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うろおぼえ満洲国 7日目(2018年5月30日)ハルビン市


さらば満洲

ハルビン太平国際空港

最終日は朝から空港へと向かう、往路と同じく上海で乗り換えである。

空港へはタクシーで向かうこととした。路上でタクシーを捕まえ、行き先を告げると定額料金を提示してきた。本来であれば定額料金で客を乗せることは違法だそうなのだが、どのみち法外な料金というわけではないので承服する。
タクシーはとある場所に停車し、急に乗り換えろと運転手は言う。乗り換え先のタクシーは、タクシーというよりハイヤーの出で立ちで、アウディのセダンであった。ちなみに現在はどうだか分からないが、中国のタクシーはフォルクスワーゲンのサンタナが非常に多い。急に車がグレードアップしてラッキー。
乗り換え先のタクシーは高速道路に乗り、空港へと向かっていく。高速道路の料金所を通過する際、運転手が高速料金を支払えと言ってくる。そんなことは聞いていない。定額料金で乗っているのだから、そこに含まれて然るべきだろう。翻訳アプリを駆使して反論する。明らかに崩れた文面が表示されているが通じてるのかこれ?
偶然ではあるが、私は1台目のタクシーの支払いで人民元を使い切っておりそもそも現金を持っていなかった。財布をひっくり返してアピールする。無い袖は振れない。
観念した運転手は自分で高速代を支払い、料金所を通過した。無事空港に到着し、降りようとしたところまたも料金を請求してくる。だから金はすでに払ったから1台目の運転手に請求してくれ。財布も空だって。
再び観念した運転手はトランクを開け、私のバックパックを降ろしてくれる。危うく料金を二重取りされるところだったぜ。

後から調べて分かったことだが、中国のタクシーも日本のタクシーのように営業エリアが規制されており、市内のタクシーは空港まで行くことができない。だから乗り換えが必要だったのである。
そして定額だろうと何だろうと、高速道路料金は乗客が払うことが普通だそうだ。そもそもイリーガルな定額料金だったので、2台目の運転手は1台目の運転手に金を貰えたか怪しいし、高速代も取りっぱぐれている。
急に申し訳なくなってきた。よくトランクから荷物降ろしてくれたな。

上海にて

たっぷりのジャスミンティー

ハルビンの空港をたち、上海へと到着する。
それなりに乗り換え時間はあるが、この巨大な上海浦東国際空港で迷子になったが最後、一生出られない気がするのでおとなしくお茶を飲んで時間を潰す。
このカフェは往路の乗り換え時も利用したのだが、往路と同じくジャスミンティーを注文する。杏と思われるドライフルーツが付いてくる。日本では見たことない組み合わせの気がするが、お茶に合っていて美味しい。

この旅で常々思ったことであったが、存在を否定しているはずの満洲国の建造物を使い続けている人々のメンタリティはどのようなものなのか。
もちろん政府がプロパガンダ的な晒し者として建造物を維持しているのは確かだろう。しかしその建造物を利用している当人である大学の学生たち、病院の患者・スタッフたち、満洲国の皇帝のために作られた広場でぼーっとしているおばちゃん、日常に満洲国が溶け込んでいる市民たちはそんなことを意識して生活してはいまい。
とある国では日本の影響下にあった時代の建造物は徹底的に破壊され、原型を留めるものはほとんどない。それも自然な反応であろうが、その人々と何が違うのか。
「そこに在って使える」んだから使えなくなるまで使ってしまえという、ある種強烈な包容力が中華民族の原動力であり、中華文明の豪胆さの源泉なのかもしれないとの妄言に思い至る。

帰国

飛行機に乗ってしまえば何も考える必要もなく帰国できる。うどんでも食べたい気分だ。中部国際空港の入国審査を通過し、税関で検査官が一言「何しに行ったの?」
やはりこの一人旅は怪しいのだろうか。

おわり

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