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"複業先生"特別授業〜DEN-DEN主催~伝統工芸高岡漆器を学ぶ

富山県高岡市の伝統工芸『高岡漆器』。地元の人なら誰でも手に取ったことはあるはず。しかし全国ではまだまだ知らない人は多いです。

400年の歴史を誇る『高岡漆器』は現代のニーズに合わせ、螺鈿ガラスと融合し地元の人さえ知らない変化を遂げています。

そこで『高岡漆器』の螺鈿ガラスをはじめ、現代にも脈々と受け継がれる伝統工芸品の魅力に迫る対談企画を行いました。

配信のフルバージョンを用意してあるのでそちらもご覧ください。

イベント提供

主催 DEN-DEN
富山県の大学院生が中心となって発足した、伝統工芸品業界を活性化させることを目的とした団体。現在は、地元富山の伝統的工芸品「高岡漆器」にフォーカスを当て、ビジネスプランの検討やPR活動を行っている。今回は、PR活動の中で交流のあった”複業先生”とコラボレーションし、高岡漆器の魅力を全世界に向けて発信する。
協力 株式会社LXDESIGN
教育、地方創生における課題をIT技術によって解決するための事業展開を行っている。その中の取り組みの一つ、”複業先生”は、学校教育の現場と学校教育に興味を持つ人材をつなぐプラットフォームサービス。今回は、”複業先生”でのノウハウを生かし、高岡漆器関係者との特別授業を開催する。
協力 天野漆器株式会社
明治25年に創業以来培った「高岡漆器」の伝統技術を生かし、現代生活にあった商品づくりに専念している。「自分が使うとすれば」「自分が買うとすれば」を常に心がけた商品づくりを行っている。

https://www.amanoshikki.com

協力 武蔵川工房
伝統工芸高岡漆器の青貝加飾の制作を中心に、広く青貝螺鈿加飾の可能性を探り、建築、家具、金属製品への青貝加飾も手掛け、創作に励んでいる。

プロフィール

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司会 山田大成(以下、山田)
富山県立大学大学院情報システム工学専攻在学。在学していた高校が高岡市の伝統工芸、発祥の地と知り、伝統工芸に興味を持ち、DEN-DENの企画運営を担当している。

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司会 高岡慧(以下、高岡)
富山高等専門学校射水キャンパス国際ビジネス学専攻。インターンとしてSNS運用を中心とした広報活動に従事。地元の地域創生に興味を持ち、DEN-DENの広報を担当している。

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ゲスト 天野真一(以下、天野)
天野漆器株式会社常務取締役。富山県高岡市で漆器の製造・販売をしている。1892年、約130年前に創業し、高岡漆器の魅力を生かした商品作りをモットーにし日々活動している。今回の授業に取り上げられる螺鈿ガラスの企画・販売をしている。

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ゲスト 武蔵川剛嗣(以下、武蔵川)
家族で経営されている有限会社武蔵川工房の四代目の螺鈿職人。2015年に伝統工芸士として認定される。高岡漆器(螺鈿ガラス)の制作に携わっている。

オープニングトーク

山田
はじまりました、"複業先生”特別授業「伝統工芸高岡漆器を学ぶ」。本日はよろしくお願いします!

一同:
よろしくお願いします〜!

山田
今回はDEN-DENが主催で、LXDESIGNをはじめとした多数大勢の方たちにご協力していただき、特別授業を行います!講師として天野さんと武蔵川さんをお招きしました。
   
高岡
それでは講師のお二人、自己紹介をお願いします。

天野
高岡で漆器製造・販売を行っている、天野漆器株式会社の天野です。よろしくお願いします。

武蔵川
有限会社武蔵川工房の螺鈿の職人をしています、武蔵川嗣剛です。よろしくお願いします。

高岡
ありがとうございます!それでは本格的に高岡漆器(螺鈿ガラス)について話していきましょう。

※螺鈿
夜光貝その他の貝類を彫刻して漆地や木地などにはめこむ技法で「螺」は螺旋状の殻を持つ貝類のことであり、「鈿」は金属や貝による飾りを意味する
引用:武蔵川工房

撮影風景_1

▲楽しそうに対談する四人
(左から武蔵川、天野、高岡、山田)

Part1:天野漆器と螺鈿ガラス

※螺鈿ガラス
透明感と硬質な美しさ、様々な光を通して表情を変える楽しさ、音の響きといった特長をもつ “ガラス素材” に高岡漆器の代表的な特長の一つである螺鈿(あわび貝)技法をとりいれ、漆で仕上げたもの
引用元:螺鈿ガラスオフィシャルサイト

高岡
高岡漆器をはじめて聞く人もいると思いますが、天野漆器と高岡漆器にはどのような違いがありますか?

