日本歯科大学2023年度化学の過去問解説(有機)第3回
こんにちは私立歯学部専門予備校のデンアカです。今日は日本歯科大学2023年度一般入試の化学の問題を取り上げます。有機化学からの出題です。
第3回としてiii)を解説します。
問題文
必要があれば、次の原子量および値を使うこと。
H 1.00
C 12.0
N 14.0
O 16.0
S 32.0
標準状態における気体のモル体積 22.4 L/mol
アボガドロ定数: NA=6.00×1023N_A = 6.00 \times 10^{23}NA=6.00×1023/mol
I 次の文を読み、(1)と(2)の問いに答えよ。
希硫酸中で天然のタンパク質を加水分解すると、その構成単位であるアミノ酸が得られる。アミノ酸は1つの分子内に酸性の ① 基と塩基性の ② 基とをもつ化合物である。アミノ酸のうち同一の炭素原子に ① 基と ② 基とがともに結合しているアミノ酸は ③ とよばれ、その一般式は RCH(NH₂)COOH で表される。
天然のタンパク質を構成するアミノ酸は約 ④ 種類であり、これらのうち動物が体内で合成できないか、合成できても十分量でなく、食物から摂取する必要があるアミノ酸を ⑤ という。ヒト(成人)の ⑤ は、 ⑥ 種類といわれている。
天然のタンパク質を加水分解したときに得られるアミノ酸には、R が水素 H である ⑦ CH₂(NH₂)COOH を除いて、すべてに不斉炭素原子(a) があり、 ⑧ 異性体が存在する。天然のタンパク質を構成しているアミノ酸は、そのほとんどが ⑨ 体である。
水に溶解させたアミノ酸は、その分子内に存在する ① 基から電離した ⑩ イオンが ② 基に結合し、分子内に正と負の両電荷をもつ ⑪ イオンになることがある。このため、アミノ酸の水溶液では、陽イオン、 ⑪ イオン、陰イオンが平衡状態にあり、水溶液の pH に応じて、それらの濃度が変化する。また、水溶液中のアミノ酸は、それぞれ特定の pH において、正の電荷と負の電荷がつりあい、全体として電荷が0になる。このときの水溶液の pH の値を、そのアミノ酸の ⑫ といい、 ⑦ ではその⑫ の値は 6 である。
アミノ酸が結合するときに生じる ⑬ 結合を特にペプチド結合といい、2分子のアミノ酸がペプチド結合によって結合するとジペプチド、3分子のアミノ酸が結合するとトリペプチド、多数のアミノ酸が縮合重合すると ⑭ となる。
タンパク質は ⑭ を基本とした複雑な立体構造をもつ生体内の高分子化合物である。タンパク質は、加水分解したときにアミノ酸のみを生じる ⑮ タンパク質と、アミノ酸とともにそれ以外の成分として糖類、核酸、脂質、色素、リン酸などを生じる ⑯ タンパク質に分類される。生物体内で起こる複雑な化学反応の触媒として作用するアミラーゼなどの ⑰ もタンパク質を主成分とする高分子化合物である。
(1) 文中の空欄 ①~⑰に関する、次の i)~iv) の問いに答えよ。
i) 文中の空欄 ①、②、⑬ に当てはまる語の組み合わせとして最も適切なものを、次の解答群から一つ選び、記号ア~シを解答欄に記せ。
ii) 文中の空欄 ④ と ⑥ に当てはまる数字の組み合わせとして最も適切なものを、次の解答群から一つ選び、記号ア~ケを解答欄に記せ
iii) 文中の空欄 ⑦、⑪、⑫、⑰ に当てはまる物質名、または語を解答欄にそれぞれ記せ。
iv) 文中の空欄 ③、⑤、⑧、⑨、⑩、⑭、⑮、⑯ に当てはまる語として最も適切なものを、次の解答群から一つずつ選び、記号ア~タを解答欄に記せ。
今日は iii) を解説します。
考えてみましょう。
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解説
この問題では、アミノ酸の電荷状態や、異性体、アミノ酸の等電点に関する知識を問われています。以下、順番に説明していきます。
⑦:グリシン(Glycine)
問題文の「Rが水素 H である CH₂(NH₂)COOH」の部分から、ここでのアミノ酸はグリシンです。グリシンは最もシンプルなアミノ酸で、側鎖として水素原子 (H) が結びついています。グリシンは不斉炭素原子を持たない唯一のアミノ酸で、鏡像異性体が存在しません。
したがって、⑦にはグリシンが入ります。
