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日本歯科大学2023年度化学の過去問解説(有機)第4回

こんにちは私立歯学部専門予備校のデンアカです。今日は日本歯科大学2023年度一般入試の化学の問題を取り上げます。有機化学からの出題です。
第4回としてiv)を解説します。

問題文


必要があれば、次の原子量および値を使うこと。

  • H 1.00

  • C 12.0

  • N 14.0

  • O 16.0

  • S 32.0

  • 標準状態における気体のモル体積 22.4 L/mol

  • アボガドロ定数: NA=6.00×1023N_A = 6.00 \times 10^{23}NA​=6.00×1023/mol


I 次の文を読み、(1)と(2)の問いに答えよ。

希硫酸中で天然のタンパク質を加水分解すると、その構成単位であるアミノ酸が得られる。アミノ酸は1つの分子内に酸性の ① 基と塩基性の ② 基とをもつ化合物である。アミノ酸のうち同一の炭素原子に ① 基と ② 基とがともに結合しているアミノ酸は ③ とよばれ、その一般式は RCH(NH₂)COOH で表される。

天然のタンパク質を構成するアミノ酸は約 ④ 種類であり、これらのうち動物が体内で合成できないか、合成できても十分量でなく、食物から摂取する必要があるアミノ酸を ⑤ という。ヒト(成人)の ⑤ は、 ⑥ 種類といわれている。

天然のタンパク質を加水分解したときに得られるアミノ酸には、R が水素 H である ⑦ CH₂(NH₂)COOH を除いて、すべてに不斉炭素原子(a) があり、 ⑧ 異性体が存在する。天然のタンパク質を構成しているアミノ酸は、そのほとんどが ⑨ 体である。

水に溶解させたアミノ酸は、その分子内に存在する ① 基から電離した ⑩ イオンが ② 基に結合し、分子内に正と負の両電荷をもつ ⑪ イオンになることがある。このため、アミノ酸の水溶液では、陽イオン、 ⑪ イオン、陰イオンが平衡状態にあり、水溶液の pH に応じて、それらの濃度が変化する。また、水溶液中のアミノ酸は、それぞれ特定の pH において、正の電荷と負の電荷がつりあい、全体として電荷が0になる。このときの水溶液の pH の値を、そのアミノ酸の ⑫ といい、 ⑦ ではその⑫ の値は 6 である。

アミノ酸が結合するときに生じる ⑬ 結合を特にペプチド結合といい、2分子のアミノ酸がペプチド結合によって結合するとジペプチド、3分子のアミノ酸が結合するとトリペプチド、多数のアミノ酸が縮合重合すると ⑭ となる。

タンパク質は ⑭ を基本とした複雑な立体構造をもつ生体内の高分子化合物である。タンパク質は、加水分解したときにアミノ酸のみを生じる ⑮ タンパク質と、アミノ酸とともにそれ以外の成分として糖類、核酸、脂質、色素、リン酸などを生じる ⑯ タンパク質に分類される。生物体内で起こる複雑な化学反応の触媒として作用するアミラーゼなどの ⑰ もタンパク質を主成分とする高分子化合物である。

(1) 文中の空欄 ①~⑰に関する、次の i)~iv) の問いに答えよ。

i) 文中の空欄 ①、②、⑬ に当てはまる語の組み合わせとして最も適切なものを、次の解答群から一つ選び、記号ア~シを解答欄に記せ。

ii) 文中の空欄 ④ と ⑥ に当てはまる数字の組み合わせとして最も適切なものを、次の解答群から一つ選び、記号ア~ケを解答欄に記せ

iii) 文中の空欄 ⑦、⑪、⑫、⑰ に当てはまる物質名、または語を解答欄にそれぞれ記せ。

iv) 文中の空欄 ③、⑤、⑧、⑨、⑩、⑭、⑮、⑯ に当てはまる語として最も適切なものを、次の解答群から一つずつ選び、記号ア~タを解答欄に記せ。

今日は iv) を解説します。
考えてみましょう。



文中の空欄に当てはまる語句の正しい解説


③ に当てはまる語句

問題文:
「アミノ酸のうち同一の炭素原子に ① 基と ② 基とがともに結合しているアミノ酸は ③ とよばれ、その一般式は RCH(NH₂)COOH で表される。」

解説:
アミノ基 (-NH₂) とカルボキシ基 (-COOH) が同じ炭素に結合しているアミノ酸は「α-アミノ酸」と呼ばれます。これはタンパク質を構成する基本的なアミノ酸です。

正解: ア (α-アミノ酸)


⑤ に当てはまる語句

問題文:
「これらのうち動物が体内で合成できないか、合成できても十分量でなく、食物から摂取する必要があるアミノ酸を ⑤ という。」

解説:
体内で合成できないため、食物から摂取する必要があるアミノ酸は「必須アミノ酸」と呼ばれます。

正解: セ (必須アミノ酸)


