【ボクシング】井上vsマロニー戦の感想とボクシングに興味をもったきっかけ
この記事も完全にタイミングを逸してしまった…(記事自体は随分前に完成していたのだが…)。最も遅い『井上尚弥VSジェイソン・マロニー』戦の感想と私がボクシングという競技に興味をもったきっかけや思いなどを語る。
2020/11/01に、ボクシングの本場ラスベガスで行われたWBA・IBFの世界バンタム級のタイトルを賭けた試合、「井上尚弥VSジェイソン・マロニー」戦が行われた。
ボクシングに興味をもったきっかけ
私は(観戦者の立場で)色々好きなスポーツはあるが、最も好きなのがサッカーで、その次くらいに来るのがテニスとボクシングである。
しかし、ボクシングに関しても、完全な素人で、ファイターとしての経験はもちろん、観戦者としても、生でプロのスパーリングを見たり、観戦した経験もなく、テレビの画面上での観戦に留まっているため、技術的な部分に踏み込んだ分析なんかは全くできない。(悲しいことに)
だが、特に日本人が絡む世界タイトルマッチくらいのビッグマッチになると必ずと言って良いほど、長年のボクシング好きである父とともにテレビの前に座って、目を釘付けにして観戦する程度にはボクシングが好きである。
一時期(たぶん、高校生くらいの頃)はWOWOWと契約して、海外の世界タイトルマッチなんかも見ていた。特にマニー・パッキャオ(フィリピンの英雄。史上2人目の6階級制覇王者。フライ級からウェルター級まで跨いでいるので、実質8階級制覇として扱う海外メディアも多い。しかも、その階級で一番の強者と言われるボクサーを次々と倒して、一気にボクシング界のスターダムを駆け上がっていった伝説的ボクサー。オスカー・デ・ラ・ホーヤへの階級を越えた挑戦、ファン・マヌエル・マルケスとの度重なる死闘、名勝負を挙げると枚挙に暇がない)やフロイド・メイウェザーJr.(現在、パウンド・フォー・パウンド1位のカネロ・アルバレスとは、彼が若き日に対戦した。カネロの強打はメイウェザーの防御技術を前に、ほぼ完全に空を切ることになった。希代の強打者をまるで赤子扱いし、内容で圧倒し、2-0の判定勝利。圧倒的な防御技術で階級を上げながら、無敗でキャリアを終えた天才ボクサー)などが全盛期で活躍していた頃にはたくさんの海外の世界チャンピオンの試合を見た。
好きなボクサー(過去)
好きなボクサーはWOWOWを定期視聴していた当時で言うと、軽量級ならノニト・ドネア(先日WBSSにて井上と熱戦を繰り広げたが、まだ現役バリバリのボクサーである。打ち合いを怖れず、全力で振り抜くパンチが超怖い…)、中量級ならファン・マヌエル・マルケス(素晴らしいカウンターの勘をもっている。テクニックに溢れた、マニー・パッキャオの永遠のライバル)やミゲール・コット(この人もかなりのタフガイ。パワーもある。ボクシング強国プエルトリコの強豪であり、パッキャオ、メイウェザーとも対戦実績がある)あたり(当時の重量級はクリチコ兄弟くらいで、他はあまり知らない)である。
好きなボクサー(現在)
今だと軽量級なら井上尚弥はもちろん、ニカラグアのローマン・ゴンサレス(軽量級での圧倒的なパワーとテクニック)、中量級だとワシル・ロマチェンコ(言わずもがな。相手を小馬鹿にしたような圧倒的なテクニックとフットワークを駆使したボクシングスタイル)、重量級だとアルツール・ベテルビエフ(コイツはマジでヤバい…怪物。身体を寄せ合って近距離からのショートフックのようなパンチ。ガード上から殴りつけて、相手に再起不能なダメージを与える。相手が後ずさりせざるを得ない、凄まじいプレッシャー。たぶん、現役世界チャンピオンの中で一番パワーがあると私は思っている)あたりが好きだ。
私がボクシングに感じるおもしろさ
好きなボクシングスタイルはバラバラでとりあえず試合を見ていて、こちらを興奮させてくれるような迫力のあるボクサーが好きだった。よくマンガとかで出てくる強キャラがストーリー後半で出てくるさらなる強キャラにボコボコにされるのを見て「あんなに強いヤツがボコボコにされるのか!」なんて言いながら内心めちゃくちゃ興奮して楽しむタイプの人間が私だ。
そういう意味で、ボクシングに限らず、格闘技は本当に残酷なスポーツだと思う。リングの上で本気で(ルールがあるとはいえ)殺し合いをさせて、それを酒を飲んだり、食事をしながら楽しむ。その勝敗を賭けの対象にする人もいる。まるで、檻の中に猛獣を二頭入れて、闘わせてそれを観て面白がる。それが、エンタメとして消費されている。ボクサーは命を削って闘った挙げ句、使い物にならなくなったら、「お前もう要らね、ポイッ!」と投げ捨てられる。そういうスポーツである。かくいう私も先ほど述べたとおり、ボクシングのそのような残酷な魅力に取りつかれたタイプの人間の1人である。