⑪:双性
アミノ酸は水溶液中で、酸性のカルボキシ基 (-COOH) と塩基性のアミノ基 (-NH₂) が電離して、双性イオン(Zwitterion)という状態になります。この状態では、アミノ基が正の電荷を持ち、カルボキシ基が負の電荷を持ちますが、全体としては電荷がゼロになります。この双性イオンの状態は、アミノ酸の等電点(次の項で説明)で特に安定です。
したがって、⑪には双性が入ります。
⑫:等電点(Isoelectric Point)
アミノ酸の等電点とは、pHの値が特定の範囲にある時、アミノ酸が双性イオンとして存在し、全体として電荷がゼロになる状態を指します。グリシンの等電点はph5.97です。これは、酸性のカルボキシ基と塩基性のアミノ基が同時に電荷を持ちつつ、全体の電荷が打ち消し合う状態がpH5.97で安定することを意味します。
したがって、⑫には等電点が入ります。
⑰:酵素
この文では、アミラーゼなどの酵素について説明されています。酵素はタンパク質から作られ、体内で様々な化学反応を助ける触媒として働きます。たとえば、アミラーゼはデンプンを分解して糖に変える酵素で、消化の過程で重要な役割を果たします。
酵素はタンパク質が複雑に折り畳まれてできた立体構造を持ち、この構造が正確に機能することで、化学反応を加速させます。
アミノ酸と日常生活のつながり – グリシンと酵素があなたの生活を支える!
受験勉強をしていると、アミノ酸や酵素といった難しい単語がたくさん出てきます。試験のために覚えるのはもちろん大事ですが、実はこれらの概念は私たちの日常生活とも深く関わっています。せっかくなので、アミノ酸や酵素がどう役立っているのか見ていきましょう。
グリシン – 安眠サポーター?
まず、今回の問題に出てきたグリシン。受験生の皆さんも一度は耳にしたことがあるかもしれません。実は、グリシンは「睡眠の質を高める」として市販のサプリメントにも使われています。試験前の不安な夜、なかなか寝つけないこともありますよね。そんな時、グリシンが含まれたサプリや飲み物を飲むと、リラックス効果が得られ、ぐっすり眠れるかもしれません。
グリシンは、脳内で抑制性の神経伝達物質として働き、身体をリラックスさせる効果があると言われています。もちろん、グリシンを摂ればすぐに眠れるわけではありませんが、少し疲れた時のサポートとして覚えておくといいかもしれません。
酵素 – あなたの体を支える小さなヒーロー
酵素についても問題に出ていましたね。酵素は、体の中で「触媒」として働き、さまざまな化学反応を助けてくれます。たとえば、食事をするとき、体は食べ物をエネルギーに変えるために酵素を使います。特にアミラーゼは、口の中でデンプンを分解して糖に変え、消化を助けます。
もし、酵素が正常に働いてくれなかったら、食べたものをうまく消化できず、エネルギーが足りなくなるかもしれません。つまり、酵素は私たちの体の中で、毎日黙々と働いてくれている「小さなヒーロー」なのです。受験勉強でたくさんのエネルギーが必要な今、酵素の働きも非常に重要です。
アミノ酸の等電点と pHバランス
また、グリシンの等電点についても勉強しましたね。等電点という言葉は難しく感じるかもしれませんが、私たちの体は常にpHバランスを保とうとしています。pHが乱れると、体調を崩したり、肌荒れを起こしたりすることがあります。実際、私たちの皮膚は弱酸性(pH 4.5~5.5)の状態を保つことで、外部からの細菌の侵入を防ぎ、健康を保っています。
アミノ酸の等電点に関する知識は、pHバランスを理解する上でも役立つものです。例えば、スキンケア製品で「弱酸性」という言葉を見かけたことがあるかもしれませんが、それもこのpHバランスを保つためです。受験勉強中の肌荒れ防止にも、少し意識してみてはいかがでしょうか?
勉強だけでなく、日常に生かそう!
このように、アミノ酸や酵素はただの「勉強用の知識」ではなく、日常生活にも深く関わっています。少しでも日常に絡めて理解すると、勉強が楽しくなるかもしれません。次回、参考書に出てくるグリシンや酵素を見たら、「あれ、これって日常で使ってるかも?」と思い出して、勉強を続けてみてくださいね。
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