山田
どちらも知らない人がいそうですからね(笑)。

天野
全国に漆器の産地はいろいろありますが、簡単に説明するとそのうち高岡で作られているものを高岡漆器と言います。天野漆器は問屋という役割を果たしています。漆器の製造は木地をつくる人、螺鈿をする人、加飾する人などに分かれており、完全分業制です。商品開発する際にそれぞれに指示を出し、注文があった際に卸すといった活動を天野漆器では行っています。

※高岡漆器
江戸時代の初め、加賀藩主二代目前田利長が高岡市に高岡城を築いた際に、防具や膳などを作らせたのが、始まり。その後、中国から様々な技法が伝わり、日本で多彩な技術が生み出され、高岡で発展した漆器のこと。
引用:天野漆器株式会社

山田
なるほど。職人さんがいて問屋さんがいてという形で高岡漆器を世に出しているわけですね。その中でも天野漆器はどのような商品を作っていますか?

天野
高岡漆器の魅力を生かした商品作りを行っています。

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 ▲高岡漆器
出典:天野漆器株式会社


皆さんは高岡漆器といえば上の写真を想像されると思いますが、最近は、ガラス素材に、高岡の特徴である螺鈿技法を施し漆で塗った商品を開発しています。また、海外国人の方に向けた商品も開発しています。

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▲螺鈿ガラス

高岡
確かに海外の方にもうけがよさそうですね。やはり高岡漆器の特徴は螺鈿ですか?

天野
そうですね、螺鈿細工は他の産地ではなかなかやっていないですね。高岡が全国の90%以上を占めていると言われています。水を入れると綺麗さがいっそう増すので、実際に見てみましょう。


▲実際に水を入れてみた動画(6:18~7:40)
水の反射と模様の浮かび上がりが最高にきれいです

山田
すごく綺麗ですね!僕も使いたいです。実際にどのようなシーンで使ってほしいとかありますか?

天野
螺鈿細工は水を入れると大変綺麗ですので、やはりお酒などと組み合わせていただけるといいですね。また、日本酒、焼酎、ウイスキーなどに合わせたグラスを販売しています。

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▲ロックグラス
ウイスキーはもちろん、様々なお酒を楽しめます
出典:天野漆器株式会社


高岡
お客さんのニーズに合わせていますね。今回は相良名酒株式会社様から相良「お多福」という焼酎をいただきましたので、早速グラスにも注いでみましょう。

▲グラスに焼酎を注ぐ動画(9:05~9:37)
少し浮かんでいるのがまた乙ですね。是非とも優雅に飲んでみたいです。

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▲今回使用したお酒 相良「お多福」

※相良名酒株式会社
鹿児島市内で唯一の家業として焼酎造りを営む蔵。小さな蔵ならではの丁寧な手作業を大切に、焼酎造りを行っている。

※相良「お多福」
中身酒は「黄金千貫とサツママサリ芋」を自麹で醸したオリジナルブレンドで、上品な甘味とふくよかな味わいが特徴の本格芋焼酎


高岡
飲んでいるときに螺鈿が光って見えるのがいいですね。

山田
また覗いて飲みたくなります(笑)。

武蔵川
コンセプトとしては、「お酒に酔って、螺鈿に酔って」って感じですかね(笑)。

天野
今までは飾ってみる商品が主流でしたが、これからは実際に使うこと前提した商品開発をしていますね。

山田
やはり実際に見て使わないと良さがわかりませんよね。

奈良時代に中国から伝わった工芸がどのような経緯があって富山に伝わったのか?

武蔵川
正倉院『五弦の琵琶』って知っていますか?

山田
教科書によく載っているやつでですね。

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正倉院『五弦の琵琶』
提供元:産経新聞産経新聞

武蔵川
あれは日本に存在する最古の螺鈿品なんですよ。400年前に高岡に前田利長公が螺鈿の職人を京都から連れてきたのがきっかけですね。幕末から明治にかけてなったことで、殿様がいなくなり庶民に広がったという感じですね。(所説あり)

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▲前田利長公の像

高岡
ずっと昔から受け継がれているんですね。

武蔵川
一番最初は京都ですけど、誇らしいですよね。

Part2:螺鈿職人

※伝統工芸士
一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会が経済産業大臣指定の伝統的工芸品の製造に従事されている技術者のなかから、高度の技術・技法を保持する方を「伝統工芸士」として認定している。国家資格にあたる。
引用:伝統工芸品産業振興協会

武蔵川
改めて、有限会社「武蔵川工房」の武蔵川剛嗣です。先ほど天野さんが言っていたように分業制になっている中の高岡漆器の螺鈿を専門としている職人です。家業が明治43年から代々螺鈿の職人していて、僕で4代目です。社員は父親と僕、母、嫁さんの4人だけで、伝統工芸士の資格をもっている珍しい工房ですね。

山田
伝統工芸士はどんな職業なんですか?

武蔵川
国からの指定された国家資格です。まずその仕事に12年間以上携わり、螺鈿の場合は螺鈿の技術をすべて詰め込んだ作品筆記試験が合格すると取得できます。

高岡
筆記試験があることに驚きました。ちなみにどんな内容の試験なんですか?

武蔵川
日本の伝統工芸の歴史が中心ですね。

山田
知識と技術があって伝統工芸士なんですね。伝統工芸士になろうと思ったきっかけはありますか?

