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思い出(死トゥルフ神話①)

関西ラジオ「松原タニシの生きる」の
死トゥルフ神話のコーナーに投稿した作品です。

あなたと一度だけ、あれが最初で最後になってしまったけど、二人きりの旅で訪れたこの場所にきています。
吊り橋から見下ろした海の遠さは私にはわからなかったけど、あなたは

「うっっっわめっちゃ高いやん!
バリやばない!?」

と、喜んでいましたね。
嬉しそうなあなたの声と表情は、今でも脳裏に焼き付いている気がします。

半四郎落としから吹き付ける海風は今はもう冷たくて、一面に咲き誇るハマギクをキラキラと揺らしています。

だけど、また一緒にくるかって言ってたのに、あなたは一人で去ってしまった。

最後のあなたの涙がハマギクに落ちた時から、私の五感はたくさんのものを感じ始めた。

地平線と交わる伊豆大島、空と海の青、潮の香り、波の音、海がこんなに塩辛いなんて知らなかった。

最初に来た時はあなたに抱えられるばかりだったけど、今はこうしてゴツゴツした感触を自分の足で踏み締めている。

あなたが教えてくれたこと、あなたと行った場所、あなたと過ごした時間は私の中で生きている。

私はみゆき。

あなたがくれたこの名前と命を大切に、この先も生きていこうと思う。
ありがとう。

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