競技者に対する思い
ボクサーに関わらず、格闘家の方たちに対しては、強い/弱いに関わらず、「格闘家」であるという一点で尊敬の対象になりうる。彼らは試合前に減量で身体をいじめ抜くからだ。最近では、YouTubeで総合格闘家の朝倉未来選手が減量の一部始終を公開した動画を発表していた(YouTubeで「朝倉未来 減量」とかで検索するとおそらく該当する動画が出てくると思う)。数日前にはWBAライトフライ級世界チャンピオンの京口紘人選手(先日、試合前の検査で新型コロナ陽性が出て世界タイトルマッチが中止になったのは残念だった…)も同様の試みをYouTubeにアップしていた(これも、朝倉選手同様、YouTubeで検索して頂くと動画が見られると思う)。普段はあの屈強でおそらく(というか、ほぼ確実に)我々常人よりも遥かに我慢強いであろう格闘家が、苦痛を顔に出さずにはいられない。彼らの動画を見ると、明らかに苦しんでいるのがわかる。これは動画として見せられる部分だけを切り抜いて、我々に見せているのだから、実際の減量はもっと過酷だろう。格闘家は、試合で死にかける前に、減量で死にかけているのだ(たしか、朝倉選手は減量時にサウナで倒れたというようなエピソードを話していた記憶がある)。減量は基本的に自分が試合当日、有利な体重で闘うためのものだが、それでも死ぬような思いを試合を含めて2度もするなんて、私みたいな軟弱者にはとてもじゃないができない。この一点だけで格闘家は尊敬に値する。私はそう思っている。
長々と語ったが、ボクシングのファンとしての私はだいたいこんな程度である。ボクシングが好きだという思いはあるし、ボクサー含めた格闘家のことは非常に尊敬しているが、ボクシングフリークかと言われると、まったくそんなことはない。私は、ファイターとしての経験はまったくない(そんな根性はない)ので、技術的な所は全くわからず、ただ楽しいからボクシングを見ている。ボクシングガチ勢の方から見たら、ライトな(にわかとまではいかないだろうが)ファン層という所だろう。
『井上尚弥VSジェイソン・マロニー』戦の感想
で、今回の『井上尚弥VSジェイソン・マロニー』戦を見て、簡単だが感想みたいなものを備忘録程度に書き留めておく。分量としては先ほどまでの前置きの方がずっと長い。Twitterで言うと、せいぜい数ツイート分の感想になるが、一応書き残しておく。
先ほども言ったので、重ね重ねになるが、私はボクシングを観る上で技術に関してはほとんど着目していない。その程度のもんだと思って、ガチのボクシングフリークの方には「何を言ってんだ、コイツ」と思う所もあるだろうが、何卒お目こぼし頂きたい。
で、率直な感想がこちら。
試合自体は、井上尚弥の圧勝とも言って良い内容で、この試合に文句をつける気は一切ない。パウンド・フォー・パウンド3位の実力をいかんなく見せつけたと言ってもいいだろう。しかも、対戦相手のマロニーは決して悪いボクサーではない。(むしろ、かなり良いボクサーで、井上のボクシングに対して、あれやこれやと色々試していたように見えたし、井上がこれまで対戦したボクサーの中ではかなり強い部類に入るボクサーであることは間違いないだろう)。しかし、パウンド・フォー・パウンド1位のカネロ・アルバレスのイメージを覆すくらいのインパクトを与えるには至らなかったという感じであろう。マロニー戦は、試合後にマロニー本人が井上との実力差を認めるコメントを残したくらい、井上の圧勝に終わったと言って良い出来だっただろう。
しかし、今や井上は、日本人の中で有望な世界チャンピオンという次元のボクサーではなく、パウンド・フォー・パウンドの1位に相応しいかどうかが議論されるくらいの(世界有数の)ボクサーである。だからこそ、私としては井上にはこの試合で満足してもらいたくはない。(もちろん、本人は満足などしていないであろう。井上はインテリジェンスの高いボクサーだ)