武蔵川
自分がものを作ることが好きだったことと身近に螺鈿があったことが大きいです。

螺鈿の工程

武蔵川
螺鈿は漆器などの伝統工芸品に用いられる装飾技法のことです。螺鈿の材料としてはアワビと白蝶貝、ヤコウガイの三種類あり、高岡の螺鈿ではアワビをよく使っています。アワビ以外の貝は日本ではとれません。国産にこだわっているのでアワビが一番良いですね。

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▲螺鈿に使用されるアワビ

上の写真のような大きさの貝を使えるサイズに裁断して、削っていきます。最終的には0.1ミリまで薄くします。

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▲0.1ミリの薄さになったアワビ

山田
透けて見えますね。なぜ0.1ミリにする必要があるのですか?

武蔵川
加工しやすくなるからです。裁断には針で刳り貫く型を取る刃物で切るの三種類ありますが薄いほうがやりやすいですね。また加色する際にも意味があります。

▲加色についての説明(38:12~40:02)
職人さんなだけあって説明がわかりやすいですね

色加し漆器にはめこむことでより綺麗な漆器ができます。


ここだけの制作秘話

山田
螺鈿を制作するうえで大変なことは何ですか?

武蔵川
今までにないものを1から作ることは大変で、開発は天野さん、技術は僕が試行錯誤を繰り返しました。技術面ではガラスに貝を貼る工程が大変でした。具体的にはガラスの表明が平ではないので、貝を貼るときに空気が入らないようにするのが大変でした。

天野
少しでも空洞があるとそこに漆が入ってしまいますからね。

高岡
確かに漆が漏れていると貝の色が台無しになりますね。

天野
色を塗った貝を漆で閉じ込めるときに、貝の色と漆の色が混ざってしまって最初はきれいな色がでなかったです。


▲色の説明(44:46~46:11)
貝の色だけでもとてもきれいです

山田
そこから試行錯誤を繰り返して今の綺麗さがあるわけですね。どんなときに螺鈿をしててよかったと思いますか?

武蔵川
高岡では「ものづくり・デザイン科」という地元の伝統工芸を学ぶ珍しい授業があります。そこで最初は興味がなかったこどもが最後には夢中になって作っていたり、将来これを仕事にしたいと言ってくれたりするとやっててよかったと思います。

※「ものづくり・デザイン科」
高岡市の「ものづくり・デザイン科」は、地域の伝統工芸や産業に目を向けた全国唯一の取組。ふるさと学習(地域学習)やものづくり制作で学んだ高岡の歴史・文化に対する理解や体験をもとに、児童生徒が未来高岡をデザインしたり、未来高岡に対して自分たちができること等を考えたりする力を身に付ける取組。
引用:高岡市ホームページ


山田
僕たちDEN-DENもそういう人たちが集まってできたグループですからね。

エンディングトーク

山田
ということで、そろそろ終わりの時間が近づいてまいりました。参加者の方々からそれぞれ一言ずつお願いします。

天野
本日はどうもありがとうございました。螺鈿や高岡漆器について知ってもらえてよかったです。

武蔵川
普段は螺鈿の職人をしているので、あまり表にでる機会は少ないのでこれからもっとPRしていきたいです。短い時間でしたが本日はありがとうございました。

高岡
いままで高岡漆器にあまり触れる機会がなかったですが、今日高岡漆器の魅力に触れることができてよかったです。

山田
こういうイベントを通じて伝統工芸のPRができてよかったと思っています。今後もイベントをする際はよろしくお願いいたします。本日は本当にありがとうございました。

一同
拍手

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▲エンディング風景

終えての感想

こんにちは!DEN-DENの記事担当、三谷です。今回のイベントはいかがだったでしょうか?僕が初めて参加した企画だったので大変緊張しましたが、DEN-DENメンバーやゲストの方々の真剣さに勇気づけられました。

今回のイベントはワークスペースからお送りしました。何か月前からイベントを企画し、椅子の位置からカメラの角度、手元カメラでより分かりやすくしたりと、すべてにこだわりました。

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▲設営途中の様子
設営場所:HATCH

イベント中で一番驚いたのが螺鈿ガラスでした。僕は高岡漆器は「ものづくり・デザイン科」の授業で知っていましたが、螺鈿ガラスを見るのは初めてで驚きました。自分で水を入れさせてもらいましたが、水の反射や模様の映り具合が最高にきれいで、万華鏡みたいでした。

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▲見せてもらった螺鈿ガラス

また、今回お招きしたゲストのお二人はとても優しくていい人でした。天野さんは螺鈿ガラスを見せて頂いたり、詳しい説明をして頂きとても勉強になりました。武蔵川さんは気さくな人で話しやすく、「職人は寡黙な人」というイメージが変わりました。お二人のおかげで場が明るくなり、緊張がほぐれました。

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▲配信後に撮った写真

僕はこのイベントを通して改めて高岡漆器にふれ、伝統工芸の素晴らしさを再確認することができました。より一層全国のひとに、実際に手に取りつかってもらいたいです。

現代では職人さんの技術や苦労は明るみにでません。DEN-DENは職人さんのこだわりが正当に評価される世界をつくっていきます。

これからもこのような活動を続けて参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。


僕たちの活動を取り上げて頂きました。こちらもご覧ください。




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