⑧ に当てはまる語句

問題文:
「R が水素 H である CH₂(NH₂)COOH を除いて、すべてに不斉炭素原子(a) があり、 ⑧ 異性体が存在する。」

解説:
不斉炭素原子を持つアミノ酸は「鏡像異性体」を形成します。不斉炭素が存在すると、その分子には鏡像異性体が生じます。

正解: エ (鏡像)


⑨ に当てはまる語句

問題文:
「天然のタンパク質を構成しているアミノ酸は、そのほとんどが ⑨ 体である。」

解説:
天然のタンパク質を構成するアミノ酸のほとんどは「L体」であり、自然界のアミノ酸は主にL体として存在します。

正解: ウ (L)


⑩ に当てはまる語句

問題文:
「水に溶解させたアミノ酸は、その分子内に存在する ① 基から電離した ⑩ イオンが ② 基に結合し、分子内に正と負の両電荷をもつ。」

解説:
カルボキシ基 (-COOH) の水素イオン (H⁺) が電離することで、アミノ酸は双性イオンになります。このとき電離するのは水素イオンです。

正解: ケ (水素)


⑭ に当てはまる語句

問題文:
「多数のアミノ酸が縮合重合すると ⑭ となる。」

解説:
アミノ酸が多数結合したものを「ポリペプチド」と言います。これはタンパク質の基本構成要素です。

正解: タ (ポリペプチド)


⑮ に当てはまる語句

問題文:
「タンパク質は、加水分解したときにアミノ酸のみを生じる ⑮ タンパク質と、アミノ酸とともにそれ以外の成分として糖類、核酸、脂質、色素、リン酸などを生じる ⑯ タンパク質に分類される。」

解説:
加水分解したときにアミノ酸のみを生じるタンパク質は「単純タンパク質」と呼ばれます。

正解: シ (単純)


⑯ に当てはまる語句

問題文:
「アミノ酸とともにそれ以外の成分として糖類、核酸、脂質、色素、リン酸などを生じる ⑯ タンパク質に分類される。」

解説:
アミノ酸以外の成分を含むタンパク質は「複合タンパク質」と呼ばれます。

正解: ソ (複合)


まとめ

各空欄に当てはまる語句の正解は以下の通りです。

  • ③: ア (α-アミノ酸

  • ⑤: セ (必須アミノ酸

  • ⑧: エ (鏡像

  • ⑨: ウ (L

  • ⑩: ケ (水素

  • ⑭: タ (ポリペプチド

  • ⑮: シ (単純

  • ⑯: ソ (複合

L体の不思議

私たちの体を作るタンパク質の材料であるアミノ酸。そのアミノ酸には「L体」と「D体」(またはR体)という二つの形が存在しますが、自然界で使われるのはほぼL体ばかり。その理由にはまだ解明されていない不思議があるんです。

L体とD体の違いとは?

L体とD体は、鏡に映した右手と左手のような関係にあります。どちらも同じ成分でできているのに、その立体的な形が異なり、重ね合わせることはできません。このような分子を「鏡像異性体」といいます。そして私たちの体では、L体のアミノ酸だけがタンパク質を作る材料として使われています。

じゃあ、なぜD体(R体)は使われないのか?それは、タンパク質を作る「リボソーム」という細胞の機械が、L体のアミノ酸しか扱わないからなんです。L体が「正しいカギ」で、D体はドアを開けられない、そんなイメージですね。

どうしてL体だけが選ばれたの?

この問いには、まだはっきりした答えはありませんが、いくつかの仮説があります。

  1. 進化の偶然
    地球の初期、たまたまL体のアミノ酸が多く存在していたため、それを使う生物が進化してきた、という考え方です。もしD体が多かったなら、今の生物は逆にD体を使っていたかもしれません。

  2. 化学的な安定性
    ある条件下では、L体の方がD体よりも安定していた可能性があり、結果としてL体が選ばれたとも考えられます。しかし、これも完全に証明されているわけではありません。

実際にD体は使われていないの?

実は、細菌や一部の生物ではD体のアミノ酸が使われていることがあります。例えば、細菌の細胞壁にはD体のアミノ酸が含まれていて、それが細菌の構造を支えています。ですから、D体が全く無視されているわけではありませんが、私たちの体を構成するタンパク質では、ほぼL体のみが使われています。

鏡像異性体がもたらす影響

L体とD体がどれほど違うかは、医薬品の世界でも大きな影響を及ぼします。ある薬はL体の形だと効果があるのに、D体だと効かない、もしくは副作用が強くなることがあります。この微妙な立体構造の違いが、私たちの体の中でどのように働くかを左右するのです。

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