私がこの試合を見て、井上が、この先、階級を上げていくことを見据えて、一つ思ったのは、「今回の試合のボクシングスタイルが上の階級でも通用するだろうか?」という疑問である。井上はバンタム級では押しも押されぬ、スーパーボクサーで、同階級には、ノルディーヌ・ウバーリ、ジョンリル・カシメロ、ギレルモ・リゴンドウという強敵がいるが、たぶんそのいずれのボクサーよりも総合力で上回っていると私は判断している。特に、パンチ力がバンタム級では桁違いに重い。井上のジャブは、バンタム級においてはもはやストレートである。一発もらったら、かなりのダメージのはずだ。ストレートでも打とうものなら、ガードの上からでもかなりのダメージが入る。だから、今のバンタム級で、井上はかなりアグレッシブな(相手に圧をかけるような)ボクシングができる。階級を上げる上で、ボクシングのスタイルを変えてくる可能性は、井上くらいのクレバーなボクサーであれば、充分考えられる(たぶん、そうすると思う)が、もし、このままのアグレッシブなファイトスタイルで行った場合、「結構危ない気がするな…」と思ったのが、今回の試合(と前回のノニト・ドネア戦を見た上で)の第二の感想である。
あと、井上はオーソドックスな(模範的な)ボクシングをするボクサーには滅法強いボクサーだと思っているが、トリッキーなタイプや打ち合いを恐れないタイプ、前者で言うとルイス・ネリー、後者で言うとノニト・ドネアのようなタイプは意外と苦手としているところがあるのではないかと思っている。特にノニト・ドネア戦後は、多くの井上ファンは「圧勝!さすが井上!」というようなコメントが(某ニュースサイトのコメント欄などを見ると)大多数を占めていたが、私は少し違う感想を持っていた。井上がドネアと打ち合って、一発もらってぐらついたときにはかなり危険を感じた。実際に井上は試合後、眼底骨折という大ダメージを負っている。これは、「打ち合いでドネアのようなハードパンチャー(今後、階級を上げるとさらに増えるであろう)と打たれることを覚悟して闘う場合、井上とはいえ、かなり危ない展開になり得るのではないか。それを予感させるような試合だった。周りが言うほど圧勝ではないのではないか?」と個人的には思ったというのが、正直な所である(井上ファンの皆様には申し訳ないが)。ルイス・ネリーに関しては、かなり射程範囲が長いロングフックのようなパンチ、あれを井上がうまくかわせるか、それがポイントになってくると思ったりする(もちろん、井上は策を練ってくるに違いない。そこで発生する駆け引きであったり、ぶつかり合いが是非見たい)。これらは、あくまで井上に対する期待値が大きいからこそ、出てきた感想である。以下、今後の展望を踏まえて思ったことである。私は今回の試合を見て(過去の実績も含めて)安易に「井上強ええ…マジ神!無敵じゃん!どんどんいったれ!」という考えは危険だと考えている。
これは、ボクシングの技術に関して、全くのド素人の私の単なる感想なので、ボクシングに詳しい諸賢や井上の熱烈なファンはこんなもの単なる戯れ言だと思って受け流してほしい。しかし、私の率直なところを述べるとこんなところである。
最後に(井上への期待も込めて)
最後になるが、これだけ「井上、万歳!」という世間の風潮に警鐘を鳴らした(そこまで大袈裟なものではないが)後で、井上のボクサーとしての「凄み」、「(良い意味での)怖さ」、もっと平たい言葉で言うと「井上、やっぱやべえな…(怖)」と思ったシーンを挙げて、この記事を終わらせて頂く。
井上は試合直後(私はフジテレビの録画放送を見ていた)に、現地から中継でスタジオメンバーの質問を受けるコーナーをやっていた。そこで、WBA世界ミドル級チャンピオンの村田涼太からの「相手がステップを踏んで中に入ってくるタイプの選手だったから、そのステップのタイミングに合わせて着弾させる、そのタイミングを掴んだのはいつですか?」という趣旨の質問に対して、サラッと「1ラウンドで」って答えててヤバいなと思った。井上は1ラウンドで相手のボクシングへの分析を完了させていたのだ。こういうインテリジェンスの高さも含めて、本当に末恐ろしいボクサーだと思う。井上には、可能な限り強いチャンピオンとガチの試合をしてもらいたい。その結果、負けたとしてもまた立ち上がって、リターンマッチをして、相手を倒し返すというような、不屈のボクサーになってほしい。特に私は、(マッチメイクの問題もあるが)スーパーバンタム級で、ルイス・ネリーとの試合を観てみたい。山中慎介の敵討ちを是非成し遂げてもらいたい(ルイス・ネリーをボコボコにしてもらいたい!)。もちろん、パウンド・フォー・パウンド1位も達成してもらって、真の"MONSTER"(敢えて英語表記にしよう)への道を歩んでいってもらいたい。