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【Vtuber】『第3回マリオカートにじさんじ杯』"王者"『成瀬鳴』へ

12/26(土)に本選を迎えた『第3回マリオカートにじさんじ杯』は、成瀬鳴の優勝で決着した。第1回大会のチャンピオンである成瀬鳴の王座奪還というこれ以上ないドラマチックな展開で、非常に良質なエンターテイメントであった。私はと言うと、本選当日は用事があったため、ライブで観れたのは決勝戦の成瀬鳴視点のみ(偶然にも優勝の瞬間に立ち会ってしまった)で、アーカイブもそんなに追えていない。なので、大会全体を通した総括とか感想とかはまだ言えない(後日、気が向いたらまた何か書くかもしれない)。ただ、先にどうしても言っておきたいことがある。優勝者の成瀬鳴に対してである。

大会終了後、成瀬の決勝レースのアーカイブのコメント欄を見ていた。大半は称賛・祝福のコメントで埋まっているのだが、一部にこんな批判(というか難癖)があった。(不愉快に思われる方には申し訳ないが、具体例を掲載しておく)

気分悪くしたら申し訳ないけど正直空気読んで欲しかった
ふわっちに勝って欲しかったよ…
1番どうでもいい人が優勝しちゃったよ~何でお前が優勝するんだよ~
人気もなーんにもないのにしゃしゃり出てくんな
引退しろ!!!

不思議なのはこの種のコメントに結構な数のgoodボタンが押されていることだ。「成瀬が何か過去にやらかしたり、視聴者を不快にさせるような発言をしたり、はたまた犯罪まがいの行為をして、アンチを作るようなことしたの?」と彼の過去についてよく知らない私は思った。

ちょっと調べてみたら、だいたい原因がわかった。

かつて成瀬は剣持と葛葉が、とあるコラボ配信で自分の立ち絵を無断使用していたことに対する不快感をTwitter上で表明した。それにより、剣持と葛葉に批判の矛先が向けられることを不満に思った彼らの視聴者(正確には、彼らだけでなく、にじさんじのアンチやいわゆる対立煽りと呼ばれる人々等、色んな人が含まれるらしい)が、「成瀬は弄りを笑いに昇華できない面白くないヤツ(だから、視聴者数が伸びないんだ)」とか「剣持と葛葉を批判に晒すように誘導するなんて許せない(視聴者数の少ない泡沫ライバーのくせに)」と言うようなことを述べて、成瀬のことを叩くという後味の悪い一件があったらしい。この一件から、かなりアンチが増えたようだ。(私は当時からにじさんじのファンであったが、この騒動については、「なんか揉めたのか…?」くらいにしか思っておらず、詳しい事情はわからないのだが大まかにはこんなところだと思われる)

自分の立ち絵が弄られたことに対する不快感を当事者である剣持と葛葉にディスコード等を使って内々で抗議したり、内部の人間であるマネージャーや仲の良いライバーに相談する前に、公の場で表明したこと(問題を表沙汰にして、うまくやれば避けられた剣持や葛葉に対する批判を巻き起こしたこと)や弄りをうまく笑いに昇華できなかったことに関しては、成瀬は道徳的には一切間違っていないが、配信者(の立ち回り)としては悪手だったのかなとは思う。(まあ、あまり器用な配信者でないことは確かだ)

だからといって、弄った側が「お前、それくらい笑いに変えろよ」という理屈で、弄られた側を不快にさせることを正当化して良いわけではない(注意して欲しいのは、これを今も実際にやっているのは、問題の当事者である剣持と葛葉ではなく、主に彼らの視聴者の一部やにじさんじアンチや対立煽りの人々であるということ。当事者どうしではすでに和解が成立している模様)。つまり、成瀬の弄りに対する対応の仕方によって(要は笑いに昇華できないことによって)、配信者として人気を獲得できなくなってしまうのは仕方がないが、弄りを受け入れろと強要するのは違うし、ましてやそれ(弄りを受け入れないこと)を非難するのはもっと違う。

こういう経緯があって、成瀬は一部の視聴者に粘着して叩かれたり、昨年の『第2回マリオカートにじさんじ杯』で決勝に上がれず、敗退したときには、ボロクソに叩かれたらしい(成瀬の今大会の決勝戦配信枠にて述べられている)。主に視聴者数が伸びないことをバカにしたり、その理由を過去の成瀬の態度に紐付けた非難が多い。(最初に挙げたコメントみたいなヤツ)

彼がデビューした時期(2018年6月頃)は、にじさんじも今ほど知名度はなく、にじさんじの箱推しファン(にじさんじ全体が抱えるファン)からライバー個人へのファンの流入が少なかったり、男性Vtuberに対する風当たりもまだ強かった時期であり、チャンネル登録者数を伸ばすのに不利な境遇にあった。そして、先述の一件により、絡みづらいライバーというイメージがついてしまったようで(これは一部の視聴者が述べていた推測)、登録者数を伸ばすチャンスであるコラボの機会もなかなか得られず、伸び悩んでいたようだ。

