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AIUX時代の幕開け~進化するユーザー体験とデザイナーの新たな役割


はじめに

こんにちは。こんばんは。DeNAデザイン統括部の久田です。

最近、次男(4歳)が「アレクサ、こたつつけて〜」とこたつの電源を入れたり、お気に入りのウルトラマンのテーマ音楽をかけたりしていて「デジタルアシスタントネイティブだなぁ」と思っています。

AI技術が急速に発展する中で、これまでの「UX(ユーザーエクスペリエンス)」という考え方も新しい段階に進もうとしています。私自身も現在生成AIをベースとしたプロダクトの開発にガッツリ関わっており、その中で、これまでのプロダクトデザインの型では解決しにくい問題が増えてきたと感じています。

そこで注目されるのが「AIUX」という視点です。ここでは、AIUXが従来のUXとどう違うのか、そしてどんなデザインの考え方が必要になるのかを、3つのポイントに分けて紹介します。

1. 「決まったルール」から「学び続ける仕組み」へ

これまでのプロダクトにおけるUXは、基本的にあらかじめ決まったルールに沿って、特定の操作をすると決まった画面や結果が出るように作られていました。たとえば「条件を入力したら、合致する情報が返ってくる」などがその例です。

例えばこんな感じ。インプットに対して、ルールに沿ったアウトプットを返す。

一方、AIUXではAIがさまざまなデータを使って学習し、状況に合わせて最適な答えや提案を出そうとします。

たとえば家を探すときでも、エリアや値段だけでなく「家族構成」「予算」「家に対しての考え方」などユーザーコンテキストを多面的に入力することで、「どの家をいつ買うべきか」といった総合的な知識データを返し、ユーザージョブに対してより柔軟に対応できます。

ユーザーからのインプットを受けて学習し、アウトプットする。
「決まったルール」から「学び続ける仕組み」へ

2. 「エラーを減らす」から「不確実性とうまく付き合う」へ

従来のUXでは、ユーザーの操作ミスや入力エラーを極力なくす設計が重視されてきました。ユーザーが誤った情報を入力しないようガイドを用意したり、操作に迷って離脱しないようなフローを設計するのが当たり前でした。

しかしAIUXの領域では、AIが算出する結果自体が必ずしも「100%正解」とは限りません。むしろ、「70%の確率でこの可能性がある」といった不確実性を伴う情報が出力されることが多いのです。こうした状況下では、単にエラーを排除することよりも、ユーザーからの多様な入力を受け止め、その結果に含まれる不確実性をわかりやすく示すことが重要になります。

たとえばAIを用いた求人マッチングであれば、「あなたの職務経歴とスキルセットを分析した結果、『B社のデータアナリスト職』が約70%の確率で高い適合度を示しています。ただし、この確率はあくまでAIの推定であり、企業の社風や面接時の対話によっては結果が変わる可能性があります」といった具合に、AIの算出根拠や前提条件を示してユーザーが納得しやすいように設計する必要があります。(これはあくまで一例。本来はユーザーの理解を深めるためのもっと別の表現やアプローチを検討する必要がある。そこがまさに、デザイナーの腕の見せ所)

「エラーを減らす」から「不確実性とうまく付き合う」へ

3. 「一度完成させて終わり」から「常に改良していく」へ

従来のUX開発では、最初にユーザー調査をして、ワイヤーフレーム(画面の設計図)を作って、テストをして……と段階を踏んで、ほぼ完成された状態でリリース(公開)するのが一般的でした。

しかしAIUXの場合、AIはユーザーとのやり取りや実際の使われ方から学習を続け、どんどん改善されていきます。つまり、リリースした後も常に成長していくわけです。UXデザイナーは、「どうやってユーザーのフィードバックをAIに反映させるか」や「変な回答が出たときにどう対処するか」といった仕組み全体を考える必要があります。

ロジカルな正しさではなく、試行錯誤の回数とそれによる思考量が質を上げていく
「一度完成させて終わり」から「常に改良していく」へ

AIUXのまとめ

まとめます。AIUXのポイントは主に以下の3つです。

  1. 仕組みが変わる:今までのように決まったフローではなく、AIが学習して多様な答えを出す。

  2. 信頼性の考え方が変わる:エラーをゼロにするのではなく、不確実性をユーザーに分かりやすく伝え、ユーザーが納得して使えるようにする。

  3. 開発・運用方法が変わる:リリースして終わりではなく、ユーザーの声や使用状況を常に取り入れながらAIを育てていく。

これまでのUX設計は「使いやすく」「正確な情報」を提示することが中心でした。しかしAIUXの時代になると、ユーザーとAIが対話し、アイデアを出し合い、少しずつ答えの精度が高まっていくという「一緒に作り上げる体験」が大切になります。

おわりに

AIUXはただの流行ではなく、UXそのものを大きく変えるような力があります。これから多くのサービスやアプリがAIを取り入れていくことが予想されます。

AIやUXの専門家だけでなく、ビジネス面や倫理(道徳)、法律の観点など、幅広い知識が組み合わさってはじめてよりよいAIUXが実現できます。従来の課題解決型アプローチに加え、「AIとどう向き合うか」「人を中心にした設計とは何か」をより意識する必要がありそうです。

おまけ

先日、DeNA AI Dayでこの話とはちょっと別角度のAI×デザインの話をしました!(本稿の画像もほぼこの登壇のスライドです)

動画も公開されたので、併せてみてもらえると嬉しいです。


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