサイトでナローゲージ鉄道が限定運行

羅須地人鉄道協会

最後はナローゲージ鉄道に乗車してきました。千葉県の成田ゆめ牧場「まきば線」を拠点に、軽便鉄道の運営・保存活動を行っている羅須地人(らすちじん)鉄道協会が、2024年も国際鉄道模型コンベンションに出展。1日目は車両展示のみ行い、2・3日目に体験乗車が行われました。今年は、2021年にボイラーを乗せ換え製造された蒸気機関車9号機「マズルカ(Mazurka)」が運行しました。

▲ 羅須地人鉄道協会の9号機「マズルカ」。

体験乗車は、機関車の牽引する客車への乗車か、運転台添乗の2種類。筆者は運転台に添乗しました。乗客全員が乗車したのを確認し、「ポォォ~」という優しい音色で汽笛を上げて発車。旗を持った係員の現示に従って、50m先の終端部までゆっくり走ります。運転台に立席で添乗しているのもあってか、床下からの振動も足に伝わってきました。ちなみに今回、機関車の足回りを小型カメラで写し、客車に乗っている人にシリンダーの動きが分かるようにもされていました。

▲ 東京ビッグサイトの屋内でナローゲージ鉄道が走る。
▲ 沿道(?)から見た様子。

終端部で停止したら、再び汽笛を鳴らして乗り場へバック。約50mの往復で2分程度の短い時間でしたが、軌間610mm(2フィート)の軽便鉄道を東京の臨海部で体験できました。各日の終了時刻にも「マズルカ」が高らかに汽笛を吹鳴し、会場からも拍手が上がりました。今回東京ビッグサイトで乗ることができた「マズルカ」以外の車両も、通常は成田ゆめ牧場(千葉県成田市)のまきば線にて見ることができます。機関車の運行日については、同会公式サイトをご参照ください。


3日間でも堪能しきれない展示の数々!

この他、台湾型の鉄道模型や、ライブスチームの蒸気機関車、バンダイが発売していた「Bトレインショーティー」向けのレイアウト、Zゲージのミニレイアウトなど、様々なモデラーがこだわりを持って制作した車両・ジオラマが出展されていました。どれも見ごたえがあり、可能ならもっと多くを取材したかったのですが、時間の制約には勝てず、またの機会に持ち越しとなりました。

「モデラーブース編」は以上です。別記事の「企業ブース編」も、未読の方はぜひご覧ください。

鉄道模型の楽しみは、スケール、車両工作、ジオラマ制作に撮り鉄など、さまざまな面白さに満ちあふれています。2024年のこのイベントも、それらの多様な楽しみ方をファン同士で共有できる、大変有意義な機会になったのではないでしょうか。筆者も良い刺激を得られました。国際鉄道模型コンベンションは2025年も開催予定で、次は第24回となります。こういったイベントなどで、あなたもぜひ、鉄道模型に触れてみませんか?


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