そのような現状に本人も満足していなかったのだろう。2020年に入ってから、今まで使っていたアバター(ビジュアル)を変更する(正確には元に戻す)決断をしたりと企業所属ライバーとして収益に貢献するため、色々苦心していたようだ。(以下動画参照)

【成瀬鳴切り抜き】三分で成瀬鳴の気持ちと現状を知る【にじさんじ切り抜き】

彼は決してマリカが強いだけの人ではなく(いや、マリカが強いだけでも充分一芸なのだが…。APEXが強いのと同じことだ)、声を使った表現力(演技力)に秀でており(これは先日、私が記事にしたシスター・クレアも認めており、シスター以外にも彼の才能を認めているライバーは複数いる。だから、後述する「声劇同好会」を主催しても人が集まってくる)、最近では、自身が中心となって、「声劇同好会」を開いたり(2020/11/20に第1回配信)、新しい視聴者を獲得しようと挑戦をしていることがわかる。決して芸がないから、数字が伸びていないわけではない。ただ、少し正直過ぎるところがあるのと、見せ方(魅せ方)や立ち回りが下手なだけだ。(これは、配信者としては致命的な弱点だと言う人もいるかもしれないが、何かきっかけを掴んで人の目に留まれば状況は変わると思う)

決勝レース前のアピールタイム(待機時間)で「チャンネル登録お願いします」と言ったのも、彼の切実な思いだろう。彼は心の底からいちからに貢献したいと思って努力をしている。そのためにビジュアルも変更したし、声劇にも力を入れている。しかし、数字が思うように伸びない。

そういった背景もあって、今回のマリオカートにじさんじ杯にかける想いは人一倍強かったはずだ。自分の得意なマリオカートで絶対優勝して自分を非難してきたヤツを見返してやる。登録者数を伸ばすきっかけにしてやる。そういう気持ちで大会に臨んでいたはずだ。予選・準々決勝・準決勝と思うような走りができず「優勝は難しいか……」と思った人は少なくないだろう。私もそう思っていた。

しかし、彼は決勝戦で覚醒した。誰よりもインを取るライン取り、敵が何を考えているかの予測、アイテム使用のタイミング、経験を誰よりも積んできた者にしかわからないコースの特徴を活かした走り、自分の置かれた状況を逐一言語化しながら最適な選択肢を取っていく判断、各選手の特徴まで把握した素晴らしい立ち回りを見せた。

2レース目の最終ラップで1位に躍り出たとき、「俺どんだけマリカやってきたと思ってる!!もうこのままいける絶対!!」という言葉(以下動画12:00ごろ~)にはマジで痺れた。マリオカートをやっているときの彼はさながら「求道者」のようだ。1つの道を極めんとする者のみが持つ雰囲気を纏っている。特に最終レースは、ライン取り、ショートカット、そして最後に2位の状態からキノコ3つを引き当てる運まで手繰り寄せた。集中力が極限まで達し、完全に「ゾーン」に入っていた。見事としか言い様のないレースだったので、皆さん、最終レースだけでもぜひ観ていってほしい(因みに、最終レースのコースが、首位争いをしていた叶が選択した「ドーナツへいや3」であったのもドラマ性がある)。完全に優勝するべき人が王座に引き寄せられるようにして掴んだ優勝だった。優勝が決まった瞬間の雄叫び(以下動画25:05ごろ~)に彼がどれだけこの大会に懸けてきたのかが込められていて、それが伝わってきた瞬間、私は涙を堪えきれなかった。

【第3回マリカにじさんじ杯】決勝【成瀬鳴/にじさんじ】

そして、嫌われてるヤツが実力で優勝するって最高にクールじゃないか?「コイツのことは好かんけど、実力は認めざるを得ない」って人がいちばん実力があると私は思っている。

チャンネル登録者数も一夜にして約4000人も伸びた。この大会をきっかけに数字が伸びないことで今までバカにしてきたヤツらを見返してやるくらいの活躍を期待したい。「数字がない=実力がない」という等式は必ずしも成立しないということを彼が証明してほしい。目に見える実績を上げるまでは、心ない言葉をかけてくる人がこれからもたくさんいるだろう。だが、それにも打ち勝ってほしい。私は彼を応援する。私以外にも応援してくれる人は少なからずいる。そういった人たちの言葉を闘志に変えてこれからも活動を続けていってもらいたい。彼以外にも、目に入りさえすれば、自分の良ささえわかってもらえれば、数字が伸びそうなライバーはたくさんいる。なんてったって、彼らは厳しいオーディションを勝ち抜いてきた"chosen ones"なのだから。少なくともこの日の主役は間違いなく彼であった。


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Denchu
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